コラム 働き方

ワークシェアリングとは?意味・事例やメリット・デメリットを解説

働き方

働き方改革が行われる中で、「ワークシェアリング」が注目されています。ワークシェアリングとは、仕事を分け合い、労働者一人あたりの負担を減らし雇用を生み出すことを目的に行われる手法です。

オランダなどの諸外国でも実績を上げており、日本でも導入されている企業が増え、現在では様々な企業で問題解決に繋がり成功を収めています。
そこで今回は、ワークシェアリングの意味や種類など基本的な考え方から、導入方法や成功事例を紹介します。

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1.ワークシェアリングの意味とは?

ワークシェアリングとは、これまで一人で担当していた仕事を複数人で分けることによって、一人にかかる負担を減らそうというものです。さらに、一人にかかる負担を減らすことによって、効率性と生産性のレベルアップを目指そうという考え方です。

ここでは、ワークシェアリングに注目が集まった背景と種類について解説します。

1-1.ワークシェアリングに注目が集まった背景

ワークシェアリングは、日本では10年以上前に提唱されていたものですが、海外ではもっと前から導入され成功を収め、さらなる見直しが行われています。

ワークシェアリングが注目を集めた背景には二つあり、一つは失業率の高さがあります。ワークシェアリングで一人の仕事を分担するために、人を雇用すると失業率が低下し、さらにハードワークの軽減が可能です。現にアメリカでは、失業率が大幅にダウンした実績が多数報告されています。

もう一つは、長時間勤務によるハードワークによって身体や心を壊してしまう労働者が後をたたないということです。一人で行う業務を複数人で行うことにより、前述したように個人負担が軽減され、時間や心に余裕が生まれることで、効率的に生産性を上げることができるとされています。現在、ワークシェアリングは世界各国で注目されている手法の一つです。

また、近年ではワークライフバランスという言葉にも注目されています。

ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み

ワークライフバランスの意義と取り組み

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1-2.ワークシェアリングの種類

ワークシェアリングは、主に4種類に分けられます。各種類についての説明は以下の通りです。

①雇用維持型
中高年や退職者の雇用を維持するために、一人当たりの労働時間を減らして行います。人手不足の企業には適した手法です。

②雇用創出型
休職中の人に対し、新規雇用を生み出すために行われます。フルタイムの労働者を雇用するというよりは、パートタイムや短時間労働者を複数雇用することで業務を分担します。

③緊急対応型
急激な生産量の変動に対するワークシェアリングで、現在在籍している労働者を解雇することなく、既存の仕事量を複数の労働者の間で分ける手法です。具体的には、工場の稼働時間の短縮、シフト制の業務時間の短縮、休日を増やすなどの対策があります。

④多様就業型
フレックスタイム、在宅ワーク、パートタイム勤務などの多様な就業形態の人材を採用し、育児や介護などで従来では勤務が困難であった人材を活用する手法です。企業はニーズに合った雇用ができ、労働者も自分に合った働き方を見つけ出せるなど、双方にメリットがあります。

多様性に関しては下記の記事もご覧ください。
ダイバーシティ(多様性)推進のメリット・デメリット・問題点とは?

2.ワークシェアリングのメリット・デメリット

ワークシェアリングは、新たな雇用の創出を主な目的としたものですが、日本では長時間労働の緩和、離職率軽減、結果的に労働環境が良くなるなどの期待が高まっています。ただしワークシェアリングには、メリットだけではなくデメリットが存在することも事実です。

ここでは、企業と労働者双方のメリットとデメリットには、どのようなものがあるかを紹介します。

2-1.メリットは「職場環境の改善」と「労働時間短縮」

企業と労働者のメリットは、「職場環境の改善」と「労働時間の短縮」があげられます。
それぞれの解説については以下の通りです。

◯企業にとってのメリット
ワークシェアリングのメリットは、労働時間を短縮し、複数の人数で業務をシェアすることです。本当に重要な業務に集中でき、生産性の向上が期待できます。業務の整理を行って無駄な会議などを減らし、効率を考えた「職場環境の改善」を行うことが可能です。

◯労働者にとってのメリット
労働者一人ひとりの「労働時間短縮」を実行し負担が軽くなると、気持ちに余裕ができるため仕事に対する意欲向上が期待できます。労働時間の短縮によりプライベートの時間が増えるため、モチベーションのアップにも繋がります。

2-2.デメリットは「生産性の低下」と「収入の減少」

企業と労働者のデメリットは、「生産性の低下」と「収入の減少」があげられます。
それぞれの解説については以下の通りです。

◯企業にとってのデメリット
企業にとってのデメリットは、「生産性の向上」が必ずしも達成できるとは限らないことです。様々な雇用形態で働く労働者が増え、個人の負担が減ったとしても、個々の労働者の給与や保険などの保障を考えると、支出が増加する懸念が生じます。
また、多数の労働者が業務に関わることで、業務の引き継ぎ、時間のロスなどでかえって業務が煩雑になる場合があります。その結果、「生産性の低下」につながってしまうことが考えられます。
ただし、起こりうるリスクを想定し、計画的にワークシェアリングを進めることでリスクを回避することができます。

◯労働者にとってのデメリット
労働者の負担が減り、勤務時間が短くなるということは、給料が減る可能性が高くなります。給料が減ると労働者側からの反発が考えられますが、その分スキルアップの研修費用を会社が負担したり、副業を許可したりすることでカバーできるとされています。

3.ワークシェアリングの導入方法

ワークシェアリングが近年注目されている理由、メリット・デメリットを理解し実際に導入しようとしても、方法がわからないという人も多いのではないでしょうか。
最後に、ワークシェアリングの具体的な導入ステップと、実際に導入し成功した事例を紹介します。
導入ステップは以下の5段階です。

現状の業務・実行方法・人材を把握する
まずは現状を把握することが重要。どのような仕事に何人関わっていて、どのような方法で行い、どれくらいの時間とコストがかかっているかを把握する。
不要な業務や無駄な業務を見直す
現状を分析し、業務の中で不要で無駄な業務をあぶり出してなくす、または違う方法で行うように見直す。
ワークシェアリングが可能な業務・職種を探る
ワークシェアリングが可能な分野や職種を探り、ワークシェアリングに向けてマネジメントする。
ワークシェアリングに向けてのマニュアルを作る
ワークシェアリングがどのように行われ、誰が統括するか、情報共有する項目などの整理が必要となるため、マニュアルを作る。
業務の評価を行い、業務の進捗状況を確認する
実際のワークシェアリング実施において、目的が達成できているか、業績に貢献しているかなど評価を行い、進捗状況や課題解決状況を確認し必要時修正する。

3-1.ワークシェアリングの成功事例

我が国のワークシェアリング導入の成功例を紹介します。

ある企業は、平成13年のITバブル崩壊の非常事態への対応策として、工場部門の稼働を週3休制とし、3ヶ月間実行しました。その後、全社に拡大し、実施期間は半年間に引き伸ばされ、成果を得ました。ワークシェアリングの対象期間を延長したにもかかわらず、工場労働者の意欲を削ぐことなく理解が得られたポイントは下記の通りです。

  • 工場ラインの余裕時間を活用し、若手労働者の研修に当て、能力開発の強化を通じて生産性の向上に積極的に取り組んだ。
  • 労働者の給与が1日約2000円の減額となったが、空いた時間が余暇や家庭生活の充実に繋がり不満が出なかった。
  • 月4日の休業のうち1日は有給休暇を付与し、結果的に1時間当たりの賃金が向上した。
  • 本来は週3休制の対象外だった管理部門も巻き込み、部門による待遇格差が出ないよう公平性に配慮した。
  • 制度を導入するときには、会社側が労働者へ直接説明を行って理解を得た。

自社にワークシェアリングのことを熟知した人事・労務の専門家がいない場合は、人事・労務のコンサルタントに依頼することをおすすめします。

まとめ

ワークシェアリングは、日本ではまだ導入されている事例は少ないですが、将来的に重要となる手法の一つです。雇用の創出やハードワークの緩和、様々な働き方の提案など、現代の労働環境の課題を解決する一助となるでしょう。

メリットは職場環境の改善と労働時間短縮が可能という点と、デメリットは生産性の低下と労働者の収入の減少という点があげられます。綿密な調査と計画を練った上でワークシェアリングの手法を取り入れると、デメリットを最小限に抑え、メリットを伸ばすことが可能です。

人事・労務に関する専門コンサルタントに依頼して、効果的なワークシェアリングを実現しましょう。

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