手軽に業務システムが作れる!?kintoneの落とし穴 ~弊社失敗談から学ぶ導入時の注意ポイント~

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・業務をシステム化して生産性を上げたい
・ファイルの管理や集計が大変なため、脱エクセルしたい

このような要望・お悩みを抱えていませんか?
「kintone」はITスキルがなくても簡単に業務システムが作れますが、運用ルールなどをきちんと決めておかないと、生産性や保守性の低下につながってしまいます。
この記事では「kintone」についてのメリットと、導入時の注意点などを弊社の失敗談を交えご紹介します。

目次

  1. 1. kintoneとは
  2. 2. kintoneを導入することによるメリット
  3. 2-1. 運用にフィットした業務システムが作れる
  4. 2-2. 運用開始までが早い
  5. 2-3. 幅広い業務のシステム化が可能
  6. 2-4. kintoneでデータの可視化まで実現可能
  7. 2-5. 安心の実績
  8. 3. kintoneを導入するときに気を付けるポイントと実際に発生した失敗例
  9. 3-1. みんなが好き勝手につくって管理が行き届かない
  10. 3-2. スピード感を重視した結果、「無駄なフィールド」や手戻りが頻発
  11. 3-3. 利用者が開発にかかわらなかったことで運用にフィットせず、Excelに逆戻り
  12. 3-4. 引継ぎの問題でだれも仕様を把握していないアプリ
  13. 4. まとめ

 

kintoneとは

「kintone」とはサイボウズ株式会社(以下サイボウズ社)が提供するクラウド基盤サービスです。
3万社以上の企業に導入(2023年6月時点)されています。テレビCMなどで「聞いたことはある」という方も多いかもしれません。

参考:サイボウズ社「kintone」CMよりテキスト抜粋

もうすこし具体的にお伝えすると「kintone」はITのスキルがない人でも簡単に業務システムを構築することが可能なサービスです。テキストやチェックボックスなどのパーツを「ドラッグ&ドロップ」で配置するだけで業務システムが作れるほか、いろいろな業務・業種を想定した100種類以上のサンプルも提供されています。
そのため、実際に導入されている導入担当者の93%が非IT部門(2020年12月時点)となっております。なお、「kintone」では作成する業務システムのことを「アプリ」と呼び、「アプリ」を格納する領域のことを「スペース」と呼びます。


出典:サイボウズ社「kintone」(以下同じ)

また、イニシャルコスト、ランニングコストが安いことも魅力の1つです。
「kintone」の契約形態は「初期費用無料」、「1ユーザー単位で契約(ミニマム5ユーザーから導入可能)」、「1か月ごとの契約 (年額契約によるディスカウントあり)」となっており、導入コストが0円、スモールスタートが可能な契約形態となっています。
また、「スタンダードコース」、「ライトコース」の2つのコースから選ぶことができ、上位コースのスタンダードコースでも「月額1,500円/1ユーザー」とコストが抑えられたライセンス価格になっています。

※サイボウズ社の価格表から一部抜粋(2023年8月21日 時点)

弊社ではお客様の課題を「kintone」を使って解決するサービスを提供している他、自社内でも実際に「kintone」を使い、業務改善を実施しています。

弊社セールスマーケティング事業部ではマーケティング、営業の領域を中心に「kintone」で管理しており、デジタル化による生産性向上や見える化を実現しています。

 

2.kintoneを導入することによるメリット

我々はお客様に「kintone」の導入を支援させていただくベンダーという立場、自社に導入している利用者の立場、2つの顔を持っています。そんな我々が考える「kintone」のメリットは以下5点です。

2-1.運用にフィットした業務システムが作れる

通常の業務システム開発ではITスキルが必須なため、業務用件を情報システム部門やITベンダーに伝え、開発してもらう必要がありますが、開発者が業務を理解していないことが多く、出来上がった業務システムが運用にフィットしないといったことが発生したりすることもあります。

「kintone」であればITスキルが不要なため、業務を理解している人や実際に業務を行っている人が開発することができ、運用にフィットした業務システムを開発することが可能となります。

2-2.運用開始までが早い

情報システム部門やITベンダーに委託する必要がないため、自分たちの作業時間を確保するだけでよく、予算申請やベンダー選定、要件整理などといった委託に必要な作業がなくなり、運用開始までの時間が圧倒的に短くなることも大きなメリットです。

また、運用開始後の修正や追加開発もスピーディーに行うことが可能です。

2-3.幅広い業務のシステム化が可能

重要な業務はシステム化されることが多いと思いますが、特定の部門のみが行う業務などは費用対効果の側面からシステム化されないケースがあると思います。「kintone」ならそのようなニッチな業務であっても自分たちで開発することが出来るため、どのような業務であってもシステム化の恩恵を受けることが可能です。

また、いろいろなパートナー企業からプラグインが提供されており、それらを活用することで複雑な業務のシステム化やユーザーライクなアプリの開発が可能です。

ITスキルがあるユーザー向けにはAPI連携やJavaScript/CSSでカスタマイズすることも可能となっており、外部サービス連携やより複雑な機能の実装が可能となっています。

2-4.kintoneでデータの可視化まで実現可能

データの可視化を行う場合、データレイクなどにETLツールなどを使ってデータを収集、加工、蓄積し、BIツールなどで可視化を行うことが一般的ですが、データレイク、ETL、BIツールの導入や開発など、可視化までのハードルが高く、なかなか可視化できていないのではないでしょうか。

「kintone」は標準機能でアプリのデータをグラフ化したり、クロス集計表を作成することができます。高度なデータ活用を行いたい場合は別ですが、簡単な可視化であれば、データレイクを用意したり、ETLでデータを収集することなく、「kintone」だけで可視化を行うことが可能です。

また、ダッシュボードを作成できるプラグインもあり、複数アプリのデータを1つのダッシュボードに配置し、俯瞰的に可視化することも可能となっています。

業務のシステム化に加え、そのデータを可視化し、業務改善につなげることでPDCAサイクルを「kintone」だけで回すことができるのは「kintone」導入のメリットと言えるでしょう。

2-5.安心の実績

「kintone」は3万社を超える企業が導入しており、東証プライム上場企業の3社に1社が導入しています。また、400社(2023年9月1日時点)を超える企業がキントーンのパートナーとなっているほか、多くのプラグインが公開されています。

出典:サイボウズ社「kintone

「導入数やパートナー数が多い」=「良いサービス」というわけではありませんが、これだけ多くの実績があるということはそれだけ多くの企業が「kintone」というサービスに魅力を感じているということだと思います。

弊社も魅力を感じている1社であり、今なお、ユーザー様への導入に加え、「kintone」を使った業務のシステム化を進めています。

3.kintoneを導入するときに気を付けるポイントと実際に発生した失敗例

「kintone」を効果的に運用するには、導入時に「ガバナンス設計」をしっかりと行い、それに沿って運用することが重要なポイントです。(ここでいう「ガバナンス設計」とは「kintone」を運用するにあたっての「ルール」や「運用方法」、「管理方法」を指します。)
「ガバナンス設計」を行わずに運用を開始してしまったため発生してしまった弊社の失敗談や、お客様からよく聞くお話を4つご紹介します。

3-1.みんなが好き勝手につくって管理が行き届かない

誰でも開発できることから弊社ではアカウントを配布し、自由に「kintone」を使ってもらった結果、管理が行き届かず、以下のような問題が発生してしまいました。

・作られたけど運用されていない(レコードが0件)のアプリが71個
・「商品マスタ」が3個
・誰が管理しているかわからないスペース(アプリを保存する領域)が多数

誰でも開発できるからこそ、アカウントを配布する前にルールとその運用方法を設計し、それに沿って利用してもらうことが重要です。
また、「kintone」の使い方や体制によってルール、運用方法は変わります。ルール、運用方法を強固にし過ぎると「kintone」の強みである「スピード」や「柔軟性」が損なわれてしまいます。
「攻め」と「守り」のバランスを取り、自社にあったルール、運用方法を設計しましょう。

3-2.スピード感を重視した結果、「無駄なフィールド」や手戻りが頻発

通常のシステム開発であればしっかりと設計してからフィールドの追加などを行いますが、「kintone」のスピード感を活かすため、アプリを開発する際「まずは行動」を重視し、運用しながら修正を繰り返す「トライ&エラー」で開発を進めていました。

この進め方でスピード感のある「kintone」活用が出来ていたのですが、”行動”を重視し過ぎたため、追加したけど入力されていなかったり、入力はされているけど、運用で使われていないような「無駄なフィールド」が多数作られてしまいました。

フィールドが多いと入力が大変だったり、視認性が悪かったりと生産性の低下につながってしまいます。

また、「kintone」はフィールドの種類(テキスト、チェックボックスなど)を変更することができない仕様となっています。そのため、フィールドの種類を変更したい場合は新しいフィールドを作り、元の値を新しいフィールドに移行する作業が発生するなど、「トライ&エラー」に向かない部分もあったりします。

これらの問題を無くすため、しっかりと設計を行い、開発を行う方法が挙げられますが、それでは「kintone」の良さである「スピード感」がなくなってしまいます。そのため、「スピード感」と「品質」のバランスが取れたルール、運用を定めることが重要です。開発内容によって設計やレビューのレベルを調整するなど、「kintone」の使い方に合わせたルール、運用を定めましょう。

3-3.利用者が開発にかかわらなかったことで運用にフィットせず、Excelに逆戻り

「kintone」を導入するさい、「kintone開発担当者」を立て、アプリの開発を行っているという現場が良くあります。そのこと自体は問題ないのですが、出来上がったアプリが要件を満たせていない、業務にフィットしていないため運用が定着せず、結局Excelで運用しているといった声をよく聞きます。

実際にアプリを使う利用者が「kintone開発担当者」にアサインされればこういった問題は発生しませんが、そうでないメンバーがアサインされた場合、このような問題が発生してしまう可能性があります。

利用者以外がアプリを開発する場合、しっかりと利用者を巻き込み、開発を進める体制を作りましょう。「kintone」はすぐにアプリのイメージを作ることができるため、開発者と利用者が椅子を並べ、要望を聞きながら開発を一緒に行うのも1つの方法です。

3-4.引継ぎの問題でだれも仕様を把握していないアプリ

「kintone」は簡単に作成できるため、要件がまとまっていれば開発が可能であり、開発するための設計書はあまり必要ありません。また、利用者自身が開発を行っている場合、要件をまとめる必要がないため、「kintone」以外の成果物がないといったことも発生します。

単純なアプリであれば大きな問題にならないのですが、他のアプリと連携していたり、JavaScriptでカスタマイズされている複雑なアプリの場合、「kintone」だけで引継ぎを行うのは困難です。

弊社でも複雑なアプリを管理していた担当者が異動した際、引継ぎが上手くいかず、手探りで修正を行ったところ、不具合が多発し、一時アプリがまともに動かないといった問題に発展してしまいました。

一般的なシステム開発相当の設計書は不要と思いますが、複雑なアプリの場合、他アプリへの影響やカスタマイズ内容など、後任者のために準備しておくことをおススメします。

弊社ではこれらの失敗を教訓に、「ルール」、「運用/監視」、「リスク管理」、「品質管理」、「権限管理」の5つから構成する「ガバナンス設計」を作成し、運用しています。

この「ガバナンス設計」により、運用コストの圧縮、保守性の向上、セキュリティ強化、品質強化につなげることができました。しかし、運用を開始してから「kintoneガバナンス」を導入したため、適用するのに多くの工数が発生したり、すでに運用されているため「ガバナンス設計」が適用できない部分があるなど、”導入時に「ガバナンス設計」を実施すべきだった”と反省しています。

サイボウズ社が「kintoneガバナンスガイドライン」を提供していますのでガイドラインを参考に、”導入時”に「ガバナンス設計」を実施し、運用することを強くおススメします。

出典:kintoneガバナンスガイドライン

4.まとめ

「kintone」のようなノーコード/ローコードツールは導入ハードルが低いゆえにすぐに業務に適用できてしまいますが、はじめにしっかりとルールや運用方法などを設計しないとガバナンスが効かず、無法地帯になってしまいます。また、「kintoneガバナンスガイドライン」は提供されていますが、「kintoneガバナンス」を自社に合わせて設計するには「kintone」の知識とシステム設計の知識の両方が必要です。

もし適切な人材がいない、アサインできない場合、専門家の手を借りて導入を支援してもらうのも有効です。短期的に考えると導入コストが膨らむように思われるかもしれませんが、ガバナンス設計に必要な知識(kintoneやシステム設計)の「学習コスト」やガバナンス設計の時間短縮による「早期運用開始」、未経験者が設計したガバナンスで失敗する「リスクの回避」などを考えると短期的にも中長期的にも専門家の手を借りたほうがコストを抑えられると思います。

適切な人材がいない場合は専門家に依頼することをご検討ください。

>>kintone導入・定着支援コンサルティング

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