労働基準法などの規則に違反していた場合、労働基準監督署から是正勧告が出されることがあります。是正勧告や労働基準監督署の調査監督が実施されるというと、不安や焦りを感じる人も多くいるでしょう。
そこでこの記事では、是正勧告の概要とともに、よくある3つの違反事例について解説します。
また、事例を踏まえた対処法についても解説するため、調査を受けて不安に感じている人や、働き方改革関連法案のスタートに伴って規則見直しを図っている人は、ぜひチェックしてみてください。
目次

労務リスクへの対策は出来ていますか?
「労務管理」の現場では、「労務リスク管理の省力化」が当たり前となりつつあります。
1.是正勧告とは?
是正勧告とは、労働基準監督官が労働基準法に違反している事案について勧告を行うことです。
労働基準法違反の典型的なケースは、残業代未払い、長時間労働などが挙げられます。
ほかに、健康診断未実施や就業規則の作成と通知がされていない、最低賃金以下の時給設定がされている、などの違反もあります。
企業が是正勧告を受ける際の流れは、以下の通りです。
- ①労働基準監督署から調査実施の連絡が入る
- ②労働基準監督署による立ち入り調査が始まる
- ③労働基準法違反が発見されたら、是正勧告書が交付される
- ④是正勧告書に記載の内容に沿った対応を行ったうえで、是正報告書を提出する
是正勧勧告に従わず、労働条件を是正しなかったり、報告を怠ったりした場合には、司法処分(検挙、強制調査など)が実施される可能性があります。
調査を受けた企業の内、約7割もの企業において労働基準法違反が見つかっています。是正勧告書に沿って対応すれば大きな問題・トラブルにはなりませんが、是正勧告書を受け取らなくても済むように、日ごろから労働条件などを細かくチェックしておきましょう。
1-1.是正勧告書とは?
是正勧告書とは、労働基準監督署立ち入り調査の結果、労働基準法違反が発覚した際に発行される書面です。
是正勧告書の主な記載内容は、次の通りです。
- 違反事項
- 指導内容
- 是正期限
是正勧告書を受領したら、記載されている期日までに労働基準法違反事項や指摘事項を改め、その結果を労働基準監督署に報告しなければなりません。
2.まずは労働基準監督署の立ち入りがある
是正勧告の前に行われるのが、労働基準監督署による立ち入り調査です。
立ち入り調査には、大きく分けて4つの種類があります。ここでは、それぞれの概要について解説します。
・定期監督
定期監督は、最も一般的な形での調査監督です。
労働基準監査署が、あらかじめ決まったスケジュール(年間計画)に沿って、調査対象の会社を抽出します。
監査については、事前に電話などで連絡が入るケースと予告なしに立ち入りされるケースがあります。いずれの場合においても、企業側で日程の要望を出すことはできません。
・申告監督
申告監督とは、労働者から労働基準監督署に対して調査依頼の申告が入った時に、その申告内容を確認するため行われる調査監督です。定期監督と同様、予告のあるケースとないケースがあります。
調査員に質問すれば、定期監督なのか申告監督なのかを教えてもらえることもありますが、申告者は誰なのかは伏せられます。
申告監督では、監督官は申告者に対して調査結果を報告する必要があるため、定期監督よりも厳しい対応となることが一般的です。
・再監督
是正勧告があった際には、再監督が行われます。
是正報告の通りに改善されているかどうかのチェックです。また、是正報告が提出されなかった場合に関しても、再監督が行われます。
再監督を受けたにもかかわらず、労働基準法違反が改善されなかった場合、司法処分が下される可能性があることも覚えておきましょう。(重大・悪質な違反なら行政処分となる可能性が高く、そうでなければ改めて再監督が実施されます。)
・災害時監督
災害時監督とは、労働に関する重大災害が発生した際に、原因の究明や改善、再発防止策指導のために行われる調査監督です。
事故現場のチェックだけではなく、長時間労働や設備などの作業環境、業務内容など、職場の安全管理体制が整っていたかどうかも確認されます。
3.是正勧告でよく見られる違反内容の事例
是正勧告には、共通して報告される違反内容があります。
全体の7割もの企業で労働基準法違反が見つかっていますが、違反事例を参考にすれば監督の際にどのような点に気を付けるべきか参考となります。
特に、2019年より働き方改革関連法が施行され、従来以上に違反内容に対して強く注意することが必要です。
ここでは、よく見られる違反事例を3つの項目に分けて紹介します。
3-1.就業規則に関する違反
従業員が10名以上所属する事務所では、就業規則を作成して労働基準監督署に提出しなければなりません。
違反項目としては、以下の点に注意が必要です。
- 必要記載項目の漏れがある
- 労働者代表の意見を聞いていない
- 就業規則を従業員に周知していない
- 就業規則を変更したにもかかわらず、変更した内容を届けていない
例えば就業規則を従業員に周知しておらず、後からそのことが発覚した場合、是正勧告を受け、罰則を課せられます。
違反項目に該当しないよう慎重に就業規則を作成しましょう。
3-2.労働時間に関する違反
労働基準法では、1日8時間週40時間以上の労働は認められていません。
36協定を労使間で結ぶことにより、時間外労働や休日出勤が可能となります。
ただし、36協定を締結している場合であっても「年間720時間以内」「6か月間の平均残業時間80時間以内」などの上限規制を超えた場合には法定労働違反です。
例えば、月間22日勤務で毎日4時間残業させると「6か月間の平均残業時間80時間以内」の規定を守れない可能性が高まり、是正勧告を通達される恐れがあるため注意してください。
また、サービス残業についても「未払い残業代」として、是正勧告の対象となります。
休日出勤の定義については下記記事もご覧ください
休日出勤の定義は?法的な決まりや割増賃金の計算
3-3.有給に関する違反
労働基準法では、入社後6ヵ月が経過し、全体の8割以上出勤した労働者に対して、有給休暇を与えなければならないこととなっています。
よくある違反事例は以下の4つです。
- ①そもそも有給休暇を与えていない
- ②労働者からの取得申出を認めていない
①②に関しては、「企業側が意図的に有給を取得させようとしていない」と見なされるでしょう。発覚すれば是正勧告を受けることとなるため、すぐに社内制度を改めてください。
- ③労働基準法が認める日数通りに付与していない
- ④パート・アルバイトに対して有給休暇を付与していない
そして、③④に関しては意図的に付与していない場合もありますが、「有給が付与される条件を知らなった」といった過失によって付与されていないこともあります。
是正勧告を受けないためにも、有給が付与される条件をしっかり確認することが必要です。
この4つの違反事例はよく見られるため、注意してください。

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4.是正勧告の対処法
是正勧告や労働基準監督署による調査に対しては、適切な対処をすることが非常に重要です。
労働基準法に対する違反が改善されない場合には、司法処分の可能性が生じるほか、社会的な信用低下にも繋がります。
対処法のスタンスとしては、2通りの方法が考えられます。
・弁護士に立ち会いを依頼する
調査の日程があらかじめ分かっている場合には、弁護士に立ち会いを依頼することができます。
法律の専門家である弁護士に依頼することにより、調査員からの質問に対して、自社での状況と法律知識を踏まえた適切な回答をすることが可能です。
さらに、その後是正勧告が出された際にも、適切な対処法についてのアドバイスが得られるため、再調査への対応がスムーズとなります。
・自主的に問題点を改善する
是正勧告に対して、自主的に問題点を改善する方法もあります。
自主的に対策を行う際に重要なことは、調査や是正勧告の有無にかかわらず、日ごろから労働基準法を始めとした規則に沿って、労働条件・労働環境を整えるように徹底することです。
- 36協定の提出や内容のチェック
- 有給休暇の付与や取得状況の確認
- 就業規則の作成・周知
- 労務管理、勤怠管理
以上のように、自社の規則や取り組み状況を、実情と照らし合わせながら細かくチェックすることが必要です。
そして、万が一是正勧告を受けた場合には、指導・指摘に従って、速やかに対応を行って報告書を提出しましょう。
まとめ
労働者の労働環境を守るといった名目で、企業に対し、労働基準監督署から「是正勧告書」を出されることがあります。是正勧告書とは、労働基準監督署の立ち入り検査後に、法令違反や改善項目が発見された際に交付される書面のことです。
是正勧告書には、違反事項、指示内容、改善対応までの期日などが記載されています。是正勧告に従わなければ、最悪のケースでは事業主・経営者に対して司法処分が下ることもあるため注意してください。
是正勧告を受けないためには、日ごろからの労働基準法順守や適正な勤怠管理が重要です。
是正勧告についての適切な対処法を知るとともに、是正勧告を受けない環境作りを推進させましょう。

監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。

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