カスタマーサクセス組織立ち上げ・構築に欠かせない3つのステップと4つのポイント

・カスタマーサクセスを取り入れるメリットを知りたい
・どのようにカスタマーサクセスチームを組織すれば良いか具体的に知りたい
・自社の規模やサービスにマッチするカスタマーサクセスの形が知りたい
これからカスタマーサクセス担当として仕事を進めることになったとき、もしくは、新しくカスタマーサクセスチームを組織するとになったとき、事前に把握しておくべき内容や考慮すべき点として、どのようなこと挙げられるでしょうか。
顧客やステークホルダー、業界や競合サービスなど、関連するすべての情報をインプットし、最適な形で組織作りに落とし込むには多くの時間が必要です。
自社の取り扱うサービスが市場においてどの位置にあるのか、どれだけの顧客数を抱えていて、利用できるリソース(人員)はどれだけあるのかなど、本記事では組織やサービスの特徴にあわせたカスタマーサクセスチームの立ち上げ方をご紹介します。
目次
- 1. なぜ、カスタマーサクセスが注目をされるのか?
- 2. カスタマーサクセスの組織モデル
- 2-1. オールラウンダー型
- 2-2. プリセールス型
- 2-3. コンシェルジュ型
- 2-4. スペシャリスト型(直列型/並列型)
- 3. カスタマーサクセスの組織を立ち上げる際の4つのポイント
- 3-1. 顧客の求めるゴールを理解する
- 3-2. カスタマーサクセスの活動のゴールを明確にする
- 3-3. トップダウンで進める
- 3-4. カスタマーサクセスに関わる組織の役割を明確にする
- 4. カスタマーサクセスの組織の立ち上げる3ステップ
- 4-1. 【ステップ1】カスタマージャーニーマップを作成する
- 4-2. 【ステップ2】タッチモデルを定義し、適切なリソース分配を行う
- 4-3. 【ステップ3】ヘルススコアを定義する
- 5. まとめ
1. なぜ、カスタマーサクセスが注目をされるのか?
従来の「売切り型」と呼ばれるビジネスモデルから、クラウドを通じて必要なサービスを必要なだけ利用し、それに対し利用料を支払う「サブスクリプションモデル」が社会に浸透してきたことがその背景にあります。
このサブスクリプションモデルにおいては、サービス提供事業者は「顧客に継続的に利用をしてもらうこと」で初めてビジネスが成り立ちます。
スムーズにサービスを導入できるようにしたり、能動的に不満や疑問を解決したりすることで顧客を成功に導き、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値と呼ばれる指標。一顧客から得られる利益の総額のことを指します)を最大化させるための活動がカスタマーサクセスであり、近年その重要度が注目されています。
2. カスタマーサクセスの組織モデル
それでは、実際にカスタマーサクセス行う上での組織モデルにはどのようなものがあるのでしょうか。代表的な組織モデルを例に挙げてみたいと思います。
今回ご紹介するカスタマーサクセスの組織モデルは以下の4つです。
- 1.オールラウンダー型
- 2.プリセールス型
- 3.コンシェルジュ型
- 4.スペシャリスト型(直列型/並列型)
図に記載されているCSMとはCustomer Success Manager(カスタマーサクセスマネージャー)の頭文字を取った略称で、組織においてカスタマーサクセスを推し進める人のことを指します。
2-1. オールラウンダー型
最初にご紹介するのは、営業とその後のカスタマーサクセスといった一連のプロセスのすべてをCSMが担う組織モデルです。
これから新しくカスタマーサクセス組織を立ち上げる際や、ビジネスの規模がまだ小さいなど、セールス担当者がCSMを兼務する段階で正にカスタマーサクセスの事始めと言えるでしょう。
オンボーディングや問い合わせ対応、アップセルや契約更新などすべてのプロセスを、少ない人員リソースで行うため社内連携ミスなどは少なく、顧客とのコミュニケーションも密に取ることができます。
一方で、顧客数の増加やサービスの複雑化により次第に対応が難しくなるという傾向にあります。
※オンボーディング:顧客が自社の提供するサービス・プロダクトを活用できるまでご支援するプロセスのこと
2-2. プリセールス型
次にご紹介するのは、CSMがセールス活動の一部を担うプリセールス型の組織モデルです。
サービスの導入にあたり、顧客毎のカスタマイズが少なく、オンボーディングや問い合わせ対応の負荷も少ない、小規模カスタマーが中心の場合に適しているとされます。
顧客目線から見たCSMは「もう一人の営業担当」として認識されることもあり、アップセルや契約更新といった場面ではセールス担当と連携して進めることが重要ですが、CSMのリソースをカスタマーサクセスに注力しやすいといったメリットがあります。
2-3. コンシェルジュ型
続いてご紹介する組織モデルは、サービス提供範囲が多岐に渡り、取り扱う金額も高価な、ハイタッチ領域で多く見られるコンシェルジュ型と呼ばれる組織モデルです。
CSMは顧客がサービスを利用するうえで発生する様々な要望や不満の窓口として、セールスやサポートなど各所へ適切なエスカレーションを行う交通整理役を担います。
カスタマーサクセス機能そのものを一つのサービスとして提供し、顧客へ訴求することで顧客を成功に導く組織モデルです。
2-4. スペシャリスト型(直列型/並列型)
最後にご紹介するのはCCO(Chief Customer Officer/チーフカスタマーオフィサー)と呼ばれる顧客の満足度に対し最高責任を持つ役職者のもと、新規開拓やリテンション、サポートやプロダクトなど担当する役割毎に組織を分けるスペシャリスト型モデルと呼ばれるものです。
セクションを分けることで部門間の連携を密に行う必要があるなど、組織全体の成熟度に依存をしますが、CSMは顧客のサービス活用度をヒアリングやデータを元に継続的に確認し、顧客の成功に繋がる活用方法を提案していきます。
セールスやサポート等を切り分けてカスタマーサクセスを提供する直列型や、部門間の連携を密に行う並列型が存在します。
3. カスタマーサクセスの組織を立ち上げる際の4つのポイント
サブスクリプションサービスの多くは顧客の継続的なサービス利用によって利益が生まれるモデルであるため、チャーンレート(解約率や退会率と呼ばれる顧客が離脱する割合を示す指標)を下げ、長期的に利用してもらううえで、カスタマーサクセスはとても重要な意味合いを持ちます。
ここまでカスタマーサクセスの代表的な組織モデルを紹介してきましたが、次項ではカスタマーサクセスの組織作りをするうえでの下準備として、重要な4つのポイントを解説します。
3-1. 顧客の求めるゴールを理解する
1つ目のポイントはカスタマーサクセスの根幹となる「顧客のゴールを正しく理解する」ことです。
顧客はサービスを利用することで「営業成果を上げたい」「業務の効率化を行いたい」「組織を変革していきたい」といった様々なゴールを持っています。
「顧客のゴールを正しく理解する」ことは、その後のオンボーディングメニューの立案や、最適なコミュニケーションプランの策定にも繋がります。
顧客やその業界に関する知識を深めておくことで、顧客の成功イメージを具体化しやすくなり、的確な目標設定や行動設定につながるでしょう。
また、ゴール達成と現状のギャップが大きい場合はマイルストーンを置くなどの段階的なゴールを設定することも重要です。
3-2. カスタマーサクセスの活動のゴールを明確にする
2つ目のポイントはカスタマーサクセスを通じてCSMがどのような成果を得たいのかを明確にすることです。
代表的な例としては「解約率の減少(チャーンレートの改善)」「アップセルやクロスセルなどの契約金額の増額」「NPSの向上」などがあります。
NPSとはNet Promoter Score(ネットプロモータースコア)の略で「このサービスを知人や同僚にどの程度勧めたいですか?」という質問に対し、0~10点の11段階で評価をしてもらうというシンプルな数値指標です。
カスタマーサクセスの業務設計は、目標とする成果によって注力すべき業務や取り組む優先度が異なるため、十分な事前検討が重要です。
3-3. トップダウンで進める
3つ目のポイントはカスタマーサクセスを実行する組織の立ち上げを円滑に進めるため、全社レベルで取り組むことです。
自社サ-ビスを使ってくれている顧客に確実に成功してもらうことで、自社の収益に変換するというサブスクリプション文化を理解し、経営戦略の視点でカスタマーサクセス組織の必要性や意義について、経営層の合意形成を得たうえでトップダウンで推進していくことが理想的です。
従来の売り切り型の文化、縦割りの組織構造が残ったままだと、組織の中でカスタマーサクセスを根付かせることが非常に難しいと言われています。
3-4. カスタマーサクセスに関わる組織の役割を明確にする
4つ目のポイントは社内の役割分担を明確に決めておくことです。
企業活動を行う上ではセールス、サポート、カスタマーサクセスなど、業務領域が隣接する社内組織が存在します。役割分担の線引きが曖昧な状態は、組織間での混乱を引き起こしやすく、成果の振り返りが困難です。
ときには、顧客を置いてきぼりにし、部門間で責任の擦り付け合いが起こることもあり、カスタマーサクセスとしての存在意義を問われてしまう可能性もあります。
各組織の役割と主な指標は以下のように整理することができます。
セールス
見込み客や既存顧客に対して適切なアプローチを行い、顧客の問題解決や目標達成を支援するソリューションを提案することで売上をつくります。
メインとなる指標は、受注件数や売上などですが、カスタマーサクセスに取り組むうえでは、セールス部門もカスタマーサクセスの役割を理解し、スムーズな引継ぎを行うなど全体の流れを意識した活動をすることが大切です。
カスタマーサポート
顧客からの問い合わせを起点に、迅速かつ的確にカスタマーサクセスを提供するリアクティブな応対をします。
一定時間内(1日・1時間など)の処理件数や、平均処理時間などの、生産性を重視した指標が求められるのですが、単純に対応件数が多ければ良いというわけではなく、結果として顧客が満足していなければ意味がありません。
アンケート調査やアスキング調査を顧客へ投げかけることでサービスの改善ポイントを把握しつつ、顧客満足度の計測も同時に行うケースなども一般的となってきています。
カスタマーサクセス
カスタマーサポートと混同されやすいカスタマーサクセスですが、主な評価指標として挙げられるのはオンボーディング完了率、月間利用料、契約更新率(もしくは解約率)などです。
顧客がサービスを利用し始めてから成果を感じるまでの時間(TtV:Time to Value)を短縮したり、顧客ロイヤルティを向上させたりすることでアップセルやクロスセルを推し進めるなど契約金額の増減を管理します。
4. カスタマーサクセスの組織の立ち上げる3ステップ
最後に、ここまで紹介をしてきた組織モデルや、組織を立ち上げる際の4つのポイントを踏まえたうえで、どのように組織を立ち上げていくのか、具体的な手順についてお伝えいたします。
【ステップ1】カスタマージャーニーマップを作成する
まずは顧客接点のタイミングを棚卸しし、顧客がどのようなときに、どのようなサポートを受けたいのか、導入前、検討中、導入後、契約更新などそれぞれのフェーズにおける心理状態や意思決定をする際のポイントを整理します。
CSMは各フェーズにおいてどのような活動を行うべきか、どのようなツールを使用するかなどを具体的に掘り下げることで、より競争優位のあるアプローチ方法を決定していきます。
【ステップ2】タッチモデルを定義し、適切なリソース分配を行う
顧客の規模やニーズに合わせて適切なカスタマーサクセスを行うために、ハイタッチ、ロータッチ、テックタッチにセグメンテーションを行い、それぞれに合わせた適切な人員、リソースを配置することが重要です。
ハイタッチ領域
ハイタッチ領域が中心のCSMは、大企業との取引に付きものとなる、複雑さを管理できる経験豊富な人員が必要不可欠です。
顧客はサービス導入にあたり相当なコストや労力を投資していることが多く、日々高度なサポートを受けられることを期待しており「CSMが自分たちのチームの一員として行動してくれること」を望んでいます。
ロータッチ領域
ロータッチ領域が中心であれば担当する顧客も増えるため、デジタルを活用し必要な物を、必要な時に、必要な量だけ顧客に提供するカスタマーサクセスを心がけると良いでしょう。
また顧客はサービスが自分たちのニーズに対してどれだけ応えてくれるかを知りたいことが多く、同業他社がどういった取り組みをしているのかを知りたがる傾向にあるため、この領域を担当するCSMは業界ウォッチャーになることをお勧めします。
テックタッチ領域
テックタッチ領域ではリアクティブな対応を基本としています。顧客は「CSMが腕まくりをして積極的に自分たちに協力してくれる」ことを望んでいるのですが、対象の顧客が膨大になるため、CSMはサービスに精通しているだけでなく、優先順位付けやタスク管理に長けている人物が最適でしょう。
【ステップ3】ヘルススコアを定義する
ヘルススコアとは文字通り、顧客のサービス利用における健康状態を表す指標でカスタマーサクセスを実行する上でとても重要な指標です。
サービスの利用状況をつぶさに計測できるようになるため、ヘルススコアが健全であればあるほど解約のリスクは低く、リテンション率も高いと想定できます。逆に、スコアが悪い場合は解約のリスクが高く、早期に顧客フォローを行う必要があります。
ヘルススコアを定義することのメリットは以下の通りです。
これからのサービス展開の検討に役立てる
利用されているサービスや機能の活用度合いを可視化することで、機能アップデートなど今後のサービス展開の優先度を決める際に役立ちます。
逆にあまり利用されていない機能があれば、ニーズの不一致なのか、UX改善が必要なのかなどの検討材料にもなります。
顧客とのコミュニケーションのきっかけに
ヘルススコアを継続的に観測することで得られる顧客の変化や、他ユーザとの違いなどをとらえることが出来れば、一方的ではない自然なコミュニケーションをとりつつ、顧客とのタッチポイントを増やすことが可能となります。
チャーンリスクに備えた先回りのアクションが取れる
ログイン回数が減ってきた、離脱ユーザが増加したなどの利用状況の変化から、チャーンを事前に察知することが可能です。
察知するスピードが上がることで、顧客がチャーンに至る前に、利用に不明な点があるのか、利用方法や組織に変化があったのか、など迅速で適切な応対をすることができます。
対応負荷を減らせる
CSMの限られたリソースの中で効果を上げるためには、効率的な対応が不可欠です。ヘルススコアを活用することで、どの顧客が優先的に対応すべきか、逆にどの顧客がサポート不要なのかを判断できるようになります。
アップセルやクロスセルを適切なタイミングで
サービス利用頻度の増減や利用状況に応じた顧客ニーズを正しく理解することで、有償オプションサービスの提案や、より高額なプランへの提案を適切なタイミングで実施することが可能です。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。今回はカスタマーサクセスの組織の立ち上げ方や、考慮すべきポイントなどを紹介しました。
自社だけでカスタマーサクセスの組織を立ち上げ、軌道に載せることは難しいです。もし悩んだ際は、ツール導入を検討することや、外部のパートナーと協力をして推し進めることも選択肢の一つです。
パーソルビジネスプロセスデザインではカスタマーサクセス組織を立ち上げるまでのコンサルティング、構築・設計から実行支援に至るまで、様々な支援を提供しています。「何から手を付けて良いかわからない」「どのように組織内でカスタマーサクセスを定着させるべきか知りたい」とお悩み・要望を抱えている方はお気軽にご相談ください。
本記事がこれからカスタマーサクセスに取り組む皆さまにとって少しでも参考になりましたら幸いです。