BigQueryでCDP構築!パッケージ型CDPとの違いとは?
近年、企業は様々な顧客データを保有していますが、それらのデータは異なる場所に散らばっています。
本記事ではそれらのデータを収集・統合して活用するためのCDPサービスとして、Googleが提供しているデータウェアハウスであるBigQueryを取り上げ、それがTreasure Dataなどが提供しているパッケージ型CDPサービスとどのように異なるのかをご紹介いたします。
目次
- 1. CDPとは
- 1-1. CDPとDWHの違い
- 1-2. CDPにより実現できること
- 2. パッケージ型CDPとは
- 2-1. パッケージ型CDPのメリット
- 2-2. パッケージ型CDPのデメリット
- 3. BigQueryで実現するCDP
- 3-1. BigQueryのメリット
- 3-2. BigQueryのデメリット
- 4. どちらを選ぶ?選定ポイント
- 5. まとめ
1.CDPとは
CDPとはCustomer Data Platformの略で、様々なデータソースから顧客データを収集・統合し、分析するためのプラットフォームのことです。本章では、近いシステムであるDWH(データウェアハウス)との違いやCDPで実現できることをご紹介します。
1-1.CDPとDWHの違い
CDPとDWHは、どちらもデータを収集して統合するためのプラットフォームであるという点で一致しています。しかし、そのデータを統合する目的が一部異なります。
DWHの目的は分析に用いるためのデータを蓄積することです。顧客情報に限らず、様々な情報を一か所に集めるデータベースとしての機能に特化しており、基本的にそのデータの活用や分析は別のツールを使用して行います。
一方でCDPの目的は顧客理解であり、ただデータを蓄積するだけではなく、データを顧客単位で紐づけて顧客プロファイルを作成します。
またCDPはマーケティングへの活用を前提としているため、データの収集・統合に加えてMAツールやweb接客等のツールと連携させる機能が充実しています。
DWHについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
>>BigQueryとは?データ分析に活用するには?~特徴と導入メリットを解説~
1-2.CDPにより実現できること
構築方法により異なる部分はありますが、CDPを導入することで、主に下記のことが実現できます。
・データの収集と統合
アクセス解析データ、MAデータ、オフラインデータなどの様々なデータを収集し、顧客プロファイルを作成します。
この顧客プロファイルを用いて、ターゲットとなる顧客セグメントの特定や、顧客の特徴や傾向を理解したマーケティング戦略を行うことができます。
・リアルタイムのデータ分析と各種サービスとの連携
CDPは収集したデータをリアルタイムで分析することができ、分析したデータを各サービスと連携して施策を行うことが可能です。
このため、BIツールと連携してデータをリアルタイムで可視化したり、MAツールやカスタマーサクセスツールと連携して即座に顧客に対してアプローチをしたりすることができます。
2.パッケージ型CDPとは
パッケージ型CDPとは、「データの収集」、「データの統合や管理」、「データの分析」の機能をまとめて提供しているソリューションです。これらに加えて、分析したデータをMAツールとの連携や、カスタマーサクセスツールと連携するための機能が揃っているものもあります。
代表的なCDPサービスをいくつかご紹介します。
・Treasure Data
外部ツールと連携できるコネクターが豊富なためデータ連携の容易さが特徴であり、導入やその後の施策支援に関する手厚いサポートも存在
・Rtoaster insight+
レコメンドエンジンのサービスも提供しており、ECサイトを運営している小売・アパレル業界を中心に高い満足度を獲得(サービスのデータ基盤の一部にBigQueryを使用している)
・Snowflake
顧客データの統合基盤に比べデータウェアハウス・分析基盤としての側面が強いがCDPとしての活用もでき、独自の構造によりデータの高速処理が可能
次からは、パッケージ型CDPを導入する際のメリット・デメリットをご紹介します。
2-1.パッケージ型CDPのメリット
・データ収集から施策実行までのサービスが包括的に用意されている
BigQueryはBIツールや施策ツールを別途導入する必要があるのに対して、パッケージ型CDPはデータ収集/統合/分析/可視化まで(サービスによってはその後の施策まで)包括して用意されている場合が多いです。
そのためパッケージ型CDPを導入することで、別途ツールの検討をする必要がなく、一連のデータ活用の準備を整えることができます。
・専門的なサポートをスムーズに受けられる
パッケージ型CDPを導入する際は、ツールの提供元からの専門的なサポートもサービスとして含まれている場合がほとんどです。
また、BigQuery導入に関するGoogleのサポートは範囲がプロダクトの使用方法などに限定されるのに対し、パッケージ型CDPでは導入だけでなく、その後のマーケティング活動の支援・機能追加に関する相談・レポートの新規作成など、多岐にわたるサポートを行っているサービスが一般的です。
・クエリ実行の際に料金を気にしなくてよい
パッケージ型CDPは基本的にデータのストレージに対して料金が発生するため、クエリ実行に料金が発生することがありません。そのため、BigQueryのようにクエリ実行時に料金を気にすることなく、自由に分析を行うことができます。
またこの仕様により、エンジニアだけでなくマーケターや分析担当が自由にクエリを実行することができる、というメリットもあります。
2-2.パッケージ型CDPのデメリット
・価格帯が高い
BigQueryと比べてサービスの範囲が広いこと、またサポート体制が整っていることから、価格はBigQueryよりも高額になる傾向があります。
ただし、BigQueryが主にデータウェアハウスのサービスであるのに対し、パッケージ型CDPサービスはデータ分析等も行える等、機能が多岐にわたるため一概には比較できない部分もあります。
・多様な機能を使いこなす必要がある
パッケージ型CDPはその名の通り様々な機能が1つのパッケージに集約されているため、多様な機能を活用しきれない場合はコストが割高になる可能性があります。
そのため、このパッケージを導入することの目的や実現したい施策等の業務デザインをしっかり行ったうえで導入することをおすすめします。
3.BigQueryで実現するCDP
BigQueryはGoogleデータウェアハウスサービスですが、その特徴である「安価な利用料金」と「高速データ処理」を活かし、BigQueryをデータ統合の基盤としてCDPを構築することが可能です。
BigQueryの特徴とその導入メリットについては、こちらの記事をご覧ください。
>>BigQueryとは?データ分析に活用するには?~特徴と導入メリットを解説~
BigQueryを基盤としてCDPを構築する際のメリットとデメリットをご紹介します。
3-1.BQのメリット
・コストパフォーマンスが高い
パッケージ型のCDPは定額制の価格設定モデルのものが多く存在します。対して、BigQueryは従量課金制であり、主にストレージとデータの分析時(クエリの実行時)に料金が発生しますが、その料金体系は下記の通りで非常にリーズナブルです。
ストレージ:毎月10GBまで無料で、それ以降は1GBあたり0.02ドル(=約3円)
クエリ実行:毎月1TBまで無料で、その後1TBあたり6ドル(=約850円)
※2023年8月時点での為替レート
また従量課金制のため、データの増加や使用量の増加に応じて柔軟にコストを調整することができます。
・処理速度
BigQueryはクエリの処理を分散して計算を行います。この仕組みにより、1000TB以上(1PB)といった大容量のデータに対しても数秒でクエリを実行することができます。 この高速処理を活かして、リアルタイムにデータの保存や分析が可能です。
・Google Cloudサービスをはじめとした、他製品との連携のしやすさ
BigQueryはGoogleが提供しているGoogle Cloudのサービスのため、他のGoogleサービスとの連携が行いやすいというメリットがあります。例えば、GA4で計測したアクセス解析データを直接インポートする、保存したデータをBIツールであるLooker Studioに直接エクスポートするなどができます。
またBigQueryはSQLを使用してデータを処理しているため、Google Cloud製品以外にも様々な外部ツールと簡単に連携することが可能です。例えばBIツールであるTableauやWeb接客ツールであるKARTEへの連携の際、データをエクスポートすることなく、直接Bigqueryからデータを連携することが可能です。
3-2.BQのデメリット
・実装方法や連携するサービスを考える必要がある
パッケージ型CDPは、データ収集/統合/分析/可視化まで(サービスによってはその後の施策まで)包括して用意されている場合が多いです。対してBigQueryでできることはデータ収集/統合/抽出に留まります。そのため、統合したデータをどう可視化するかや、どのような施策ツールと連携するかといったことを考える必要があります。
・クエリの実行に料金がかかるため、分析時には注意が必要
パッケージ型CDPはクエリの実行に料金がかからない(ストレージに対して料金がかかる)ものが多いため、保存されたデータに対して自由にクエリを実行することができます。しかし、BigQueryはクエリの実行に料金がかかるため、分析時にはそのデータ量に気を付ける必要があります。
また、直接BigQuery上のデータからクエリを実行する際だけでなく、Looker StudioやTableau等のBIツール経由でBigQueryにデータの取得をリクエストする際にも料金が発生します。BigQuery上のデータを分析する際には、そのデータ量が不必要に多くならないよう、分析する項目(行・列)を絞ることをおすすめします。
4.どちらを選ぶ?選定ポイント
最後に、CDPを導入する際にBigQueryとパッケージ型CDPのどちらを選べばよいかの基準を簡単にご紹介します。
BigQueryにはコストパフォーマンスの良さや処理速度の速さ、他のGoogle Cloudサービスとの連携のしやすさといった良さがあります。また従量課金制で無料枠も存在するため、金額面においてパッケージ型CDPサービスに比べて導入のハードルが低いことが特徴です。そのため、
・ CDPの構築を簡易的に行い、データ管理や統合をお試ししたい
・GA4やGoogle スプレッドシート等、 Google Cloudサービスを他にも使用している
といった方にお勧めです。
対してパッケージ型CDPサービスには、データ収集から可視化にわたる多機能性やサポートの手厚さといった良さがあります。基本的にBigQuery単体の導入よりもできることが多い分金額面のハードルは高いですが、しっかり活用することで費用に見合った効果を得ることができます。そのため、
・本格的にデータ分析や活用を行いたい
・CDPを導入することで実現したい内容が明確になっている
といった方にお勧めです。
しかし、あくまで上記は一例であり、各CDPサービスにより価格帯・機能・外部ツールとの連携のしやすさは様々で、BigQueryでも本格的なデータ管理や分析は実現可能です。
5.まとめ
今回は、BigQueryとパッケージ型CDPサービスそれぞれのメリット・デメリットについてご紹介いたしました。 どちらも一長一短あるため、両者の特長を理解したうえで自社の課題や用途に応じて選ぶことをお勧めします。
とはいえCDPは高価なこともあり、導入にあたって自社にどの製品が合うか悩む方も多いと思います。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、CDPサービスの導入・運用についてのサポートを実施しております。BigQueryやTreasure Dataをはじめ、お客様の状況を細かくヒアリングし、ご希望に合わせたクラウドツールをご提案いたします。導入をご検討中であれば、ぜひ弊社までお問い合わせください。