働き方改革の全体像とは?中小企業が取るべき具体的な対応策も紹介

2018年に成立した働き方改革関連法に合わせて、会社経営者や人事部の方は対応に迫られるようになりました。中小企業が働き方改革に対応するためには、具体的な対応策を知り、正しい方法を取ることが大切です。

そこで今回は、働き方改革の目的や具体的な内容、中小企業が取るべき具体的な対策についてご紹介します。さらに、働き方改革への対応を怠ることで生じる問題もまとめました。中小企業の経営や人事業務に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

1.働き方改革とは?

働き方改革は、多様な働き方ができる社会を目指して定められた、政府の重要政策の1つです。働き方改革関連法が2018年6月29日に可決および成立し、2019年4月から施行されました。

働き方改革は、少子高齢化などの日本が抱える社会レベルの課題から、働く人が能力を存分に発揮できる環境作りなどの社内レベルの課題までの解決を目的としています。
現状、日本では長時間労働や非正規雇用、子育てや介護をしながらの勤務が難しいことなどが問題です。しかし働き方改革によって、労働環境の改善や多様な働き方の実現が期待されています。

厚生労働省は、働き方改革の実現に向けた取り組みとして、以下の7つを挙げました。

  • 非正規雇用の待遇差改善
  • 長時間労働の是正
  • 柔軟な働き方ができる環境づくり
  • ダイバーシティの推進
  • 賃金の引上げと労働生産性向上
  • 再就職支援と人材育成
  • ハラスメント防止対策

上記の7項目は全て、日本社会が抱える課題を解決するための重要な取り組みです。企業の経営者や人事部の担当者は、働き方改革の実現に向けて、各項目で定められる施策を実行する必要があります。

働き方改革関連法の施行によって、社内規定の変更を迫られる企業も少なくありません。対応が不十分な場合は、法的に罰則が与えられるケースもあるため注意が必要です。

ただし、働き方改革によって社内の労働環境を整備することは、従業員の満足度の改善に役立つため、長期的に見れば企業の業績向上にも効果を発揮します。具体的な対策について経営者や人事部の担当者が正確に理解し、施策を進めていけば、企業にとってプラスの側面も多いです。

働き方改革に対する充分な理解のため、働き方改革の必要性や、働き方改革における3つの柱についてご紹介します。

1-1.働き方改革の必要性

働き方改革は、日本の社会経済が抱える問題点を解決するために必要です。特に、以下に挙げるような問題点の解決が期待されています。

  • 少子高齢化による労働力の不足
  • 長時間労働と過労死問題
  • 国際的に見た労働生産性の低さ

少子高齢化と人口減少は、労働力の不足に繋がる問題です。現在の日本社会では、建設・介護・飲食・運輸などの業界で人手不足が懸念されています。働き方改革によって多様な働き方ができるようになれば、労働力の不足を解決可能です。

長時間労働を禁じることで、働く人の健康面でのリスクを削減することができます。長時間労働は過労死にも繋がる重大な問題のため、働き方改革による早急な対策が必要です。

働き方改革は、国際的に見た労働生産性を高める効果も期待されています。IT投資や人工知能の導入などの効率化施策で労働生産性を高めることは、日本経済を強化するために必要な取り組みです。

1-2.働き方改革における3つの柱

働き方改革では、大枠となる3つの柱が定められています。

①正規、非正規の不合理な格差の解消
1つ目の柱となる正規、非正規の不合理な格差の解消は、働く人が正当な処遇を受けていると実感できるようにすることが目的です。正規労働者と非正規労働者の不合理な格差を埋めていけば、自分の能力を評価されている納得感を誰もが得られます。

②長時間労働の是正
2つ目の柱となる長時間労働の是正は、ワーク・ライフ・バランスを改善し、労働参加率を向上することが目的です。労働時間が短くなれば、仕事と家庭生活の両立や、女性や高齢者も仕事に就きやすくなるなどの社会的なメリットが生まれます。

③多様な働き方の実現(ライフステージに合った仕事の選択)
3つ目の柱となる多様な働き方の実現は、ライフステージに合った仕事を誰もが選択できるようにすることが目的です。転職が不利にならない柔軟な労働市場や多様性を認める企業慣行を作ることで、働く人のライフステージに合ったキャリアを自ら選択できます。
また、テレワークやフレックスタイム制度などの勤務制度を整えれば、働き方をより柔軟化させることが可能です。

2.働き方改革関連法の具体的内容

働き方改革関連法で定められた内容には、大企業と中小企業で異なる時期に施工される項目もあります。以下の基準のいずれかに当てはまる雇用者が中小企業、その他が大企業です。

引用:「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」/厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/content/000463185.pdf

働き方改革関連法の具体的な施工内容について、以下の表にまとめました。

施工項目:年次有給休暇の付与義務
  • 内容:労働者に年5日間の有給休暇を確実に取得させる
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:30万円以下の罰金
施工項目:労働時間の客観的把握
  • 内容:雇用するすべての労働者について、客観的な記録に基づき労働時間を把握する
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:なし
施工項目:時間外労働の上限規制
  • 内容:平時の残業時間上限は1か月で45時間、1年で360時間に制限
    特別条項付き36協定の利用時でも1か月の残業時間の上限は100時間
  • 適用開始時期:【大企業】2019年4月1日
    【中小企業】2020年4月1日
  • 違反時の罰則:半年以下の懲役または30万円以下の罰金
施工項目:月60時間を超える時間外労働の割増賃金率引き上げ
  • 内容:残業時間が60時間を超える場合の割増賃金率を25%から50%に引き上げ
  • 適用開始時期:【大企業】2019年4月1日
    【中小企業】2023年4月1日
  • 違反時の罰則:6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金
施工項目:同一労働同一賃金の実施
  • 内容:雇用形態の違いによる基本給や賞与等の待遇の差を是正
  • 適用開始時期:【大企業】2020年4月1日
    【中小企業】2021年4月
  • 違反時の罰則:なし
施工項目:高度プロフェッショナル制度の創設
  • 内容:高度な専門知識を有し一定水準以上の年収を得る労働者を労働時間規制の対象外とする
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:なし
施工項目:フレックスタイム制の拡充
  • 内容:フレックスタイム制の清算期間が1か月から3か月に変更
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:なし
施工項目:勤務間インターバル制度の導入促進
  • 内容:退勤後から翌日出社時までに9時間から11時間程度の間隔を設ける
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:なし
施工項目:産業医・産業保健機能の強化
  • 内容:産業医の活動環境の整備
    産業医に関する情報を労働者に周知することの義務付け
  • 適用開始時期:【大企業・中小企業】2019年4月1日
  • 違反時の罰則:なし

3.【中小企業向け】働き方改革への対応策

中小企業が進めるべき働き方改革への対策は、基本的な労務管理の徹底です。具体的な対策として、以下のような項目が挙げられます。

  • 働く人の勤怠管理を適切に行う
  • 残業時間の把握および削減対策を講じる
  • 有給休暇の管理を適切に行う
  • 社会保険への加入を適切に行う

働き方改革においては、働く人の勤怠管理を適切に行い、労働時間を客観的に把握することが大切です。事業者はタイムカードや勤怠管理システムを活用して、勤務日数や勤務時間をデータとして残しておく必要があります。

また、残業時間の把握や、時間外労働自体を減らすための工夫も重要です。中小企業では2020年4月1日以降、時間外労働の上限規制が強化されます。違反時の罰則も規定されているため、慎重に対策を行いましょう。

有給休暇については、年に5日間、確実に取得させる規定があります。働く人が確実に有給休暇を取得できるよう、周知徹底を行うことが大切です。また、育児休暇を取得しやすくするなどの事業環境の整備も、働き方の多様化に欠かせません。

さらに、社会保険への加入も働き方改革の重要なポイントの1つとなります。中小企業が働き方改革を円滑に進めるためには、人事や労務のプロフェッショナルの助けを借りることがおすすめです。

まとめ

働き方改革の概要や目的、中小企業が進めるべき具体的な対策についてご紹介しました。働き方改革関連法で定められた項目を順守することは、企業の経営者や人事担当者にとって避けられない課題と言えます。

また、働き方改革に合わせて雇用環境を整備することは、ビジネスの業績向上にも有効です。今回の内容を参考に、社内の環境整備や働き方改革をスムーズに進めてください。

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