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長時間労働の対策で企業がすべきこととは?原因と問題点を解説

人事労務働き方

長時間労働は労働者のプライベートな時間を奪い、心身の健康を害する可能性のある問題です。2019年4月から、働き方改革関連法が施行されました。その成果か、2022年に厚生労働省が発表した「令和4年版過労死等防止対策白書」によると、日本人一人あたりの総労働時間は緩やかな減少傾向にあり、長時間労働を行っている労働者の割合も減少しています。しかし、これは雇用形態を問わない場合の結果です。パートタイム労働者が年々増加傾向にあるために、「総労働時間が減少しているのでは」という見方もできます。

また、コロナ禍以降、テレワークを導入する企業が増えました。日本労働組合総連合会が2020年に行った「テレワークに関する調査2020」では、「テレワークで通常より長時間勤務になった」と答えた労働者が51.5%と、半数を超えました。さらに、65.1%と6割超の労働者が、「時間外労働・休日勤務を行ったのに申告しなかった」と回答しています。

長時間労働の原因は業務過多だけでなく、さまざまな問題が絡んでおり、包括的な取り組みが必要です。本記事では、長時間労働はなぜ起こるのか、それによってどのような問題があるのか、解消するために企業はどのような対策を行うべきかなどを解説します。

1.長時間労働の定義はない

長時間労働には「◯時間以上」というような定義はありませんが、労働基準法では労働時間の上限を「1日8時間、週40時間」と定めており、これを法定労働時間といいます。

法定労働時間を超えて労働させることは、法律違反です。ただし、業務上の都合で法定労働時間を超えることも考えられるでしょう。そこで、企業が法定労働時間を超えて労働者を働かせる場合、労働基準法第36条にもとづき、「労使協定(36協定)」を締結することが必要になりました。

だからといって、無限に残業をさせても良いわけではなく、36協定を締結した場合でも、原則として残業時間の上限は「月45時間、年360時間」です。この残業の上限時間を超えるかどうかは、長時間労働のひとつの指標となるでしょう。

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2.なぜ長時間労働が起こるのか?

長時間労働は、常態化すれば労働者の心身の健康リスクが高まるなど、事業運営にも影響する重大な問題です。政府でも、働き方改革で長時間労働の削減に向けてさまざまな取り組みをしています。では、なぜ長時間労働は起こってしまうのでしょうか。

2-1.人手不足による業務過多

少子高齢化による人手不足や人件費の高騰は、どの業界でも深刻となっています。業務量は変わらない、もしくは増加しているのに、それに見合った働き手が確保できなければ、勤務時間内に業務が処理しきれず、長時間労働となってしまうでしょう。

また、時期によって繁閑の差が大きい職場などでは、余剰人員を抱えないために閑散期に合わせて人員を配置することもあるようです。その場合、繁忙期は必ず労働時間が長時間化してしまうことになります。

2-2.マネジメント層の理解不足

マネジメント層が長く働いていることを評価するようでは、長時間労働はなくなりません。「遅くまでオフィスにいるからがんばっている」「残業時間が多いからやる気がある」などと思われれば、生産性を向上させて業務を早く終わらせるより、だらだらと時間を使って長時間労働する社員が多くなるでしょう。

また、マネジメント層が長時間労働の実態に気づいていながら対策を講じなければ、より大きな問題につながる可能性があります。

2-3.業務の非効率

業務量が適正でも、それが非効率的だったら労働時間は長くなるばかりです。同じ業務をずっと続けている場合、非効率な進め方が定着しているのに、当事者はそれに気づかず業務を行う時間が長くなるといったこともあるでしょう。

また、オンラインで可能なことをオフラインで行っていたり、システムを利用できるのにしていなかったりといった非効率な業務の進め方は、長時間労働の原因のひとつです。

2-4.個人の意識

「残業すれば終わるからいいや」というように、残業時間込みで業務の計画を立てていれば、おのずと労働時間は長くなります。中には、「残業代のために長くオフィスに残っている」という人もいるかもしれません。

また、「ほかの人が残業しているうちは帰りにくい」などという意識があれば、定時になっても退社せずに長時間労働になってしまうケースがあるでしょう。

2-5.企業文化

企業の文化が長時間労働につながることもあります。組織への忠誠度や残業の多さなどを評価するような価値観があれば、長時間労働はなくならないでしょう。

特に議題がなくても定期的に行われる会議や、そのための資料づくりといった非生産業務が多いと、本来の労働時間を圧迫し、長時間労働をしないと処理しきれないということになりかねません。

3.長時間労働が引き起こす問題

長時間労働はさまざまな原因が影響して発生します。では、長時間労働はなぜ問題なのか、引き起こすリスクをあらためて確認しましょう。

3-1.健康リスク

一日の時間は限られていますから、長時間労働を行えば睡眠や食事にあてる時間を削ることになるでしょう。疲れが回復できなかったり、偏った食事が続いたりすれば、健康状態が悪化するリスクがあります。さらに、常に仕事のストレスに追われている状態が続けば、精神疾患のリスクも高まるでしょう。

そういった状態で業務を続ければ、労災の発生や、最悪の場合は自死や過労死につながるおそれもあります。大切な人材を失うばかりか、企業イメージの低下は避けられません。

3-2.コスト増

長時間労働が続けば、企業はその分だけ残業代を支給しなければなりません。残業代は通常の賃金より割増となるため、人件費が増加するでしょう。長時間オフィスを稼働させることで、光熱費などのコストも増加します。

さらに、月に60時間を超える残業の割増賃金率は、以前は大企業が50%、中小企業は25%と定められていましたが、法改正によって2023年4月より、大企業も中小企業も50%と定められました(企業規模の判断は業種によって異なる)。長時間労働が常態化すれば、前述のように従業員の心身の健康を脅かすおそれがあり、企業の運営コストの増加にもつながるのです。

3-3.従業員の意欲の減少

長時間労働が続いて「職場環境が良くない」と感じれば、従業員の意欲は減少し、離職率の増加や生産性の低下のリスクが高まります。転職サイトの「doda」が2023年3月に公開した「転職理由ランキング」では、「労働時間に不満」が、18.7%と総合ランキングで10位に入りました。特に、20代や女性の転職理由で挙がる割合が多いようです。

3-4.残業規制違反による罰則

長時間労働は政府も問題視しており、労働基準法の改正で時間外労働の上限規制が厳しくなりました。原則として、月45時間・年360時間まで、特別な事情があって労使が合意した場合でも、月100時間未満(2~6ヵ月で、月平均80時間以内)です。長時間労働を放置して違反すれば、企業に罰則が科される可能性があります。

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4.長時間労働対策のために企業が行うべきこと

長時間労働は社員の心身に悪影響を及ぼすばかりか、法令違反になる可能性があります。改善するために、企業はどのようなことを行うべきなのでしょうか。

4-1.柔軟な働き方を実現する制度の導入

残業が削減できるような勤務制度の導入は、長時間労働の解消に役立ちます。例えば、フレックスタイム制を導入すれば、従業員は自分の予定に合わせて出勤や退勤の時間を柔軟にスケジュールできます。通勤時間を削減できるテレワークや、連続して働
かずに個人の事情で細切れに仕事をするスイッチワーク、決められた日は必ず定時に退勤する「ノー残業デー」なども、長時間労働の解消に役立つでしょう。

また、このような制度を導入した場合、経営層や人事から、利用を奨励するように働きかけることも重要です。

4-2.制度の見直し

長時間労働をさせない、評価しない制度を整備することも重要です。

土日も顧みずに長時間働く従業員が評価される制度では、長時間労働はなくなりません。短時間で成果を上げた社員を評価して、給与に反映させるような制度を導入することで、従業員の考え方を変えていけるでしょう。限られた時間で成果を上げられるように各自が工夫することで、生産性の向上も見込めます。

また、残業時間だけで評価しないことを周知したり、スキルアップしたことや業務効率化の取り組みを評価したりすることも効果的です。

近年はワークライフバランスを重視している方も多いため、働き方を見直すことも良いでしょう。

ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み

4-3.業務プロセスの改善

無駄な業務、非効率な業務の進め方は、長時間労働の原因です。従業員の取り組んでいる業務プロセスを洗い出し、特定の従業員に業務が偏っていないか、非効率な進め方をしている業務がないかなどを確認してください。ToDoリストを決めて優先度を考え、必要ない作業はカットします。効率の悪い業務はツールやシステムの導入や、RPAでの自動化、アウトソーシングなどを検討してください。

加えて、従業員同士、チーム間のコミュニケーション促進も大切です。相談や報告がしづらければ、トラブルやモチベーション低下の原因になります。誰に相談すべきかを明確にしたり、気軽に連絡できるビジネスチャットを導入したりといったことで、円滑なコミュニケーションが期待でき、業務の効率化や生産性の維持につながるでしょう。

業務改善に関しては下記記事もご覧ください。
業務改善とは?進め方や役立つフレームワークを解説

4-4.マネジメント層の意識改革

長時間労働を解消するためには、マネジメント層の意識改革が重要です。評価基準はもちろん、一部の従業員に業務が集中しないよう、部下の適正、スキルやキャパシティを把握した上で、適切に業務を振り分けるといったことが必要でしょう。単に「意識改革をしろ」といっても実現はできませんから、労働法の内容や部下とのコミュニケーションのとり方、適性の見極め方などの研修やアセスメントも必要です。

また、そもそも長時間労働を行わないこと、生産性維持のために心身の管理を行うことなどを部下にしっかり指導することも、マネジメント層が行うべきことです。

4-5.労働時間の可視化

長時間労働を改善するため、最も重要なことが従業員の労働時間の可視化です。当たり前のことのようですが、意外と正確に把握できている企業は少ないものです。

在宅勤務やテレワークが導入されるようになってからは、勤務中の様子が特にわかりづらくなっています。従業員の自己申告に任せていては、自主的に労働時間を短く申告したり、勤務時間を調整したりすることもあるでしょう。

誰がどの程度残業をしているか、休日出勤をしているかなどを正確に把握してこそ、長時間労働の対策ができます。

休日出勤の定義については下記記事もご覧ください。
休日出勤の定義は?法的な決まりや割増賃金の計算

長時間労働対策をして、従業員のモチベーションをアップしよう

長時間労働は従業員の心身を蝕み、企業経営にも影響する可能性があります。残業や休日出勤は絶対にいけないというものではなく、業務によってはやむをえないこともあるかもしれません。

ただし、それが常態化していたり、企業が把握できていなかったりすることは問題です。長時間労働にどれだけのリスクがあるかを理解し、社員がやりがいを持って無理なく働ける環境を整えてください。

なお、社員の労働時間を正確に把握するためにおすすめなのが「MITERAS仕事可視化」です。PCログの可視化で申告していない残業や休日の仕事などを検知し、従業員の長時間労働の防止に役立てることができます。

監修:MITERAS部

「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。


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