メディアでしばしば目にする「健康経営」に関心を持ち、導入しようと考える経営者・人事担当者もいるでしょう。健康経営は、国や地方自治体も推奨する時代の流れに沿った経営手法に該当します。また、健康経営に取り組むことは、企業としての成長力・競争力を維持するために重要な事柄です。
この記事では、健康経営の意義と取り組むメリットを解説します。健康経営の導入方法も解説するため、社員の健康管理や増進に取り組み、職場環境を改善したい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
1.健康経営とは?
健康経営とは、社員の健康を保持・増進するための取り組みが企業にとって重要な投資であると認識し、戦略的に実践することです。健康経営はそもそも、アメリカの臨床心理学者の提唱した「ヘルシーカンパニー」という概念に基づく考え方に該当します。ヘルシーカンパニーとは、経営管理と健康管理を総合的にとらえて、健康投資を行うことで、企業の業績向上を目指す概念です。
近年では社員が50人以上の企業に対してストレスチェックを義務づける制度が実施されるなど、社員の健康管理を行うことが、企業の責務になりつつあります。健康経営に取り組むことは、企業の責務を果たし、リスクマネジメントを行うための有効な一手です。
下記のような特徴を持つ企業は特に、健康経営に取り組む必要性が高いといえます。
●長時間労働が頻繁に発生する企業
●企業イメージを向上させたい企業
長時間労働が慢性化している企業では、体調の異変を感じた際に医療機関を受診することが難しく、本人の知らないうちに、深刻な病気を発症しているリスクがあります。健康経営に取り組むことは、社員の命や健康を守るためにも重要な事柄です。
1-1.健康経営が注目されるようになった背景
健康経営が注目されるようになった背景には、健康保険の赤字額が企業財政を圧迫してきた事実があります。健康保険組合連合会によると、2021年度予算の経常赤字は5,000億円を超えており、健保組合の約8割が赤字です。
(出典:健康保険組合連合会「令和3年度 健康保険組合の予算早期集計結果(概要)について」/https://www.kenporen.com/include/press/2021/2021042201.pdf)
健康保険の赤字は、各企業が一部の額を負担しなければなりません。高収益企業でも、健康面の問題を抱える社員が多い場合、経営を圧迫する恐れがあります。また、不健康経営が慢性化している企業では、社員の離職率が高くなることが多く、イメージダウンにつながるリスクを伴うことも問題です。
さらに、健康経営の推進は、2013年に閣議決定された「日本再興戦略」における「国民の健康寿命の延伸」に基づく取り組みの一つに該当します。内閣府では健康投資に積極的な企業が評価される仕組みづくりも進めており、健康経営を実現することで、社会的な評価を高めることも可能です。
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2.企業が健康経営に取り組むメリット3選
健康経営に取り組むためには、一定の時間とコストが必要です。しかし、健康経営に費やす時間やコストは、企業にとってのメリットにつながる必要費用とも考えられます。
ここからは、企業が健康経営に取り組むメリットを3つ紹介します。詳しいメリットを把握し、自社にとって健康経営が必要な施策であるかを判断しましょう。
2-1.(1)企業イメージが向上する
健康経営に取り組むメリットの一つ目は、企業イメージが向上するということです。企業イメージは、消費者の行動を左右する要素に該当します。同じ品質・内容の商品・サービスであれば、消費者は、企業イメージの良い企業のものを選ぶことが自然です。結果として商品・サービスの売上が向上すれば、多くの収益を確保できます。
さらに、企業イメージは、取引先の決断を後押しする要素です。企業イメージが向上すると商談がスムーズに進み、大口の契約を獲得しやすくなるケースがあります。
2-2.(2)生産性向上につながる
健康経営に取り組むことで、仕事をするために必要な心身の基礎をしっかりと固めることができます。社員の健康状態が改善されると、急性疾患による長期休業のみならず、日常的な体調不良による欠勤を予防できます。
また、社員が心身ともに健康な状態で仕事に取り組むことで、集中力増加による労働時間の削減やミスの減少、組織活性化による新しいアイディアの創出など、イノベーションの源泉を獲得することができます。
2-3.(3)人材の確保と定着率の維持・向上につながる
最後に、人材の確保・定着率の維持・向上につながることです。健康経営に取り組むことで、社員にとって働きやすい職場環境を整備できます。働きやすい職場環境の企業は優秀な人材を確保しやすく、企業の成長可能性が高まるでしょう。
さらに、働きやすい職場環境の企業では、人材の定着率を高く維持することができます。
優秀人材の定着により、継続成長のための新規事業創出や他社との差別化戦略の流出が防止できます。健康経営への取り組みは、その土台づくりとも言えます。
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いますぐダウンロードする ➤➤3.「健康経営優良法人制度」「健康経営銘柄」に認定・選定された企業の事例
健康経営優良法人制度とは、特に優良な健康経営を実践している企業等を顕彰するため、経済産業省・日本健康会議が運営する制度です。健康経営優良法人に認定された企業には、PR活動などにおいて「健康経営優良法人」ロゴマークを使用することが認められます。
健康経営銘柄とは、東京証券取引所の上場企業の中から選定される、優良な健康経営を実践している企業です。健康経営銘柄に選定されることで投資家に対し、企業の魅力をアピールできます。
「健康経営優良法人」に認定された企業の事例:製造業界の中小企業 |
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残業上限の法制度化を見据えた活動として働き方改革・健康経営に取り組み、生産性の向上を実現しました。 《具体的な取り組み》 |
(出典:経済産業省「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定法人取り組み事例集」/https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_jireisyu210325.pdf)
「健康経営銘柄」に選定された企業の事例:小売業界の大手企業 |
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経営トップ自らがCHO(最高人事責任者)を務めて、健康経営に取り組んでいます。結果として、男性の肥満・脂質・禁煙などの指標が改善(※)し、社員の健康増進に寄与しました。 |
※2013年度の検査結果、2020年度の検査結果の比較
(出典:経済産業省「2021健康経営銘柄選定企業紹介レポート」/https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/set_meigara_report2021.pdf)
健康経営優良法人の中でも特に健康経営で成果をあげている企業等には、「ホワイト500」「ブライト500」の称号が与えられます。健康経営に取り組む際には、ホワイト500・ブライト500の取得を目指すと良いでしょう。
4.健康経営を実現するための導入ステップ
健康経営を導入する際には、正しい手順を把握したうえで実践手法を検討する必要があります。また、健康経営を導入する際には、経営者を含め全社で取り組みの重要性を意識し、実践していくことが大切です。
以下では、健康経営を実現するための導入手順をステップ別に解説します。
【1】事前準備 | ●健康経営を企業理念の中に明文化する ●経営理念に基づく具体的な行動指針を社内外に示す |
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【2】組織体制作り | ●社員の健康管維持や増進を主導する組織体制を構築する |
【3】現状の確認 | ●健康診断やストレスチェックの結果から社員の健康状態を把握し、課題を設定する |
【4】計画作成、実行 | ●自社の課題に即した取り組みを計画する ●策定した計画に沿い、健康経営を実践する |
健康経営の計画においては、あらかじめ評価指標を決定し、定量的な目標を定めることが重要です。健康経営の導入後は、評価指標に従い、取り組み結果を評価するとともに、新たな課題設定や課題解決を繰り返し行っていきます。
まとめ
健康経営とは、社員の健康を保持・増進するための健康投資を戦略的に実践することを指します。健康経営に取り組むことで企業は、企業イメージの向上・社員の生産性向上などのメリットを得ることが可能です。
健康経営を導入する際には、事前準備・健康管理を主導する組織の整備・現状と課題の把握・計画作成と実行といったステップを踏みます。健康経営の計画を立てる際には、健康経営優良法人に認定・健康経営銘柄に選定された企業等の取り組みからヒントを得る方法もおすすめです。
監修:MITERAS部
「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。
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