サービス残業も含めた長時間労働による労働災害の事件が社会的な問題となっている現代の日本において、長時間労働の解消は1つの課題です。しかし、長時間労働の基準が統一されていないため、どこまで働いて良いのか分からない方も多くいるでしょう。
そこで今回は、長時間労働の定義と長時間労働が発生する原因を解説します。長時間労働を解消するための方法も紹介しているため、長時間労働をなくしたいと考えている方は、ぜひ当記事を参考にしてください。
目次
残業時間への対策していますか?
貴社の残業時間が平均よりも多いのか?少ないのか?解決策も含めてお伝えします。
1.長時間労働の定義や基準は?
長時間労働という言葉は浸透しているものの、どこからどこまでが長時間労働であるのかの基準は曖昧です。結論を先に述べると、明確な基準や定義はありません。しかし、目安となる時間はあります。目安となる時間を知ることで、長時間労働の基準を理解することが可能です。
ここでは、目安となる時間について具体的に紹介します。
①36協定による基準(約218時間)
労働基準法第32条では、勤務時間は1日8時間以内かつ1週間に40時間以内と定められています。
(出典:「電子政府の総合窓口e-Gov」/https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=322AC0000000049#123)
しかし、繁忙期はこの時間を守ることができません。そこで、労働基準法第36条では、労働者・経営者双方の話し合いによって時間外労働が成立します。36協定の残業時間は、原則として1ヶ月に45時間以内と定められています。そのため、この36協定を超える労働時間が長時間労働の基準の1つです。
②過労死の基準(約253時間)
過労死基準は、厚生労働省で定められています。厚生労働省の定める過労死基準は、1ヶ月の残業時間が80時間以上です。過労死基準を超えると、脳疾患や心臓疾患を発症する可能性が大幅に上がります。
1ヶ月残業時間が80時間を超えた場合、労災認定されることがあるため、過労死ラインも長時間労働の基準です。
③精神疾患の基準(約333時間)
労災認定基準の1つに「精神疾患に関する労災認定基準」があり、この基準を超えた場合、精神疾患発症のリスクが高まります。精神疾患の基準は、1ヶ月の残業が160時間、もしくは労働時間の合計が333時間であることです。精神疾患の基準を超えていた場合、明らかに長時間労働となります。
このように、長時間労働の基準は1つに決まっていませんが、長時間労働を避けるためにも、上記の3つの基準を常に意識して仕事を行いましょう。
2.長時間労働が発生する原因3選
長時間労働は、発生する原因を知ることで、解消できる問題である場合が大半です。単に雇用者だけの原因ではなく、労働者が原因であることもあります。
そこで、雇用者・労働者が原因である長時間労働について詳しく解説します。快適に働くためにも、何が原因で倒時間労働が発生しているかを1つずつ確認していきましょう。
2-1.人手不足と非効率な働き方が蔓延しているから
近年変化しつつありますが、日本の社会は残業が当たり前という考え方が残っています。
最近では、IT業界や建設業界を中心に、人手不足が深刻な問題となっています。人手不足が問題である場合、現在働いている人に作業が集中するため、長時間労働に対する根本的な解決が難しいです。しかし、労働者一人一人が長時間労働を減らすという意識を持ち、効率的な業務を行うことで、長時間労働を解消することができます。
2-2.管理職のマネジメントが不足しているから
ほとんどの会社では、部下の長時間労働を見て見ぬ振りをする管理職が多く、改善のための工夫や対策を行っていないため、長時間労働が蔓延しています。
管理職のマネジメント不足は、管理職と部下のコミュニケーションの機会を増やしたり、部下からの相談ができる環境作りを行ったりすることで解決が可能です。また、管理職に対し、部下の残業を減らさせるように掛け合うことも効果的な解決手段となります。
2-3.他の人が働く中で帰りづらいから
自分の仕事は終えていても社内でまだ他の人が働いていると、帰りづらい雰囲気となり、長時間労働が発生しやすくなります。とくに、若い人ほどこのような傾向が強く、仕事は終わったものの、とりあえず残業をしている人も少なくありません。
このような会社では、上司が残業をしていても帰宅することができる雰囲気作りが求められます。社内で一斉に帰宅する日を決めたり、仕事が終わった部下を見つけたら帰宅するように促したりすることが効果的です。
3.長時間労働が引き起こす問題
長時間労働は、法律的に企業が罰せられるだけではありません。長時間労働は雇用者と労働者の双方にとってのデメリットとなります。
ここでは、長時間労働が引き起す問題について、企業・従業員それぞれの立場から解説します。
【企業が負う問題】
・離職率の増加
長時間労働が続くと、労働者はやる気がなくなったり、勤めている企業はブラックだと感じるようになったりします。社会の大きな傾向としてホワイト企業が推進される中、ブラック企業にいつまでもいたいと思う人はいません。
離職率が高くなると人手不足となり、残った人がさらに長時間労働をするという悪循環に陥ります。
・社会的信用の失墜
労働災害は事業者の責任となるため、全国に企業名が報道される上、社会的信用を失います。社会的信用を失うと関連会社やお客様を失ったり、退職者が急増したりと、デメリットしかありません。
・利益の減少
残業をすると、割増賃金として余計な賃金を払うため、企業側の出費が大きくなります。企業側の出費が増えることは、企業にとっての利益がなくなることに繋がります。
【従業員が負う問題】
・生産性の低下
長時間労働をすることで集中力が切れ、業務効率が低下します。また、働いてもなかなか終わらないため、従業員のモチベーションは低下する一方です。また、長時間労働により、慢性的な睡眠不足や疲労によるストレスも増加するため、生産性は一層低下します。
・うつ病のリスク上昇
長時間労働が続くと、適切な休養が取れません。リフレッシュすることができないため、うつ病になるリスクが高くなります。うつ病になると倦怠感を感じ、仕事を今まで通りこなすことができません。
4.長時間労働を解消するための対処方法を紹介
長時間労働を改善する手段として、上司が部下に帰宅させることも手段です。帰宅を促す方法は、上司がしっかりしていれば問題ありません。しかし、上司の裁量に大きく左右されるため、監督指導だけでは長時間労働の改善に繋がらないこともあります。
ここからは、上司の裁量に委ねない、長時間労働への対処方法を紹介します。
4-1.テレワークやフレックスタイムを導入する
テレワークを導入することで、自宅やカフェにいながら仕事することができます。そのため、自分のすべきことを終えたら、そのまま仕事を終えることが可能です。
会社で行う必要がない書類作成などはまとめてテレワークの日に行い、会議や打ち合わせをまとめて行うことで、仕事の効率化が見込めます。
また、フレックスタイム制度も長時間労働の対策となります。フレックスタイムは上司の裁量ではなく、個人に決定権があることが特徴です。
コアタイムを設けることで、1日8時間の勤務に縛られることなく、業務の忙しさによって就業時間を自分で決めることができます。夜遅くまで勤務した場合、翌日は遅めに出勤するなど自分で出勤時間を調節することができるため、疲労回復にも繋がります。
4-2.勤怠管理ツールを導入する
上司の裁量に委ねないという点で、勤怠管理ツールの導入も効果的です。上司だけでなく、多くの社員が勤務実態の情報を把握できるようにすることで、長時間労働の実態を知ることができます。
勤怠管理ツールを導入する際、使用者が簡単に使えるシステムにすることが重要です。勤怠管理ツールの操作に時間を割いてしまっては、逆に効率が悪くなってしまいます。そのため、勤怠管理ツールを導入する際は、利用者のことを考えたシステムのあるツールを選びましょう。利用者の目線で作られたシステムやツールは、勤怠を簡単に打刻したり、人事部が手軽に勤怠状況を確認したりすることができます。
また、今までのシステムと連携できる勤怠管理ツールを選ぶこともポイントです。現在使っている経費精算ツールなどがある場合、新しい勤怠管理ツールと連携することで業務の効率化が図れます。既存のシステムに新たに勤怠管理機能を付け加えるだけの場合、コストを削減することも可能です。
テレワークで大きな課題となる「業務の見える化」
そこで注目されるようになったのが「PC監視ツール」です。ツール導入メリット・注意点のほか、おすすめ商材についてご紹介します。
まとめ
長時間労働は明確な基準がありません。しかし、長時間労働となる目安は労働基準法や厚生労働省によって定められています。そのため、長時間労働の目安をしっかりと理解しておくことが大切です。
長時間労働を続けると離職者が増えたり、うつ病になったりと、雇用者・労働者双方にデメリットしかありません。長時間労働をしなければならない環境にいる場合、改善できる方法はあるか、当記事を参考に一度考えてみましょう。
監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。
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