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心理的安全性とは?高める方法と不足のデメリット

働き方

心理的安全性とは、「自分の考えや意見などを、組織のメンバーの誰とでも率直に言い合える状態」を指します。1999年にハーバード・ビジネス・スクールのエドモンドソン教授が提唱し、2016年にGoogleが「チームの生産性向上のためには心理的安全性を高めることが重要」と発表したことで、一気に注目を集めました。
しかし、心理的安全性の意味は誤解されやすいこともあり、具体的にどういうことなのか、理解できていない人も多いのではないでしょうか。今回は、心理的安全性の意味や不足することで起こる問題のほか、高めるメリットやその方法をご紹介します。

1.心理的安全性は安心して意見できる状態

心理的安全性とは、どのような意見や指摘でも、否定されたり罰せられたりせず、安心して表明できる状態のこと。「否定や批判をしない」というルールを設けることではなく、そういった「雰囲気」や「暗黙の了解」がある環境を指します。
誰でも自分の感じたことをオープンにできることで、多様な意見が集められ、新しいアイディアやイノベーション創出につながるでしょう。

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1-1.「ぬるま湯組織」との違い

心理的安全性は、従業員の仲がいい職場、居心地のいい環境などと誤解されることも少なくありません。
こういった、いわゆる「ぬるま湯」や「なれ合い」の組織では、居心地のいい環境を維持するために、対立や衝突を恐れて意見を出さなくなることがあります。

特に日本では、「空気を読む」文化があり、自分の意見を主張したり、間違いを指摘したりすることを避ける傾向があります。ぬるま湯組織の雰囲気は穏やかかもしれませんが、生産性が低下したり、ミスの発覚が遅れたりといった問題に発展しかねないでしょう。
心理的安全性とは、単なる仲のいい状態、居心地のいい状態ではありません。意見が対立しても人間関係が破綻せず、活発なコミュニケーションが生まれる状態です。

1-2.Googleの「プロジェクトアリストテレス」の結果

心理的安全性が注目されるきっかけとなったのは、Googleが2012年から行った「プロジェクトアリストテレス」です。生産性改革のために、高い成果を生み出すチームが持つ共通した要因を見つけることが目的で、4年の歳月と膨大な資金が投入されました。
その結果、成功するチームには5つの要素があることがわかり、与える影響度の順に並べると下記のようになります。

<成功するチームの要素>

心理的安全性(Psychological safety)
ミスを認める、質問する、人と違う意見を表明するなど、一般的に信頼度が低下するような行動をとっても、批判されたりバカにされたりしないという安心感がある状態。

相互信頼(Dependability)
「メンバーは引き受けた仕事を時間内に高いクオリティで仕上げる」という信頼が互いにある状態。

構造と明確さ(Structure & Clarity)
チームの役割や計画、目標が明確であり、チームのメンバーがそれを理解している状態。

仕事の意味(Meaning of work)
チームのメンバーが仕事に対して目的意識を感じている状態。

インパクト(Impact of work)
「自分の仕事には意義があり、良い変化を生むもの」と、チームのメンバーが主体的に思えている状態。

最も重要なのが心理的安全性であり、Googleによると、心理的安全性が高いチームのメンバーの特徴は、収益性が高く離職率は低く、ほかのメンバーのアイディアをうまく利用できることです。
心理的安全性が低いチームのメンバーと比べて、マネージャーから「効果的に働く」と評価される機会が2倍多いことも発表されています。

2.心理的安全性を高めるメリット

心理的安全性が高いことで、具体的にどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。ここでは、心理的安全性が高めるメリットをご紹介します。

2-1.ポテンシャルを最大限に発揮できる

心理的安全性が高ければ安心して仕事に集中でき、個人のポテンシャルを最大限に発揮できるでしょう。結果的に、業務効率や業績の向上につながります。
意見やアイディアを尊重されることで、より仕事への意欲や責任感が強くなり、パフォーマンスを向上できるメリットも考えられます。

2-2.多様性とイノベーションが生まれる

多様な価値観や能力、考え方、文化などが認められれば、多種多様な人材が個性を発揮できます。ダイバーシティに取り組む企業が増えていますが、心理的安全性が高い状態は、まさにダイバーシティといえるでしょう。多様な価値観が認められれば、そこからイノベーションが生まれる可能性が高くなります。

ダイバーシティについては、下記の記事もご覧ください。
ダイバーシティ(多様性)推進のメリット・デメリット・問題点とは?

2-3.情報共有やアイディアの提案が活発になる

発言に不安がなければ、チーム間のコミュニケーションが活発になります。メンバー間の情報共有がスムーズになり、ミスや失敗などのネガティブな情報も集まることで、早期に対処することが可能です。
どのような意見でも受け入れてくれる土壌があれば、アイディアの提案も活発に行われます。

2-4.離職率が低下する

心理的安全性が高い環境では、自分の能力を活かしながら働けるため、仕事の充実感を感じられ、組織へのエンゲージメントが高まります。離職率も低下し、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できるでしょう。

エンゲージメントについては、下記の記事もご覧ください。
エンゲージメントとは?重要性・メリット・向上のための施策を解説!

3.心理的安全性が低い職場で起こる問題

心理的安全性が高いとさまざまなメリットがありますが、では、心理的安全性が低い場合は、どのような問題が起こるのでしょうか。心理的安全性を提唱したエドモンドソン教授は、国際的カンファレンスであるTEDで、心理的安全性が低下しているときに見られる、下記の4つの不安に言及しています。

3-1.「無知だ」と思われることへの不安

「こんなことを聞いたら無知だと思われるのでは」という不安があると、チームメンバーに質問や相談をしにくくなるでしょう。コミュニケーションが低下し、疑問を持ったまま業務を進めることでミスにつながるリスクもあります。

3-2.「無能だ」と思われることへの不安

業務で失敗したときに「こんなこともできないのかと思われたら」という不安で、ミスを隠したり、認めなかったりすることがあります。失敗を恐れて挑戦しなくなり、イノベーション創出の障壁になる可能性があります。

3-3.「邪魔だ」と思われることへの不安

「議論を邪魔していると思われるのでは」という不安があると、提案や発言を控えてしまいます。自由な意見交換ができなければ、アイディアのブラッシュアップができず、互いの考えも理解できずに、組織力やチームワーク低下につながるかもしれません。

3-4.「ネガティブだ」と思われることへの不安

建設的な意見であっても、「ケチをつけていると思われるのでは」と不安になれば、発言がしにくいでしょう。業務を進める上で問題があれば、否定的な内容でも伝える必要があります。それを避けると、回避できたはずの問題が発生したり、ビジネスチャンスを逃したりする可能性があります。

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4.組織の心理的安全性を調べる方法

自社の心理的安全性を高めたい場合、まずは現在の状態を確かめなければなりません。エドモンドソン教授は、チームの心理的安全性を測るために、下記の7つの質問を行うそうです。

<心理的安全性を測る7つの質問>

(1)チームの中でミスをすると、大抵非難される

(2)チームのメンバーは、課題や難しい問題を指摘し合える

(3)チームのメンバーは、自分と異なることを理由に他者を拒絶する場合がある

(4)チームに対してリスクのある行動をしても安全である

(5)チームの他メンバーに助けを求めることは難しい

(6)チームメンバーは誰も、自分の仕事を意図的におとしめるような行動をしない

(7)チームメンバーと仕事をするとき、自分のスキルと才能が尊重され、活かされていると感じる

(1)(3)(5)はNoが多いほど、(2)(4)(6)(7)はYesが多いほど心理的安全性が高いといえます。定期的にアンケートなどを実施して、チームの心理的安全性を測ってみるといいでしょう。

さらに、エドモンドソン教授は、心理的安全性が高いチームでは「3つのサイン」が見られると提唱しています。質問やアンケートなどを行わなくても、チームメンバーの会話などを観察することで、心理的安全性を測ることができます。

<心理的安全性を測る3つのサイン>

・組織やチーム内でポジティブな発言が多い

・成功だけでなく、ミスや失敗についても話し合いができている

・組織やチームに笑いとユーモアがある

5.心理的安全性の高め方

心理的安全性が高い状態は、単なる人間関係が良好な状態ではなく、目標や課題に向かってチームが一丸となり、相互協力できている状態です。続いては、心理的安全性を高めるための取り組みの例をご紹介します。

5-1.OKRの設定

OKRはObjectives and Key Resultsの略。「達成目標(Objectives)」と、その達成度を測る「主要成果(Key Results)」を設定することで、チームや個人が同じ課題に取り組めるという目標管理の手法です。
OKRによってチームメンバーが同じ方向を向いて課題に取り組めるようになり、それぞれが自分に与えられた責務を果たすことでチーム力が向上します。チーム力の向上は、メンバー間の相互理解や協力体制の構築にもつながるでしょう。

5-2.1on1ミーティングの実施

1on1ミーティングは、上司と部下が一対一で話す面談のことです。定期的に開催し、業務の進捗状況や課題、今後のキャリアといった仕事についての内容だけでなく、プライベートな内容まで話し合います。
1on1ミーティングでは、上司は部下の想いを傾聴し、話しやすい環境を作ることがポイントです。「何でも話ができる」という関係性を構築することで、心理的安全性を高めやすくなります。

1on1ミーティングについては、下記の記事もご覧ください。
1on1とは?実施の目的・流れから、効果を最大化するコツまで

5-3.ピアボーナス

ピアボーナスは、従業員同士が報酬を贈り合う制度のことです。従業員が付与されたポイントを、ほかの従業員に感謝や賞賛のメッセージとともに贈り合います。メッセージは送られた人以外にも表示されるため、直接つながりのない人の業務内容や、人となりを知るきっかけにもなるでしょう。
ピアボーナスはポジティブな発言を増やし、互いに認め合って協力できる環境づくりに貢献できます。

5-4.マネージャーへのフィードバック

一般的に評価はマネージャーがメンバーに行うものですが、心理的安全性を高めるためにはメンバーからマネージャーへフィードバックを行うことも、ひとつの方法です。
フィードバックできることこそが心理的安全性が高い状態ともいえそうですが、マネージャーがフィードバックの内容を受け入れることで、チームの心理的安全性を高められるでしょう。フィードバックは匿名で集めることで、率直な意見が出やすくなります。

5-5.雑談

心理的安全性を高める上で、雑談は重要な役割があります。「勤務中に仕事と関係のない話なんて」と考えるかもしれませんが、雑談から問題解決の糸口が見つかったり、斬新なアイディアが思いついたりした経験がある人も多いでしょう。気軽に雑談ができる関係性を作っておけば、相談や質問もしやすくなります。
雑談ばかりでは仕事に支障をきたしますが、会議前のアイスブレイクや、一段落ついたときの切り替えの雑談は、人間関係の構築や維持に役立ちます。

心理的安全性を高める具体例を知りたい場合は、下記の資料をご活用ください。
ライオンに学ぶ!心理的安全性が生み出す効用とは?

心理的安全性の高いチームが強い組織を作る

心理的安全性を高めることで、従業員一人ひとりがやりがいを持って業務に取り組むことができ、結果として業績の向上が見込めます。企業へのエンゲージメントが高まり、優秀な人材の流出を防げることもメリットです。
チームの心理的安全性を高めたいときは、「MITERAS仕事可視化」が役立ちます。PCログから従業員の稼働状況が可視化できることで、課題となっていることに一歩踏み込んでフィードバックしたり、相談したりしやすくなるでしょう。

監修:MITERAS部

「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。

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