近年働き方改革の一環として、フレックスタイム制度を導入する企業が増加傾向にあります。フレックスタイム制度には、働き方改革の側面だけでなく、導入した企業自体にもメリットが多数存在するため、導入を進める企業が増加しています。
今回の記事では、フレックスタイム制度を導入するメリット、コアタイム・フレキシブルタイムとの関係、導入方法を紹介します。フレックスタイム制度についてよく分かっていない方や、導入を考えている経営者の方はぜひ参考にしてください。
目次
1.フレックスタイムとは?
フレックスタイム制度は、従業員が自ら出勤時間や退勤時間、勤務時間を決めることができる制度です。日本においては1988年から合法化されました。
近年ワークライフバランスを重視した働き方を求める方も多く、注目されています。
フレックスタイム制度は従業員が勤怠時間を自由に決められるため、毎日の勤務時間を減らすことで仕事も減ると考えられがちですが、そうではありません。フレックスタイム制度では総労働時間が定められており、一定期間の間に総労働時間分働く必要があります。
そのため、毎日5時間勤務で済ますということはできません。5時間働いた日の翌日は11時間働くなど、勤務時間の合計が企業の指定する時間を満たす必要があります。
企業の指定する労働時間は、法定労働時間内に収める必要があり、法定労働時間を超えた労働時間は時間外労働として扱われます。ただし、時間外労働を行わせる場合には、36協定の締結が必須項目となります。
またフレックスタイム制度は、大企業であるほど導入しやすい傾向にあります。大企業では多くの従業員が在籍しているため、数人休んだ場合でも業務のカバーが簡単であることが理由です。
一方従業員が少ない中小企業では、上記のように他人の仕事をカバーできる人員の確保や労働環境の構築が難しいため、導入しづらいと言われています。
ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み
ワークライフバランスの意義とはなんでしょうか?
優秀人材確保、企業イメージの向上などさまざまなメリットをもたらすワークライフバランスについてご紹介します。
1-1.「コアタイム」と「フレキシブルタイム」との関係
コアタイムとフレキシブルタイムは、フレックスタイム制度を導入する際に、設けることが多い勤務時間の考え方です。コアタイムとフレキシブルタイムの詳細は、以下の通りとなります。
■コアタイム
コアタイムとは、必ず働かなければならない時間帯のことです。企業によってコアタイムと定められている時間は異なります。コアタイムを設けることで、全従業員が揃う時間を作ることが可能です。会議や共同作業など、全従業員が必要な業務はコアタイム内に行うようにしましょう。
■フレキシブルタイム
フレキシブルタイムとは労働者が自分で働く・働かないを判断できる時間帯です。コアタイムを間に挟むように設定することが普通であり、フレキシブルタイム中なら出社時間の調整をしたり中抜け・早退したりすることもできます。
コアタイムとフレキシブルタイムは、必ず設けなければならないものはありません。フレックスタイム制度を導入する際には、各時間帯の設定が必要か否かしっかりと確認しましょう。
2.フレックスタイムを導入するメリット
フレックスタイム制度の導入背景には、前述したような働き方改革の影響もありますが、導入することのメリットも重要視されています。フレックスタイム制度を導入した際のメリットは以下の通りです。
■出勤・退勤時間が自由になる
従業員の中には、出社前に病院に通院したり、保育園などへの送迎が必要なお子さんがいたりする方もいます。そのため、全員が同じ時間に出社・退社するルールだと、窮屈に感じてしまう方も少なくありません。
また、フレックスタイム制度は自分自身で出勤時間を決めるため、遅刻できないという思いから、遅刻者の減少も期待できます。
■残業削減ができる
これまでは、夕方などの遅い時間に会議や取引先との打ち合わせなどがあった場合には、残業として扱われていました。
フレックスタイム制度により出勤時間を調整することで、そういった時間を通常の労働時間内に収めることができるため、残業代を抑えることが可能となります。
■生産性が向上する
仕事が終われば早く退社しプライベートに当てる時間が増え、ワーク・ライフ・バランスが充実するため、従業員のモチベーション維持に繋がります。
モチベーションの維持ができれば、日々の業務における生産性向上も期待できるでしょう。
また、フレックスタイム制度の求人に惹かれて転職してくる人材もいます。優秀な人材を確保することも、生産性の向上に繋がる重要な項目です。
■節電に繋がる
労働中には電気代や空調代など様々な経費が発生しています。前述した残業時間の減少や、生産性の向上による労働時間の短縮などが重なれば、業務に伴う電気代なども抑えることができ、最終的には経費の削減にも繋がります。
残業削減を失敗しない取り組み4選
いますぐダウンロードする ➤➤3.フレックスタイムの導入方法
フレックスタイム制度は、従業員に通知すればすぐに導入できる制度ではありません。フレックスタイム制度を導入する際には、いくつかの手続きを行う必要があります。
ここからは、フレックスタイム制度を導入する際に必要な手続きについて、詳しく解説します。
3-1.就業規則等への規定
フレックスタイム制度とは、出勤時間・勤務時間・退勤時間を従業員が自由に決められる制度です。そのため、就業規則には出勤時間・勤務時間・退勤時間を自由に決めることができる旨を明記しましょう。コアタイムやフレキシブルタイムも設ける際には、一緒に就業規則に明記しておく必要があります。
出勤時間のみ自由に決めることができたり、勤務時間を固定したりすることは、フレックスタイム制度ではありません。
また、就業規則は従業員の要望に応じていつでも確認できる状態にしておきましょう。
就業規則を変更する際には、労働基準監督署長への届け出が必要となるため、注意しましょう。
3-2.労使協定の締結
フレックスタイム制度を導入する際、労働条件を定める労使協定の締結も必要です。フレックスタイム制度を導入する際に必要な労使協定の要点は、以下の通りです。
■清算期間・起算日の明記
前述したようにフレックスタイム制度は、一定期間内に規定の労働時間分働く必要があります。重要となるポイントは、いつからいつまでの期間に一定時間勤務する必要があるかということです。多くの企業では日付こそ異なるものの、清算期間は1ヶ月としています。
■コアタイム・フレキシブルタイムの制定
コアタイム・フレキシブルタイムを設けるならば、各タイムの時間帯を制定しておかなければ、フレックスタイム制度を導入した際にパニックに陥ってしまいます。どの時間から働くことができるのか、必ず出社していなければならない時間はいつなのか、あらかじめ決めておきましょう。
■フレックスタイムの対象者
フレックスタイム制度を会社全体で始める必要はありません。部署ごとに導入して、どのようになるか観察してから、全体で導入することもできます。
そのため、フレックスタイム制度の対象者は、しっかりと明記する必要があります。
4.フレックスタイムを成功させるためにはコアタイムの設定が重要!
フレックスタイム制度の導入を成功させるには、コアタイムの設定が重要なポイントとなります。最後にコアタイム設定のポイントについて解説します。コアタイムを設定する際のポイントは主に以下の2つです。
■朝の9時には設定しない
朝をゆっくりと過ごしたり、満員電車の時刻を避けて出勤できたりすることもフレックスタイム制度のメリットの一つです。コアタイムを朝の9時からと設定し、今までと出勤時間が変わらず、フレックスタイム制度導入前と変化がない状態では意味がありません。
コアタイムは9時などの朝早い時間には設定しないよう、注意しましょう。
■13時~15時に設定する
従業員の中には、朝早く出社して早めに退社したい社員もいれば、朝遅く出社して夜まで残りたい社員もいます。13~15時であれば、どちらの社員の要望にも応えることが可能です。2時間では少ないと感じる経営者の方は11~16時の間にコアタイムを設定しましょう。コアタイムを設ける際には、フレックスタイム制度を最大限活用できるような時間帯にすることが大切です。
まとめ
フレックスタイム制度とは、従業員が自由に始業時間・勤務時間・終業時間を決めることができる制度であり、残業時間の削減や、生産性の向上と言ったメリットがあります。
フレックスタイム制度を導入する際には、就業規則と労使協定の締結が必要であるため、何を明記すべきか、しっかりと確認しておきましょう。また、コアタイムとフレキシブルタイムを設ける際には、各時間帯をはっきりとさせておく必要があります。
会社の生産性や残業時間に悩んでいる方は、当記事を参考にしてフレックスタイム制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。
MITERAS(ミテラス)仕事可視化は、「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツールです。
勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。