分析の生産性が上がらないただ1つの理由~とりあえずデータのワナ
Web分析ツールが万能と呼べるほど高機能となった現状を踏まえ、「Web分析の生産性が上がらない原因は、過剰なインプットにある」とし、生産性を高めるための考え方と現場で役立つ2つのコツ「仮説」「コミュニケーション」を紹介します。
「とりあえずデータを出してみよう」「たくさんデータを出せば何か見えるはず」
こうした言葉は現場でも日常的に聞かれるものですが、このときWebアナリストとしてはある種のアラートが鳴ったと思って身構えるべきです。というのも、多くの場合においてその先に待ち受けるのは、手応えの薄い分析と実りの少ないアウトプット、そして時間の空費という「落とし穴」だからです。
分析の生産性を上げるには
結論から言えば、私たちWebアナリストが分析を行う前に意識すべきは「目的を明確に理解すること」。ひらたく言えば、私たちのアウトプットの良し悪しは、「『何の問いに対して答えを出すべきか』をはっきりさせておくこと」が、できるか否かにかかっているのです。
(目的の明確化については【「何も出てこない!「どのデータを見ればよいの?」はなぜ起こるのか」】にも詳しい解説がありますので、ぜひご参照ください。)
「でも、ツールで簡単にデータが出るんだから、そんなに深く考えずにまずはデータ出してみようよ」
いかにもツールに関してはその通りでしょう。ですが、生産性の高い分析を行うのであれば、この考えにとらわれるべきではありません。なぜなら「いかに少ないインプットで、いかに多くをアウトプットしたか」の評価こそが生産性だからです。最新のツールが次々と吐き出す玉石混交のデータを集めても、分析する側の生産性が一向に上がらないのは自明ですね(もっとも、ツールの生産性の高さは証明されますが)。
答えを出すべき「問い」を見極めるには?~仮説だて
問いの見極めは簡単ではありません。ただ、いくつかのコツはあります。とりわけ効果が大きいのは「仮説だて」です。
「え?仮説ってデータを見てからとか、分析のときにするものでしょ?」
その通りです。けれども、分析やデータを出す前に仮説を立てておくことで、問いがいっそう明確になってきます。仮説は、考え抜かれたものであればあるほど、後の分析のガイドラインや評価軸としてすぐれて機能するのです。
とはいえ、問いの明確化、ひいては目的の明確化は、それが高度であればあるほどタフな仕事になります。複数のステークホルダーが複雑に絡み合って存在するビジネスの場にあっては、問いのオーナー自身でさえ目的をうまく説明できないばかりか、目的に納得していないケースさえあります。
答えを出すべき「問い」を見極めるには?~コミュニケーション
関係者間の目線をそろえ、目的を過不足なく確実に共有するにはどうしたらいいか。そのキモは、やはりコミュニケーションです。
「何のためにやっている分析なのか」「何の役に立つのか」、その前提として「私たちがいちばんに価値を置くものは何か」。こうしたことを会議体やチーム内で、上司と、あるいはお客様がいるようであればお客様としっかり共有し、その共有が継続できるよう関係をとり続けることが、生産性の高い分析とアウトプットのための大きな助けとなるはずです。
生産性の高い分析を行うための「まとめ」
- ・分析のまえに、『私たちは何の問いに対して答えを出すべきか』を意識しましょう。
- ・そのためには、分析のまえの「仮説だて」が有効です。
- ・目的の明確化・共有のためには、「コミュニケーション」が大きな役割を果たします。