営業の属人化を防ぐための4つのポイント
営業部門の属人化が常態化すると、他のメンバーが一部の業務を処理できず、担当者の負担が重くなりがちです。また、急病や突然の退職などによって担当者が不在になれば、属人化した業務を処理するために 膨大な時間がかかり、顧客に迷惑をかけてしまう可能性もあります。
営業の属人化を防ぐためには、営業部門全体の情報共有を徹底するとともに、営業プロセスの見直しを行うことが大切です。本記事では、営業の属人化を防ぐための4つのポイントについて解説します。
目次
- 1. 「属人化している」とはどのような状態なのか
- 2. 営業の属人化はなぜ起こる?
- 2-1. ナレッジの共有が習慣化されていない
- 2-2. ミスを報告しにくい社内風土が出来上がっている
- 2-3. 営業プロセスが最適化されていない
- 2-4. 属人化対策を行う余裕がなく放置されている
- 3. 営業の属人化を解消するための方法
- 3-1. 営業部門全体が情報共有の重要性を認識する
- 3-2. 営業プロセスの見直しと可視化を行う
- 3-3. 情報共有が必要なデータを取捨選択する
- 3-4. 必要に応じてシステムの導入も検討する
- 4. 属人化解消のためのプロセス
- 4-1.営業部門全体の現状を把握する
- 4-2.既存の営業プロセスを見直す
- 4-3.改善策を策定する
- 4-4.実行と効果測定・改善を繰り返す
- 5. まとめ
1.「属人化している」とはどのような状態なのか
「属人化している」とは、「企業や組織の中で、ある業務を決まった人物が担当し続けることで、その人にしか手順が分からなくなってしまっている状態」を指します。
属人化している状態を放置し続けると、急病や退職などがあったときに、残された組織内の従業員では対処できなくなったり、解決のために膨大な時間と手間が発生したりする可能性があります。また、属人化している状態は担当者の心理的・体力的負担を増加させる原因にもなるため、早急な対処が必要です。
2.営業の属人化はなぜ起こる?
営業の属人化が起こる理由として、ナレッジの共有が習慣化されていないことや、ミスを報告しにくい社内風土が出来上がっていることなどが挙げられます。営業プロセスが最適化されていなかったり、属人化を解消する余裕がないまま放置されていたりするケースもあります。
2-1.ナレッジの共有が習慣化されていない
組織内でナレッジの共有が習慣化されていないと、豊富な知識やスキルを持っている人材が部門内にいたとしても、周囲はその存在を認識できず、知識やスキルを活用することもできません。例えば、過去に他の誰かが作成した経験がある資料の存在を知らないまま、1から新しい資料を作ってしまうなどの非効率な作業が発生する可能性があります。
ただし、中には「苦労して積み上げたナレッジを簡単に同僚に教えたくない」と考える人もいるため、ナレッジを共有する習慣を作り上げることが求められます。
2-2.ミスを報告しにくい社内風土が出来上がっている
ミスを報告しにくい社内風土が醸成されていると、失敗から学んだ解決策など、良いナレッジも共有されないまま隠されてしまいます。結果的に、他の誰かが同じ失敗を繰り返し、組織全体の不利益につながる可能性が高くなります。
ミスを頭ごなしに責めるのではなく、まずは受け入れて原因と対処法を十分に話し合い、解決策をナレッジとして残しておける社内風土づくりを推し進めることが大切です。
2-3.営業プロセスが最適化されていない
営業プロセスが最適化されていないままだと、本来の担当者以外のメンバーが代理で業務を行おうとしても、正しい手順が分からないために処理できず、担当者が戻ってくるまで放置せざるを得ないケースがよくあります。属人化を解消するためには、営業プロセスを可視化しつつ、成果の出る営業プロセスを営業組織全体で標準化することが大切です。誰かひとりの営業担当者が成果を上げ続けている環境は望ましくなく、再現性のある営業活動を行える環境を構築できれば、自然と属人化は解消します。
2-4.属人化対策を行う余裕がなく放置されている
属人化していることは分かっていても、日々の営業活動が忙しく、問題となっている部分を根本から見直す余裕がない組織は少なくありません。営業部門ではそれぞれの営業担当者がクライアントを担当しており、自身の業務に手一杯で、他の担当者の業務状況を把握することが難しい状況に置かれがちです。そのため、部門内で業務を再割り当てする機会がないまま、ますます属人化が深刻な状況に置かれるケースがよくあります。
3.営業の属人化を解消するための方法
営業の属人化を解消するための方法は、社内全体が情報共有の重要性を認識するとともに、営業プロセスの見直しと可視化を行うことにあります。また、情報共有が必要なデータを取捨選択し、必要に応じてSFAやCRM、MAツールなどのシステム導入も検討しましょう。
3-1.営業部門全体が情報共有の重要性を認識する
最初にすべきことは、「営業部門全体が情報共有の重要性を認識すること」です。部門内における属人化への意識が低いと、他の担当者の負担が重くなっていても気がつくことができなかったり、自分が仕事に追われていても他の人に相談できなくなってしまったりする可能性があります。
営業部門全体で組織が属人化している事実を認識し、属人化解消のための施策を積極的に打ち出すとともに、一人ひとりが施策に参加する前向きな姿勢を持つことが大切です。
3-2.営業プロセスの見直しと可視化を行う
日々当たり前のようにこなしている営業プロセスが、実は非効率な運用になっているケースはよくあります。あらためて営業部門全体の運用を見直し、営業プロセスを最適化しましょう。組織内の全員で意見を出し合うことによって、自分では気がつかなかった非効率な手順や無駄な処理に気がつくこともあります。
営業プロセスの最適化が完了したら、変更点を部門全体に周知します。併せて、フローの整備やQ&Aの取りまとめなどを行って営業プロセスを可視化し、誰が取り組んでも再現性のある営業活動を行える状態 にしておくことも重要です。
3-3.情報共有が必要なデータを取捨選択する
部門内のすべてのデータを共有していると、重要な情報を探し出すための余計な手間や時間がかかり、かえって業務が非効率になる場合もあります。せっかく属人化を解消するための施策を打ち出しても、「面倒だから後回しにしよう」という意識が広がってしまい、日々の忙しさに埋もれて施策がフェードアウトしてしまう可能性もあるでしょう。
本当に情報共有が必要なデータはどれなのかを取捨選択し、重要なデータだけに絞り込んで共有することで、属人化解消施策を推し進めるための負担を軽減できます。
3-4.必要に応じてシステムの導入も検討する
営業プロセス の見直しやナレッジの共有だけでは十分な成果を得られない場合や、さらに効率的に属人化を解消したい場合は、必要に応じてシステムの導入も検討しましょう。営業部門の属人化解消に効率的なシステムとしては、SFAやCRM、MAツールなどが考えられます。
SFAとは、営業活動の効率化を図るためのツールで、営業日報の入力や案件管理、売上情報の入力、進捗管理など、営業担当者・管理者双方にとって便利な機能が揃っています。CRMは日本語で「顧客関係管理」を表し、顧客と良好な関係を築くために、属性や興味・関心、購買履歴など、さまざまな情報を管理するためのシステムです。
MAツールは、マーケティング施策の自動化を実現するためのツール です。設計次第では、顧客行動をトリガーにして営業がクイックにアプローチできる状態にするなど、 便利な機能が備わっています。また、部門を横断したデータ共有の実現により、顧客が過去に閲覧したWebサイトやメルマガなどのマーケティング施策を営業が把握したうえで、顧客と会話できるようになります。
4.属人化解消のためのプロセス
1.営業部門全体の現状を把握する
まずは営業部門全体の現状を把握し、既存の営業プロセスのうちどの部分が属人化解消の妨げになっているのかを明らかにする必要があります。部門内の現状を把握できれば、業務が滞っている部分やブラックボックス化している部分が可視化され、具体的な対策を立てられるようになります。
現状把握を行わないまま具体的な対策を立てようとすると、「なんとなくこの部分がネックになっているのだろう」などと自己判断し、見当違いな施策を実行してしまう可能性があるため注意が必要です。
2.既存の営業プロセスを見直す
現状把握によって営業部門全体の課題が明らかになったら、課題を解決するために既存の営業プロセスを見直して、どのように手順を変更すれば属人化を解消できるのかを考えます。このとき、管理者や一部の担当者などの間だけで営業プロセスの見直しを行うのではなく、部門全体からさまざまな意見を取り入れながら見直しを進めていくことが大切です。多くの人に話を聞くうちに、思わぬ問題が隠れていることに気付かされたり、さらに良いアイディアが浮かんできたりする場合があるためです。
3.改善策を策定する
できるだけ多くの人から募ったさまざまなアイディアの中から、実際に属人化を解消するための具体的な方針と対策を決定します。改善策は、コストがかかるものから、予算があまりなくてもできるものまでさまざまです。属人化解消のために割り当てられる予算も考慮しながら、実現可能な施策の中で費用対効果が高くなる施策を策定しましょう。
4.実行と効果測定・改善を繰り返す
改善策を策定できたら、実際に施策を実行し、実行後には忘れずに効果測定を行います。効果測定を行わないまま放置すると、実行した施策が本当に効果のある施策だったのかどうかを判断する手段がなく、実は効果のない施策を何度も繰り返し実行し続けてしまうリスクが高まるためです。
効果測定によって施策として不十分な箇所が見つかったら、次回の施策のために改善策を打ち出しましょう。改善した施策を再び実行し、さらに効果測定と改善を重ねる形でPDCAサイクルを回し続けていけば、より効果の高いプロセスの構築につながります。
まとめ
営業部門の属人化が進行すると、本来の担当者でないと営業プロセスを把握できず、突発的な対処が難しい状況に陥ります。直ちに対応できない状況が続くと、顧客へ迷惑をかける結果になったり、部門内で処理するために右往左往し、膨大な手間と時間がかかったりするおそれがあるため、早めに対策を立てることが大切です。
属人化は、担当者の急病による休暇や退職、外出による不在などが起こったときに、特に深刻な悪影響を及ぼします。まずは部門全体の現状を把握し、営業プロセスを見直しながら、場合によってはCRMやMAツールなどのシステム導入も検討しましょう。