アドフラウドとは:進化し続ける実態と対策を解説~あなたの広告費、搾取されているかも!?~
「アドフラウド」という広告詐欺が横行しているのをご存知でしょうか。アドフラウドは広告費用の搾取だけでなく、ビジネス機会の損失やブランド棄損にもつながる大きな被害を広告主にもたらし、年々悪質化しています。
アドフラウドの概要や種類、広告担当者ができる対策について紹介します。
目次
- 1. アドフラウドとは
- 1-1. 概要
- 1-2. アドフラウドの被害
- 2.アドフラウドの種類
- 2-1. 隠し広告
- 2-2. 自動リロード
- 2-3. クリック洪水
- 2-4. おとりページ誘導
- 3.広告担当者ができる対策
- 3-1. 正しい知識を得る
- 3-2. 対策ツールやシステムの導入
- 3-3. ブランド棄損やビューアビリティへの配慮
- 4. まとめ
1.アドフラウドとは
1-1.概要
アドフラウド(Ad Fraud)は、デジタル広告に使われる用語の一つで、不正な手法によって広告主や広告代理店の予算や効果を搾取する行為の総称で、いわゆる「広告詐欺」や「不正広告」と呼ばれているものです。
具体的には、広告表示の偽装、広告クリックの不正、広告インプレッションの不正な生成など、さまざまな手法が存在します。
株式会社Spider Labsの調査によると、2022年の国内のアドフラウド被害額は1,335億円を超えると算出しています。
PRTIMES「アドフラウド被害は年間1,335億円超えか、Spider AFが「アドフラウド調査レポート2022年通年版」を発表」
アドフラウドはデジタル広告業界において重要な問題で、広告主や広告代理店はその被害を最小限に抑えるために、明確な対策を取る必要があります。
広告関係3団体(公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会、一般社団法人 日本広告業協会、一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会)もアドフラウド対策はじめデジタル広告の品質認証に取り組んでいます。
JIAA「広告関係3団体は「デジタル広告品質認証機構(JICDAQ)」を設立いたします」
1-2.アドフラウドの被害
アドフラウドの存在は広告主に大きな被害をもたらします。
・広告予算が搾取される
本来届くはずだった広告がユーザーへ届かないばかりか、見えないところで不正に搾取されてしまい、想定予算をオーバーした上に効果が出ないといった結果に陥ります。
・ビジネス機会を損なう
不正なクリックや表示の偽装によって予定したターゲット層にアプローチできず、ビジネス機会を損失する可能性が出てきます。
・広告主の信頼性やブランド価値にも悪影響を及ぼす
不正な広告手法が発覚した場合、広告主のブランドイメージが損なわれる可能性があり、ビジネスへの長期的な影響が懸念されます。
一番恐ろしいのは、アドフラウドにより詐欺の被害に遭っていることを広告主が気づきにくいという点です。全く気がつかず、長期間広告費を不正に搾取されている企業も少なくありません。
また運良く気づいたとしても、原因の特定や被害を食い止めるといった対策が難しいことも、アドフラウドを助長する原因の一つとなっています。
成果にならない不正広告に対して広告費を払い続けるのは、費用をドブに捨てるだけでなくビジネス機会も喪失し、ひいてはブランド棄損にも及ぶ大きな損失となります。
2.アドフラウドの種類
アドフラウドにはさまざまな種類が存在します。以下に代表的なものを挙げます。
2-1.隠し広告
隠し広告は、Webページ上で見えない場所に広告を配置する手法です。例えば以下のような方法で広告を表示させます。
・Webサイトの表示領域の外側
・別の広告に重ねる
・透明な広告や目に見えないサイズの広告
ユーザーに広告を見た認識がないにもかかわらず、広告主は支払いを行うことになります。
2-2.自動リロード
自動リロードは、Webページを自動的にリロードすることで広告が再表示される手法です。具体的な方法としては以下のようなものがあります。
・ユーザーのスクロールに合わせて広告表示を更新する
・長時間の動画の下に広告を表示し、動画を見ている間に何度も更新する
・Webサイトのページ自体を更新する
これにより、実際のユーザーが目にするよりも多くの広告表示を行い、広告主には多額の広告費用が発生します。
広告枠のみをリロードする場合数秒単位で行われるため、サーバーへの負荷やWebサイトの質の低下にもつながります。
2-3.クリック洪水
クリック洪水は、広告表示のクリック数を人工的に増やす手法です。ボットと呼ばれるプログラムを使っているのが特徴で「クリックスパム」とも呼ばれています。
出典:SPIDER AF「アドフラウドが発生する仕組み!広告詐欺が発生する原因と対策」
また、悪徳業者と契約したユーザーが広告を表示させたり、クリックして水増しするケースもあります。
不正な手法によって大量のクリックが生成され、広告主は不正なクリックに対して支払いを行うことになります。
2-4.おとりページ誘導
おとりページ誘導とは、検索スパムと組み合わせることによって広告のみのページに誘導する手法のことです。
おとりページは、検索結果では普通のページに見えるためユーザーがそのままクリックしてWebサイトに訪問してしまいます。ところが遷移先は広告だらけのページで、ユーザーが元に戻る操作等で誤クリックをするケースを狙ったり、不正なトラフィックを稼ぐのに利用されます。
出典:ferret-plus「ネット広告詐欺「アドフラウド」とは何か?仕組みを理解して、企業ができる対策方法を」
広告だらけのページに飛ばすことでユーザーにも不快感を与えることになりますし、広告主にとってはブランド棄損にもつながる大きな損失となります。
このほかにも、ユーザーにマルウェアなどのウィルスを感染させブラウザを自動操作させたり、ユーザーが不正サイトを訪問した際にCookieを上書きし、不正サイトで広告をクリックしたかのように偽装する方法、データセンターやレンタルサーバーから使われていないIPアドレスを利用し不正に広告にアクセスしトラフィックを稼ぐといった手法がわかっています。
また広告出稿先のメディア側でも、不正なプログラムを使用し別の広告にすり替えるといった行為が起きており、取り締まりが厳しくなっています。
ただ、アドフラウドの種類・手法は常に進化し続けているため、広告担当者は最新情報を入手し常に警戒しておく必要があります。
3.広告担当者ができる対策
広告主としてもただ手をこまねいていては相手の思うつぼです。広告担当者ができる対策を以下にまとめました。
3-1.正しい知識を得る
まずは「アドフラウド」という広告詐欺がどういうものか、正しい情報を知ることが大事です。
広告費の損失だけに捕らわれず、その先の成果軸まで見据え、本来獲得できた案件までも機会損失しているという実態を正しく認識しましょう。その損失を挽回するためにさらなる広告費が必要になることも念頭に置かなければなりません。
広告費の内訳を見たときに「これはアドフラウドかもしれない」と疑える知識をまずは身につけましょう。
3-2.対策ツールやシステムの導入
先述したようにアドフラウドに対して原因の特定や被害を食い止めるといった対策は難しいため、専用のツールやシステムを導入することを検討しましょう。
例えば、不正なトラフィックを監視・検出するための広告検証ツールや、セキュリティ対策を行うための防御システム、広告品質を測定するためのビューアビリティ(広告がユーザーに適切に見てもらえるか)ツールなどがあり、これらを活用することで不正クリックだけでなく不正サイトも事前にブロックすることが可能です。
3-3.ブランド棄損やビューアビリティへの配慮
広告担当者はブランド棄損やビューアビリティにも配慮する必要があります。
当たり前ですが「あやしいメディアに出稿しない」ようにしましょう。どれだけ安価で多くのインプレッションやクリックを稼げると言われても、量より質を重視し、質の高いインプレッションやクリックによるコンバージョンにつながるようなメディアや優良サイトへの出稿を意識しましょう。
信頼性のあるWebサイトや媒体に広告を掲載すること、広告の表示位置やクリアな表示方法を確保することなどが自社ブランドを守ることにつながります。
4.まとめ
アドフラウドの概要や種類、広告担当者ができる対策について紹介しました。
アドフラウドはデジタル広告業界における重要な問題で、年々悪質・巧妙化しています。広告担当者は正しい知識を得たり、対策ツールやシステムなどの活用によりアドフラウドの被害を最小限に抑えることができます。
ただしこういう犯罪被害はいたちごっこで常に新しい手法が生まれています。
最新情報をチェックしながら、広告運用の専門家であるベンダーに相談することも検討してみてください。