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えるぼし認定とは?2種類の認定基準・企業が取得するメリット・申請の流れ

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少子高齢化が進行する日本において十分な労働力を確保するためには、女性の活躍も欠かせません。しかし、すべての企業が女性の長期的なキャリア形成に適した環境を提供できているとは言い難い状況です。そのため、女性の活躍を推進している企業に「えるぼし認定」を行い、さまざまなメリットを与える制度が始まりました。

今回は、えるぼし認定の概要と認定基準、取得するメリットを解説します。えるぼし認定に関心を持つ経営者や管理職者は、ぜひ参考にしてください。

1.えるぼし認定とは?制度導入の背景・くるみん認定との違い

えるぼし認定とは、女性活躍推進法に基づき、女性の活躍を推進している企業が取得できる制度です。えるぼしの「える」はアルファベットの「L」に由来し、「Lady(女性)」や「Lead(手本)」、「Laudable(称賛)」などを意味します。

女性活躍推進法は、女性が仕事をするうえで十分に能力を発揮し、活躍できる環境を整備するために制定された法律です。女性活躍推進法はもともと2015年に10年間の時限立法として制定された法律であるものの、2019年に改正法が制定されて、2020年から順次施行されています。

「えるぼし認定」と混同されることの多い制度の一つが、「くるみん認定」です。くるみん認定は、次世代育成支援対策推進法に基づき、子育て中の女性を応援する企業が取得できる制度です。

つまり、えるぼし認定は「女性の活躍推進」に焦点をあてた認定制度・くるみん認定は「子育てサポート」に焦点をあてた認定制度にあたります。えるぼし認定・くるみん認定を取得することにより、企業の社会的なイメージを高めることができる点は同様です。

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2.えるぼし認定の主な認定基準|2種類の認定に分けて解説!

えるぼし認定の認定基準には採用や継続就業など5個の評価項目があり、5個中の1個でも認定基準を満たす企業はえるぼし認定を取得できます。えるぼし認定を取得した企業は、5個の評価項目の実績を毎年、女性の活躍推進企業データベースに公表しなくてはなりません。

えるぼし認定の評価項目
採用 男女の採用競争倍率が同程度であること
継続就業 継続就業に関する2個の基準のうち、いずれかを満たすこと
・「女性労働者の平均継続勤務年数÷男性労働者の平均継続勤務年数」が雇用管理区分ごとにそれぞれ0.7以上であること。
・「10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された女性労働者の継続雇用割合」÷「10事業年度前及びその前後に採用された男性労働者の継続雇用割合」が雇用管理区分ごとにそれぞれ0.8以上であること。
労働時間等の働き方 時間外労働・休日労働の合計時間が毎月45時間以内であること
管理職比率 管理職比率に関する2個の基準のうち、いずれかを満たすこと
・管理職に占める女性労働者の割合が別に定める産業ごとの平均値以上であること
・直近3事業年度の平均した「課長級より1つ下位の職階にある女性労働者のうち課長級に昇進した女性労働者の割合」÷直近3事業年度の平均した「課長級より1つ下位の職階にある男性労働者のうち課長級に昇進した男性労働者の割合」が0.8以上であること。
多様なキャリアコース 女性非社員の正社員登用など4個の基準のうち、大企業は2個以上・中小企業は1個以上を満たすこと
A 女性の非正社員から正社員への転換(派遣労働者の雇入れ含む)
B 女性労働者のキャリアアップに資する雇用管理区分間の転換
C 過去に在籍した女性の正社員としての再雇用
D おおむね30歳以上の女性の正社員としての採用

えるぼし認定を取得した上でさらに厳しい基準を満たした場合、プラチナえるぼし認定の取得が可能です。ここからは、えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の認定基準をより詳しく紹介します。

2-1.えるぼし認定

えるぼし認定は5個中何個の評価項目において、えるぼし認定の基準を満たしているかにより、3段階に分類されます。各段階の主な認定基準は、下記表の通りです。

1段階目 1〜2個の評価項目で基準を満たすこと
2段階目 3〜4個の評価項目で基準を満たすこと
3段階目 5個の評価項目で基準を満たすこと

1段階目・2段階目にあたる企業は、下記の取り組みを行うことが必要です。

満たさない基準については、事業主行動計画策定指針に定められた取組の中から当該基準に関連するものを実施し、その取組の実施状況について「女性の活躍推進企業データベース」に公表するとともに、2年以上連続してその実績が改善していること。

(引用:厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」に基づく認定を取得しましょう!」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000175224.pdf)

いずれのえるぼし認定を取得した企業も、男女雇用機会均等法や労働基準法などに違反すると認定が取り消されるため、注意しましょう。

2-2.プラチナえるぼし認定

プラチナえるぼし認定はえるぼし認定を取得した企業の中でも特に女性の活躍を推進している組織であることを示す認定です。プラチナえるぼし認定を取得するためには、下記の条件をすべて満たさなくてはなりません。

【1】5個の評価項目において、プラチナえるぼしの認定基準を満たすこと
【2】行動計画に基づく取組を実施し、計画に定めた目標を達成すること
【3】男女雇用機会均等推進者、職業家庭両立推進者を選任すること
【4】女性活躍推進法に基づく情報公表項目のうち、社内制度の概要を除き8項目以上を女性の活躍推進企業データベースで公表すること

(出典:厚生労働省しょくばらぼ「女性活躍推進企業認定『えるぼし・プラチナえるぼし認定』」/https://shokuba.mhlw.go.jp/published/special_02.htm)

行動計画とは、自社の女性の活躍に関する状況を把握し、課題を分析した上で作成する計画を意味します。行動計画内に記載した目標を達成することは、プラチナえるぼし認定を取得するための条件の一つです。

3.企業がえるぼし認定を取得するメリット3選

企業がえるぼし認定を取得する代表的なメリットは、イメージアップにつながること・社員満足度が向上することです。公共調達で優遇を受けられたり労働環境整備などの必要資金を低金利で借入できたりすることも、えるぼし認定取得のメリットにあたります。

ここからは、えるぼし認定のメリットをより詳しく紹介します。

3-1.企業のイメージアップにつながる

えるぼし認定を取得すると、認定段階に応じたマークを自社商品のパッケージや名刺に付けることができます。そのため、社会に対して女性の活躍を推進している企業であることをアピールし、イメージアップを狙うことで、売上アップを図ることも可能です。

また、えるぼし認定のマークを求人広告に使用すると、優秀な人材からの応募を集められる可能性が高まります。キャリアアップに対する意欲の高い女性やワークライフバランスをとって効率的に働きたいと考える男性・女性の応募を促進することができるためです。

ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み

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3-2.社員満足度の向上につながる

えるぼし認定の評価項目には、男女ともに働き続けやすい環境を整えること、過剰な残業や休日出勤を減らすことなどが含まれています。そのため、えるぼし認定を取得することは、社員満足度を向上させるための有効な一手です。

社員満足度が向上することは、企業にとって下記のようなメリットをもたらします。

●生産性が向上する
●優秀な人材の社外流出を防止できる
●顧客満足度が向上する

社員満足度の高い企業の社員は、お客様に対して丁寧な対応をとる傾向があります。社員満足度の高い企業で働く社員は「自社の商品やサービスの特徴を適切に把握し、お客様に説明しよう」と努めることが理由です。そのため、えるぼし認定の取得は間接的に、お客様の利益につながります。

3-3.公共調達・低利融資の優遇措置が受けられる

厚生労働省のパンフレットに下記のような記載がある通り、えるぼし認定を取得した企業は、公共調達で優遇されるケースがあります。

えるぼし認定、プラチナえるぼし認定を受けた事業主は、公共調達で加点評価を受けることができ、有利になる場合があります。

(引用:厚生労働省都道府県労働局雇用環境・均等部(室)「女性活躍推進法に基づくえるぼし認定プラチナえるぼし認定のご案内」/https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000175224.pdf)

また、えるぼし認定を取得した企業は日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金(企業活力強貸付)」を、通常よりも低金利で利用できます。働き方改革推進支援資金は、非社員の処遇改善を進めたり企業内に保育施設を整備したりする際の資金を借入できる仕組みです。2021年7月現在の利率の引き下げ幅は最大0.65%で、返済負担を大幅に軽減できるケースがあります。

残業削減を失敗しない取り組み4選

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4.【4STEP】えるぼし認定企業への申請の流れ

最後に、えるぼし認定を取得する際の流れを紹介します。えるぼし認定を取得するためには、適切な状況把握と課題分析した上で行動計画を策定し、届出しなければなりません。その後、女性の活躍に関する情報を公開し、所定の方法で、えるぼし認定を申請します。

えるぼし認定企業への申請の流れ
【STEP1】 女性の活躍に関する状況を把握し、課題分析した上で、行動計画を策定
【STEP2】 行動計画を社内外に公表し、都道府県労働局に届出
【STEP3】 女性の活躍推進企業データベースなどに、女性の活躍に関する情報を公開
【STEP4】 都道府県労働局に、えるぼし認定を申請

上記のように、えるぼし認定を取得するためには、一定の時間と労力が必要です。せっかく取得したえるぼし認定を労働基準法違反によって取り消しされる状況を防ぐためには、社員の勤務実態を適切に把握しましょう。

また、社員の勤務実態を適切に把握するためには、業務可視化ツール「MITERAS仕事可視化」の導入がおすすめです。業務可視化ツール「MITERAS仕事可視化」を有効に活用し、社内外に自信を持って誇れる労働環境を整えて、えるぼし認定を取得・維持してはいかがでしょうか。

5.えるぼし認定の取り消し

えるぼしマークは、「女性活躍推進法」に基づく認定制度です。そのため、女性活躍推進法に違反した場合や、認定基準未満となった場合には、えるぼし認定が取り消される場合があります。

具体的には、次の3点が取り消し対象となる項目です。
・認定一般事業主が女性活躍推進法第9条に規定する基準に適合しなくなったと認めるとき
・女性活躍推進法又は女性活躍推進法に基づく命令に違反したとき
・不正の手段により認定を受けたとき

一度認定されたとしても、取り消しになってしまう場合がありますので、注意が必要です。

まとめ

えるぼし認定は、女性の活躍を推進している企業の取得できる認定です。えるぼし認定を取得すると、企業の広告活動や採用活動においてえるぼしマークを使用でき、社会的なイメージアップを図ることが可能です。

企業の社会的なイメージは、商品・サービスの売上や採用活動の成否を左右する重要要素にあたります。企業の明るい未来のためにもぜひ、えるぼし認定を取得しましょう。そして、取得したえるぼし認定を維持するためには、業務可視化ツール「MITERAS仕事可視化」の導入がおすすめです。

監修:MITERAS部

「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。


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