これからはじめるDX~導入編~
前回の記事でDXの定義や注目を浴びている理由、DX導入するメリットをお伝えし、DXの概要をご理解いただけたかと思います。
しかし、実際にDX導入の重要性は理解できたけど「何を考えれば良いのか?」「どこから手をつければ良いかわからない」と悩んでいる方は多いと思います。
本記事ではDXを推進する際に着目するポイント(組織・人材・ステップ・システム)についてご紹介いたします。
DX推進を検討している方にぜひご一読いただきたいと思います。
「DXとは何か」「DXがなぜ注目を浴びているのか」を知りたい方は下記の記事をご覧ください。
「これからはじめるDX~基本編~」をご覧になりたい方はこちらのリンクをクリック
目次
- 1.「DX」の推進がもたらすメリット
- 2.DXを導入するための必要な組織・人材
- 3.DXを導入するためのステップ
- 4.DXを導入するためのシステム設計
- 5.DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導くコツ
- 6.まとめ
1.「DX」の推進がもたらすメリット
DXとは単なる業務のデジタル化ではありません。まずはDXを導入することで得られるメリットを紹介します。
生産性の向上
DXを導入することで業界業種問わず様々な仕事の生産性の向上を図ることができます。
たとえば下記のようなものが挙げられます。
・データの打ち込みなど定型業務の事務作業を正確にかつスピーディーに処理できるようになるRPA(Robotic Process Automation)
・蓄積された顧客の購買情報などのデータを分析し、最適な営業方法の提供やレコメンドを行うCRMツール
Robotic Process Automation(ロボティックプロセスオートメーション)の略語で「ロボットによる業務の自動化」という意味です。デスクワークなどの型の決まった作業をパソコン上のソフトウェア型のロボットが代行したり、自動化したりすることです。
Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント)の略語で「顧客管理」や「顧客関係管理」という意味です。簡潔に説明すると「顧客をビジネスの中心と考え、利益の最大化を狙うマネジメント手法」です。
このように、オフィスや店舗にAIやIoT、ビッグデータなど新たなIT技術を活用したツール・システムを導入することで業務の効率化や利益の向上を目指すことができます。
BCPの充実
DXを導入することでBCP(Business Continuity Plan・事業継続計画)の充実化を図ることも可能です。
BCP(Business Continuity Plan・事業継続計画)とは、自然災害や大火災、感染症などの緊急事態に直面した時にシステム障害などのビジネスの損失を最小限に抑え、そこから迅速に復旧するための計画です。2011年に起きた東日本大震災や2020年に流行しているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)をきっかけに重要視されています。
たとえばDXを導入し、BCPの充実化を図ることで下記のようなことができると示唆されています。
・感染症などで外出できない環境下でも、ネットショップを通じて売り上げを伸ばすこと
・クラウドを導入することで、テレワークでも業務を止めることなく遂行できること
このように、DXを導入することでBCPの充実化に取り組むことができ、緊急事態に柔軟に対応することができます。
2.DXを導入するための必要な組織・人材
DXによって得られるメリットを紹介しました。次に意識することは要となる組織と人材です。
DX導入の走り出しは社内の各部門からメンバーを集められ、DXの導入チームを編成することが多いです。既存業務と兼務しているメンバーが多いと、DX導入の工数を確保できなかったり、連携が円滑に進まなかったりとなかなか導入が進まないという事態に陥りがちです。そのため、既存業務との掛け持ちではなく、専門の組織・メンバーを用意し、明確なミッションを設けることがDX導入の成功の近道です。
こちらの章ではDX推進に必要な「組織」と「人材」を紹介します。
組織
DXを推進するための代表的な組織は3つです。業種や職種などITとの親和性によってベストな組織編成のタイプは異なります。
IT部門拡張型
IT部門が機能を拡張し、デジタルイノベーションを担う組織編成です。デジタルイノベーション:社内が受けるビジネス化の影響やそれに対応するためのデジタル化を進め、新たな価値を創出すること
事業部部門拡張型
事業部門が手動し、IT部門がサポートする組織編成です。
専門組織設置型
デジタルイノベーションを進めるための専門組織が手動する組織編成です。DXを導入する際はこちらの専門組織を設置することが一般的とされています。
人材
組織体制についてご理解いただけたら、次意識することは組織を構成する人材です。DXを導入する際に欠かせない職種はこちらの6つです。
プロデューサー(リーダー)
DXやデジタルビジネスによるゴール実現を目指すリーダー格の人材です。CDO(最高デジタル責任者)を含むことも多いです。DXの最終ゴールは自社のビジネスの変革であるため、社内のビジネスや戦略について深く理解している人材が求められます。そのため、自社で育成して、人材獲得を考えている企業が多いです。
ビジネスデザイナー(企画職)
DXやデジタルビジネスの企画や立案、推進など一連の流れを担う人材です。プロデューサーと共にDXプロジェクトの中心人物となります。自社で育成して、人材獲得を考えている企業が多いです。
アーキテクト
DXやデジタルビジネスに関するシステム設計ができる人材です。従来のアーキテクトと同等のスキルを求められており、他職種よりは育成・採用がしやすいとも言われています。
データサイエンティスト/AIエンジニア
DXに関するAIやIoTなどのデジタル技術やデータ活用・分析に精通した人材です。近年、急激に需要が高まっているものの新しい技術に取り組む職種のため多くの企業で人材不足が懸念されている職種と言われています。自社で育成するより、中途採用で獲得を考えている企業が多いです。
UXデザイナー
DXやデジタルビジネスなどのシステムの顧客満足度を上げるためにデザインする人材です。従来のWebデザイナーと同等のスキルを求められており、他職種よりは育成・採用がしやすいとも言われています。
エンジニア/プログラマ
システムの実装やインフラ構築などDX導入の基盤構築を担当する人材です。従来のエンジニア/プログラマと同等のスキルを求められており、他職種よりは育成・採用がしやすいとも言われています。
3.DXを導入するためのステップ
組織体制や人材について述べてきましたが、DXの導入はどのようなステップを踏めばよいのでしょうか?スムーズに導入するためには、焦らず段階ごとの定着を適切に検証することが求められます。ここではその5つのステップを紹介します。
デジタル化
最初はウェブ上のアプリやクラウドサービスなどを社内に積極的に導入するデジタル化を行います。例えば、データを蓄積するためにアクセス解析ツールの導入や勤怠管理ツール・経費管理ツールのデジタルの置き換えなどです
効率化
次に行うのはデジタル化によってストックされたデータを各部門で活用する効率化です。現在、日本の多くの企業がこの段階でPOSデータや位置情報、webアクセスデータなど様々なデータを活用しています。RPAなどの業務の自動化などがこの段階に当たります。
共通化
部門を超えて全社的にデータの共通化を図り、活用するための基盤構築をする共通化を3番目に取り組みます。全社共通のKPI(目標達成する上で、達成度を確認するための指標)を設定し仮説・実行・改善というPDCAを回していきます。データのやりとりを活発化させ業務の効率化をさらに進めます。
組織化
4番目はこれまで構築してきたデータ基盤を活用し、効率なデータを運用する組織体制を整える組織化です。目的は組織の土台を固め、運用体制を確立し業務プロセスを明確化することです。このフェーズに自社で専門部署が作られることも多いです。その部署で積極的なデータの利活用やデータに基づいた仮説作り、戦略意思決定が行われます。
最適化
最後に行うことは、事業活動にイノベーション(技術革新)を起こす最適化です。DXの最終段階で蓄積されたデータからビジネスモデルや事業計画をより良いものに整えていくことです。データは資産の事業基盤となりデータの活用が利益向上に繋がります。いち早くDXに取り組んだパイオニアな企業でもこの企業に到達している企業は少ないです。
4.DXを導入するためのシステム設計
DXを導入する際に一番ネックとなるのがシステムです。こちらの章ではシステム設計についてご紹介します。大きく分けるとシステムはSoR(守りのIT)とSoE(攻めのIT)に分けられます。
守りのIT:System of Record(SoR)
SoRとは「System of record」の略であり、直訳すると「記録のためのシステム」です。SoRは正確に記録をすることに重きを置かれ設計されており、会計や経理、人事、製品管理、製造在庫管理など企業内の業務を実行するための基幹システムから構成されています。
これらのシステムでDXの導入を進めるメリットは既存のシステムを再設定するためコストを抑えることができる点です。しかし、開発手順を1つずつ確認しながら進めるウォーターフォール開発のためDX導入に時間がかかる可能性があります。
攻めのIT:System of Engagement(SoE)
SoEとは「System of Engagement」の略であり、ユーザ(顧客)との繋がりに重きを置かれて設定されているシステムです。個人消費者やクライアントとのコンタクトに利用するシステムです。
スマートフォンやタブレットなど技術進歩の流れが早い端末への対応、自社・他社サービスの機能を繋げるAPI連携など迅速的な開発や提供が重視され、かつ高度な品質を求められます。SoRと異なり、素早くリリースしようとするアジャイル開発のため、SoRよりスムーズにDX導入を進められる可能性があります。
攻めのITをサポートするCDP
SoEのシステムの1つとしてCDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)というものがあります。CDPとは「氏名」、「電話番号」、「購買履歴」など各社が保有している顧客データを管理するプラットフォームです。顧客の嗜好や生活に関するデータを活用し、顧客を中心に捉えたマーケティング活動が可能になります。CDPの代表的な例としてTreasure Dataなどが挙げられます。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、代表的なCDPの1つであるTreasure Dataのマスターパートナーとして認定されています。もしCDPの運用にご興味がある方はこちらをご覧ください。
5.DX(デジタルトランスフォーメーション)を成功に導くコツ
ここまで、DXを導入する際のポイント(組織・人材・ステップ・システム)について紹介しました。ここまで、完璧に揃えたら後はコツを押さえるだけです。こちらの章では外してはいけないDXの導入のコツを2つ紹介します。
スモールスタートで改善しながら導入を進める
DX導入の際はスモールスタートを心がけて、一部の部署・チームから始めましょう。
DX導入をいきなり大体的に始めると下記のようなことが起こる可能性があります。
・DX導入に関する意思決定が多岐に渡り、円滑に進まない
・導入を進めるうちに手詰まりが発生し、抜本的な修正が必要になる
・社内にDX推進に関する知見者がいないので、先に進まない
そのため、まずは限られた範囲でDXの導入をスタートし、出てきた意見・課題をヒアリングしながらPDCAを回します。その後、徐々にDXの導入範囲を広げることで社内に知見が蓄積され、導入がスムーズに進みます。
DXによる成功事例を社内で積み重ねる
DXという新しい文化を社内に浸透させるために「成功事例を作り、社内に伝播すること」が大切です。
新しいシステムやツールは既存の仕事に馴れている人にはなかなか受け入れづらいです。またコストも掛かります。そのため、利便性や革新性を社内に伝えても導入の同意を得ることは難しいです。
そのため、DXを導入したことによる利益向上や業務プロセスの効率化など成果を社内に発信することで社内のDXに対する印象をプラスに変えることができます。
6.まとめ
今回はDXの導入する際に意識することをご紹介しました。まとめると、このような形です。
①DXを導入するメリット
・業務の生産性の向上
・緊急事態に対応できるようなBCPの充実化
②DXを導入する際に意識すること
・組織体制
・人材
・ステップ
・システム
本記事をもとにDXへの導入の理解が深まっていただけたら幸いです。
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