国土交通省が2023年3月に発表した「令和4年度 テレワーク人口実態調査結果」によれば、組織に雇用されているテレワーカーの割合は、コロナ禍のピーク時よりわずかに減少したものの、高い水準を維持しています。時間の有効活用や通勤の負担軽減を理由に継続を希望する人も多く、働き方の選択肢のひとつとして定着しつつあるといえるでしょう。
一方で、在宅勤務は従業員の勤務実態が見えにくく、サボりを不安視する企業側の声も少なくありません。
そこで本記事では、在宅勤務をする従業員が仕事をサボる理由を紐解き、企業経営に影響を与えかねないサボりを防止する方法を紹介します。
目次
1.なぜ、在宅勤務の従業員は仕事をサボる?
従来どおり、オフィスに出勤して仕事をする場合、勤務時間中に堂々とサボる人はなかなかいません。しかし、在宅勤務の場合はそうもいかないようです。
2020年にマイナビニュースが実施したアンケートでは、「テレワーク中にサボったことがある」と答えた人の割合は74%でした。テレワークは自宅で行うとは限らないものですが、在宅勤務で「ついサボってしまう」あるいは「サボったことがある」という人も多いのではないでしょうか。まずは、なぜテレワークをする従業員が仕事をサボるのか、その理由を見ていきます。
テレワークで大きな課題となる「業務の見える化」
そこで注目されるようになったのが「PC監視ツール」です。ツール導入メリット・注意点のほか、おすすめ商材についてご紹介します。
1-1.集中力が低下しやすい
オフィスでの勤務と在宅勤務との大きな違いは、ほかの従業員や上司の存在がなく、外部からの電話や訪問もないことです。一定の緊張感をもたらす“人の目”がないため、どうしても気がゆるみ、仕事に集中しにくくなります。デスクやワークチェアを置く場所がない、家族との共有スペースしか使えないなど、自宅はオフィスほど仕事をする環境が整えられず、集中しにくいこともあるでしょう。
また、「自宅で仕事をする」ことに家族の理解が得られないと、「家にいるなら手伝って」と家事を頼まれるなどして、集中力が削がれることもあるようです。集中力の低下は、サボりの大きな要因となります。
1-2.オン・オフの切り替えがしにくい
オフィスに出勤する場合、身だしなみを整えて家を出る時点で、頭を仕事モードに切り替えることができます。しかし、在宅勤務は仕事をする場と生活をする場が隣り合わせで、通勤時間もありません。オンライン会議などがない限り、服装を気にする必要もないでしょう。
そのため、始業時間になっても、なかなかプライベートから切り替えることが難しい人は多いです。すぐに寝ることができたり、手を伸ばせば趣味のグッズにふれられたりする環境で、仕事に打ち込むのは難しいかもしれません。
このように、仕事とプライベートの境目がなくなることによって、就業時間の概念があいまいになることはサボりやすくなる理由のひとつです。反対に、仕事を切り上げるタイミングが見つからず、長時間勤務になる人もいます。
1-3.仕事の管理がしにくい
管理者である上司が、一人ひとりの様子を見ながら進捗管理や指示出しができるオフィス勤務と違って、在宅勤務は物理的な距離があります。部下も上司の目がないことで、気がゆるんでついサボることもあるでしょう。
また、業務の進捗を共有する仕組みがなければ、在宅勤務中の仕事量は本人にしかわかりません。そういった場合、業務量を調整してサボることも可能になってしまいます。
1-4.仕事の全体像がわかりにくい
チームで取り組む仕事では、自分の業務がプロジェクト全体のどの部分にあたるのかを理解し、メンバーの進捗に足並みをそろえることが大切です。しかし、メンバーとリアルタイムでコミュニケーションがとりにくい在宅勤務の場合、チームで仕事をしている実感が薄れ、全体像を見失ってしまうことがあるでしょう。
何のために仕事をするのか、何をするべきかがわからなくなり、仕事に対するモチベーションが下がってサボりに移行することもあるようです。
MITERAS(ミテラス)仕事可視化は、中抜け状況や隠れ残業などを見える化。
労務の適正化を実現します。
2.在宅勤務の従業員がサボることで起こる問題
オフィスという仕事に特化した環境や、共に働く仲間と物理的に切り離される在宅勤務は、その特殊な環境ゆえにサボりが発生しやすいといえます。在宅勤務をする従業員が仕事をサボるようになると、全体のパフォーマンスが低下し、やがて企業経営にも影響を与えることになるかもしれません。
具体的に、従業員のサボりによって起こりうる問題を見ていきましょう。
2-1.モチベーションの低下
在宅勤務で周囲の目がないことは、「サボってもいい」という甘えや怠け心だけでなく、「がんばっても褒めてもらえない」「結果だけ見て、プロセスは評価してもらえない」といった不満も生み出します。真面目に努力している人ほど、自分だけががんばっているような気持ちになり、不公平を感じるでしょう。
また、ほかの従業員が「サボっているのではないか」と疑ったり、上司や同僚から「サボっていると思われるのではないか」と不安になったり、従業員同士の不信感が募って関係がぎくしゃくすることもあるかもしれません。サボっている人の分の業務が回ってきたり、しっかり働いているのにサボっていると思われたりすれば、モチベーションの低下につながるおそれがあります。
2-2.生産性の低下
一人がサボると、その分だけ業務が停滞します。サボる人が増えるほど停滞する箇所も増え、最終的には大きな問題に発展する可能性があります。
従業員の働きやすさに配慮して導入した在宅勤務制度が、結果的に従業員のワークライフバランスを乱し、企業全体の生産性低下につながるかもしれません。その結果、働いても企業が成長している実感が得られなくなり、従業員のストレスや過労を招くことも考えられます。
さらに、従業員がサボって業務にかける時間や労力を減らした結果は、サービスや商品の質に表れます。これまでの質を維持できなくなり、顧客の信頼が低下する可能性もあるでしょう。
ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み
3.サボりの程度によっては処分が必要になる
何をもって「サボり」とするかは、企業によって異なります。「テレビを視聴しながら仕事した」「同居の家族の世話で仕事を一時的に中断した」などをサボりの範疇とするのか、線引きに悩んだことはないでしょうか。しかし、業務に影響を与えるようなサボりが続くようなら、処分を検討しなければならない可能性があります。
一般的には、サボり行為の発覚が初めてで、それほど業務に影響を及ぼしていない場合、注意で済むことが多いようです。しかし、「注意しても何度もサボる」「長時間離席して戻ってこない」「業務時間中に副業をしていた」といった場合、経営に与える影響は大きいものとなるでしょう。
懲戒処分には減給、降格、諭旨解雇、懲戒解雇などがあり、従業員の違反行為の程度によって就業規則や服務規程と照らして内容が決まります。いずれにせよ、社内の士気低下や労働力不足につながる可能性が高く、企業としてはできるだけ避けたいのが本音ではないでしょうか。
業務の労働時間管理方法についてお悩みではありませんか?
働き方改革先進企業に聞いた労務&時間管理の傾向をご紹介。
4.在宅勤務中のサボりを防止する方法
在宅勤務の従業員が業務をサボると、企業経営にまで影響が及ぶ可能性があります。だからといって過度に監視すれば従業員はストレスを感じ、生産性が下がったり、企業との信頼関係に影響したりすることも考えられます。では、どうすればサボりを未然に防ぐことができるのでしょうか。
ここからは、サボりを防止する方法を具体的に紹介します。
4-1.業務進捗を可視化し、共有する
上司や同僚の動きが見えず、それぞれのタスクの進捗を把握することができないと、「自分だけがんばっても意味がない」と感じ、積極的に業務を進める気にならないかもしれません。
このような、漠然とした不安や不公平感はサボりの原因になることが多いため、早期の改善が必要です。具体的には、チームメンバー一人ひとり、およびチーム全体の進捗を可視化し、お互いにリアルタイムでチェックできる環境を整備することをおすすめします。
そのためには、プロジェクトのスケジュールや、チームメンバーのタスクとその進捗状況などを、ひとつのプラットフォーム上で管理・共有できるプロジェクト管理ツールなどの利用が効果的です。オフィスで直接声をかけて進捗を確認するのと同じように、気軽にアクセスしてメンバーの進行状況を確認できます。業務の優先順位や、「誰が、何を、いつまでに」の割り振りについても、関係者全員が簡単に共通認識を持てるでしょう。
併せて、業務の進捗報告を義務付けたり、業務の成果物を定期的に提出させたりするのも有効です。業務に対する責任感が高まり、サボりの防止につながります。
4-2.評価制度の見直しを図る
物理的に部下の状況を把握できない在宅勤務では、労働時間での評価が困難です。長時間働いていても、成果を上げられるとは限りません。同様に、プロセスでの評価も困難です。
こうした場合、成果に重点を置いた評価基準にシフトすることで改善が見込めます。「期限どおりに提出できたか」「求められている水準に達しているか」を評価基準にすることで、公平な評価が可能になるでしょう。
ただし、成果が表れにくい業務を行っている人、よく人のサポートをしている人などは、かえって不満を抱く可能性もあります。成果に重点を置いても業務プロセスを軽視するのではなく、「定期的に上司と部下の1on1ミーティングを実施する」「成果の提出の際にプロセスも含めて報告させる」など、密なコミュニケーションをとることも重要です。
4-3.採用方式の変更を検討する
雇用形態を「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に変更する方法もあります。
メンバーシップ型は、日本企業の多くが採用している手法で、採用した人に対して仕事を割り振ります。業務内容や勤務地を明確にせず、採用してから配属を発表する新卒一括採用がこの典型。一方、ジョブ型は欧米で一般的で、仕事に対して人を割り振る手法です。仕事の内容や勤務地など、明示した条件にフィットする人材を採用するため、仕事の範囲と責任の所在がはっきりしています。
メンバーシップ型からジョブ型に移行することで、個々の従業員の業務範囲と責任範囲が明確に線引きされ、自分の役割と果たすべき責務をそれぞれが正しく認識して仕事に取り組むことが期待できるでしょう。
4-4.勤務ルールを見直す
在宅で勤務すると、さまざまな理由で一時的に離席したり、業務を中断したりしなければならないことがあります。例えば、下記のようなケースです。
<在宅勤務でありがちな離席理由>
- 介護が必要な家族に呼ばれた
- 宅配便が届いた
- 家の電話が鳴った
- 急な雨で洗濯物を取り込んだ
- 子供が帰宅して世話が必要
トイレに行く、コーヒーを入れるといったオフィス勤務でも生じる休憩未満の離席と違って、これらは在宅勤務特有です。家族構成や、置かれている状況によっても事情が違うため、一律にサボりと線引きするとかえって不公平になりかねません。
そこで、こうした中断をある程度予想して、始業や就業など労働時間を個人が決められる「フレックスタイム」や、業務(オン)とプライベート(オフ)を切り替えながら働く「スイッチワーク」を導入するのも手です。
最低終業時間を満たし、成果を上げられれば、1日中デスクに向かい続けなくとも問題ありません。自分の調子に合わせて業務と向き合うタイミングを調整できるため、集中力が持続します。
4-5.執務環境の整備
在宅勤務中の従業員は、自宅の執務環境を業務に対応できるように整えます。しかし、オフィスと同等の環境を実現するのは困難で、什器や回線の速度などで不満を感じることが多いでしょう。すると、緊張感がゆるみ、サボりたい欲求が高まってしまうかもしれません。
モバイル回線サービスの導入、オフィス什器の貸し出し、整備費用の補助といったサポーㇳをすることで、環境整備のための金銭的な負担を軽減し、業務の効率化を図れます。
4-6.コミュニケーションツールの見直し
在宅勤務で希薄になりがちなコミュニケーションを補完するため、適切なコミュニケーションツールの導入をおすすめします。お互いの姿が見えない在宅勤務では、意識的に状況を報告することが重要です。
ビジネスチャットツールがあれば、ちょっとした疑問を解決したいときや、アイディアが欲しいときなどは、即時的に情報を共有できて、気軽な雑談もしやすいでしょう。基本的に短文でのやりとりで、普段の会話のようにくだけた表現も使えるため、うまく活用すればコミュニケーション不足を補完できます。
業務の打ち合わせでは、ウェブ会議システムが便利です。対面で行ってきた会議や1on1ミーティング、研修などをオンライン化して、コミュニケーションの頻度と密度を上げてください。
4-7.勤怠管理ツールの導入
従業員の稼働時間の把握だけなら、スマホやPCから始業時と終業時の時間を打刻できる勤怠管理ツールで解決できます。より明確に従業員の状況を可視化したいなら、PCログ確認ができるツールの導入がおすすめです。
PCログと突き合わせられれば、電源のオン・オフやメールの送受信、ネットワークへのアクセス履歴など、正確な稼働時間や業務内容が可視化できます。「何の業務も行っていない」「業務と関係ないページにアクセスしている」など、従業員がサボっているかどうかが把握できるでしょう。
また、申告していない残業や休日の労働などもわかるため、長時間労働の抑止にも役立ちます。勤怠状況をデータとして可視化できることで、管理工数が減るのもメリットです。
ただし、PCログも管理できるツールの場合、従業員が「監視されている」と感じるかもしれません。導入の前には十分な説明を行い、理解してもらうことが必要です。
従業員の仕事状況を可視化して、在宅勤務のサボりを防ごう
在宅勤務における従業員のサボりは、他者から自分の状況が見えにくい在宅勤務ならではの環境に起因しています。ルールや制度の見直しを図るほか、適切なツールを使って進捗や勤怠の見える化を図ることをおすすめします。サボりを未然に防ぐこと、防げなかった場合は早期に兆候を発見して手を打つことが、在宅勤務という働き方を機能させるポイントです。
仕事状況を可視化するためには、「MITERAS仕事可視化」がおすすめです。勤怠データとPCログが簡単に突合でき、サボりのチェックはもちろん、作業の逼迫状況なども確認が可能です。マネジメント側も従業員側も、安心して在宅勤務に臨めるでしょう。
監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。
MITERAS(ミテラス)仕事可視化は、「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツールです。
勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。