目標管理は、組織や個人の目標を設定し、達成度により評価を定める制度です。英語で「Management By Objectives(目標による管理)」と表現され、各単語の頭文字から「MBO」と呼ばれています。
世界的に知名度の高いピーター・F・ドラッカーによって提唱された目標管理は、現在多くの企業において導入されている制度です。しかし、導入にはメリットだけでなくデメリットもあり、悪影響となる要因をきちんと解消したうえで導入しなければ、目標管理による大きな成果は得られません。
では、目標管理を徹底することで、会社や仕事にはどのような影響があるのでしょうか。今回は、目標管理のメリット・デメリットから、デメリットを解消する方法までを詳しく紹介します。
目次
1.目標管理とは
目標管理とは、より高い成果を上げるために考えられたマネジメント手法の1つで、組織目標と個人目標を定め、達成するための取り組みが行われます。日本の会社では1960年代後半から取り入れられるようになりました。
個人目標は、上司のサポートを受け、達成に向けて取り組まれます。また、最終的な成果はもちろん、目標達成までの進捗も定期的にチェックされます。
目標管理を行うために使われるツールやフレームワーク、具体的な取り組み方などは会社によりさまざまです。
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2.目標管理をするメリット
会社で目標管理を取り入れると、組織だけでなく社員にもメリットがあります。また、成果を上げられることに加えて、経営理念の浸透や、適切な社員評価にもつながることが目標管理のメリットです。
ここでは、目標管理を行うことで得られるメリットについて解説します。
2-1.社員の労働意欲の向上
目標管理を適正に運用すると、社員の労働意欲を向上させることが可能です。達成すべきゴールと、ゴールまでの道筋が明確になるため、社員のモチベーションが高まりやすくなります。
目標管理によって定められた成果指標は、組織にとって価値があると認められたものです。そのため、自身の価値を高めたいと考える社員にとって、目標への取り組みは意欲を向上させる要因となります。
自ら目標を定め、進捗を管理することで達成する経験は、社員の自信につながります。自信がつくとさらに高い目標に取り組む意欲が湧くことも、目標管理のメリットと言えます。なお、失敗してもそこから多くを学ぶことができる、またとない機会にもなります。
目標管理で定めるゴールは、会社や組織から無理やり押し付けられたものではありません。社員の自主性を尊重して定められた目標は抵抗感がなく、労働意欲を向上させます。
2-2.経営理念の浸透
社員に経営理念が浸透しやすくなることも、目標管理を導入するメリットです。
経営理念は、会社が事業を営むにあたってあるべき姿や、社会に対して与える価値などを表します。目標管理の最終的な目的である会社の目標達成は、経営理念を体現するための行為です。そのため、会社の目標から落とし込んで個人の目標を定めることは、経営理念の浸透にもつながります。
経営理念は抽象度の高い言葉として表されていることが多く、そのままの状態では理解されにくいです。目標管理の導入により日々の業務として具体化されると、社員は経営理念を自分ごととして認識することができます。
社員の取り組みと会社のビジョンを結び付け、経営理念を浸透させるために目標管理が有用です。
2-3.客観的な評価制度の構築
客観的な評価制度を構築し、社員の成果を適切に評価できることも、目標管理のメリットとして挙げられます。目標管理では、社員が達成すべき指標や状態、期限が明確に定められるため、達成度を客観的に測定することが可能です。
たとえば、「3ヶ月以内に新規顧客の獲得数を20%増やす」といった目標は、達成できたか否かを明確に判断できます。また、目標を達成できなかった場合であっても、達成率と達成内容で社員の取り組みを客観的に評価できることができます。
目標管理において、個人の目標は上司との話し合いを通じて自らが了承したうえで定められます。そのため、自ら了承した成果指標で評価され、その評価に基づき処遇が決定されることは、社員から納得が得やすいです。
3.目標管理をするデメリット
目標管理は社員が成果を上げるために有用な手法であるものの、取り組み方によってはデメリットが生じる場合もあります。誤った捉え方や過剰な取り組みは、モチベーションの低下や、目的を見失うことにつながりやすくなります。
ここでは、目標管理の導入によって生じる可能性があるデメリットについて解説します。
3-1.モチベーションが低下する
社員のモチベーションは、仕事に対して自主的に取り組める環境や、成果を上げたときの達成感などによって高まります。
しかし、個人目標と行動計画がともに上司から決められた場合、モチベーションは下がります。また、自分の実力以上に高い目標や、達成できるイメージが湧かない目標を強制されたり、また簡単に達成可能な目標を設定された場合も、モチベーションが下がります。
まだ経験の浅い新入社員や、目標管理を導入して間もない会社の社員は、目標を達成するための取り組みに慣れていないことが一般的です。適切な目標の立て方がわからないことや、上司から適切なフィードバックが受けられないことも、モチベーションの低下につながります。
3-2.手段が目的化してしまう
誤った認識で目標管理に取り組んでしまった場合、目標管理の実施自体が重視されるがあまり、手段が目的化してしまうことがあります。
本来、目標管理は個人の目標達成によって成果を高め、個人目標の総和として組織目標を達成する目的で実施されます。目標管理は成果を上げるための手段です。
手段が目的化してしまうと、面談の実施や、成果の達成状況を共有するための作業負担が大きくなり、かえって業務効率が下がる可能性があります。特に目標管理を導入したばかりで運用に慣れていない会社の場合は、業務効率が大幅に低下することも多く、注意が必要です。
3-3.目標の達成に固執しすぎる
目標の達成に固執しすぎてしまうことも、目標管理を導入するデメリットです。
たとえば、目標の達成に固執しすぎている上司は、目標がわずかに未達だった社員に対して低評価を下してしまう場合があります。わずかな未達に厳しい評価を下すことは、社員の意欲を著しく低下させてしまいます。
社員が自身の目標達成に固執しすぎた場合、評価に影響しない業務に取り組まなくなり、また達成しやすい目標しか定めなくなる可能性などもあります。評価が下がることを恐れるあまり、低い目標しか目指さなくなってしまうことは逆効果です。会社全体の成果が下がるだけでなく、社員のスキルが低下することにもつながります。
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4.デメリットを解消するためには
目標管理のデメリットを解消するためには、次のような点に注意する必要があります。
〇目標を押し付けず、社員の主体性を尊重する
社員が目指す目標を決める際は、会社や上司の意見を押し付けず、社員自身の主体性を尊重することが大切です。社員と話し合ったうえで、適切な難易度や分量の目標を設定しましょう。
〇適切なフィードバックを行う
目標管理に取り組む際は、上司から部下への適切なフィードバックが重要です。フィードバックの頻度が少なすぎると、社員のモチベーションが下がる場合があります。また、フィードバックが多すぎると上司の負担となるため、適切な頻度を考えて実行しましょう。
〇会社と個人の目的を一致させる
会社と個人の目的が一致していない状態では、目標管理をしても成果が上がりません。社員に対して設定した目標の意味を十分に説明し、理解を得たうえで目標管理に取り組みましょう。
まとめ
目標管理は、成果を上げるためのマネジメント手法です。目標管理を適切に運用することことで、社員のモチベーションを高め、成果を上げる可能性を高めることができます。労働意欲の向上や経営理念の浸透、さらに社員評価にも有用ですが、正しく運用しなければ逆効果となる場合があるため、社員の主体性を尊重して適切なフィードバックを行うことが重要です。
会社で目標管理を導入する際は、目標の設定やフィードバックなどの運用方法に注意して取り組む必要があります。今回の記事で紹介した内容を参考に、ぜひ正しい方法で目標管理に取り組んでください。
監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。
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