顧客がWebアナリストに求めていることは何か!?

顧客がWebアナリストに求めるものはデータそのものではなく、導かれる仮説や課題、解決するための改善策を通してPDCAサイクルを回していくことです。この記事では、実際の例をもとに分析手法の流れに沿って説明します!
アクセス解析ツールを導入した顧客から以下のような話をよく聞きます。
・「アクセス解析ツールは導入してみたものの、データを見てもよくわからない・・・。」
・「取得したデータを、どうやって売上につなげたらいいかわからない・・・。」
そのような場合、以下のような依頼を受けることが多いと思います。
・「会員登録数が思うように伸びないため、どうにかしたい。」
・「○月に実施したリニューアルやキャンペーンの効果が知りたい。」
・「サイト全体でざっくりとボトルネックを見つけてほしい。」
では、このような依頼に対して、私達Webアナリストは何をすれば良いのでしょうか?
まずは、問題に対する原因を仮説立て、仮説の実証に必要なデータを抽出していくことになります。しかし、「どんな仮説を立てたら良いかがわからない」や、「仮説は立てたけれど、検証するために必要なデータがわからない」という方も多いと思います。そこで、実際に依頼のあった例を基にして、「問題」⇒「仮説」⇒「分析」⇒「事実」⇒「課題」⇒「改善」⇒「検証」のフローに沿って考えてみましょう。
~1~ 会員登録数増加に貢献するページを探そう!
● クライアント名:○○○株式会社
● 事業内容:会員向け×××サービス
● 顧客が抱える問題:会員登録数が伸び悩んでいる
● 分析依頼:会員登録数増加に向けてサイト改善したい
「会員登録数が伸び悩んでいる」という問題は多くの企業様が抱えていらっしゃいます。この問題に対して考えられる原因は、一般的に以下のようなものが多いかと思います。
● 考えられる原因(仮説)
会員登録の貢献目的となるページについて
① 流入キーワードとランディングページの内容がマッチしておらず直帰や離脱が多いのではないか
② 会員登録の貢献度が高いページへの回遊や集客が減少しているのではないか
上記の仮説に合致するページを探してみます。ページに対して、「入口率、直帰率、離脱率、CVR(貢献度)」などの指標を調査します。しかし、データを取得しただけでは、たくさんあるページから仮説に該当するものを探しにくいでしょう。そこで、「4象限マトリクス分析」の考え方から、ページをグルーピングして考えます。今回は、②の仮説に該当するページを見つけ出すために、閲覧数とCV貢献度の観点から、4つのグループに分けてみましょう。
※仮説①に該当するページを見つける場合には、入口数と直帰率の観点から4つのグループに分けることになります。
※今回取得するデータは、非会員ユーザのアクセスのみが対象となります。
「閲覧数が少ない」+「CV貢献度が高い」グループに該当するページを探します。このページの閲覧数を増やして、上図の赤枠のように「閲覧数が多い」+「CV貢献度が高い」ページにすることによって、会員数の増加につなげられるかもしれません。
「閲覧数が少ない」+「CV貢献度が高い」グループには、「ページH」が含まれていました。このページは、会員登録の貢献度は高いですが、閲覧数の多い A~Eのページに比べるとあまり閲覧されていません。
「ページH」は、会員登録に関するメリットや利用者のコメントについて記載されたページでした。当ページは会員登録に結びつきやすいものの、トップページやランディングページからの導線がないために、閲覧数が少なかったのです。
このように仮説からデータによる検証を行い、問題に対する事実を導きました。そして、課題および改善策を考えます。さらに、改善前後のKPIを定めて検証を行うことが重要です。
● 事実:
- ・会員登録の貢献度が高いページへの回遊や集客が少ないページがあった
● 課題
- ・会員登録の貢献度が高いページへの回遊や集客
● 改善案
- ・会員登録に関係して閲覧の多いページから「ページH」への導線を修正する
例) トップページや会員登録のランディングページからの導線を設置 - ・改善による会員登録数増加およびCV貢献度の上昇率を試算
● 検証:
- ・リンクを設置した箇所からの遷移率、ページHの閲覧数とCV貢献度を計測する
- ・改善前後のサイト全体の会員登録数の変化を計測する
- ・改善案で試算した結果と実際の結果を判定して、改善効果を検証する
~2~ 会員登録フォームの離脱ポイントを見つけよう!
会員数が伸び悩む原因として2つ目に注目したポイントは、「会員登録フォーム」です。今回は次のような仮説を立てて、分析することにしました。
● 考えられる原因(仮説)
- ・会員登録フォームの遷移途中で離脱しているユーザが多いのではないか
● 分析1
- ・フォールアウト(=離脱)の分析のため、会員登録フォームのステップ毎に遷移率を確認
調査した結果、「個人情報の入力ページ2」から「内容確認ページ」への遷移率が13%、つまり、87%が離脱していることがわかりました。どうして入力ページから離脱してしまうのか、実際のユーザの行動から離脱箇所を洗い出すため、さらに分析を行いました。
● 分析2
- ・ユーザテストを行った結果、ユーザが気付いていないケースがあった
- ・項目毎の入力率を見た結果、ある項目のラジオボタンが入力されていないケースが多かった
その項目とは、「会員登録の際の特典を選択する」ラジオボタンでした。このボタンは、必須選択項目にもかかわらず、コンテンツ下部の気づきにくい位置にありました。また、そのボタンを選択せずに次に進もうとした場合に、入力ページに戻されてしまいます。その時にエラーメッセージが表示されないため、ユーザはなぜ次に遷移できないかが理解しにくい状態でした。
上記のような事実によって、離脱が生まれていると考え、課題・改善案をまとめ、検証を実施しました。
● 事実:
- ・会員登録フォームの「個人情報の入力ページ2」から「内容確認ページ」で離脱が多かった
- ・「特典選択」のラジオボタンの入力率が低かった
- ・「特典選択」のラジオボタンは、分かりづらい位置にあり、選択せずに進むとエラーメッセージの表示なく入力ページに戻されてしまう
● 課題
- ・必須項目の「特典選択」のラジオボタンの入力エラーによる離脱
● 改善案
- ・「個人情報入力2」の「特典選択」のラジオボタンの機能を修正する
例) エラーメッセージの表示
例) ユーザが迷いやすい入力項目を枠でくくるなど目立たせる
例) エラーが発生している箇所をハイライト表示する - ・改善による離脱率の減少率を試算
●検証:
- ・改善前後の「特典選択」のラジオボタンの入力率、エラーメッセージの発生率を計測する
- ・改善前後の「個人情報の入力ページ2」から「内容確認ページ」の離脱率の変化を計測する
- ・改善案で試算した結果と実際の結果を判定して、改善効果を検証する
まとめ
分析手法として、以下の流れで考えることで、論理的に分析を進めることができます。
そして、検証後に「問題」が残っている場合には、再び「仮説」を立てることになります。このように「PDCAサイクルを繰り返すことで、顧客の事業活動に貢献していくこと」が、「顧客がWebアナリストに求めている」ことだと思います。その実現に向けて、今回紹介したヒントをもとに、ぜひチャレンジしてみてください。