時代と共に進化する「科学する営業と商談分析」

目次
- 1. オンライン商談ログの重要性と営業の効率化
- 1-1.オンライン商談の需要の高まり
- 1-2.オンライン商談ログの活用と重要性
- 2. セールスアナリティクスによるオンライン商談ログの分析手法
- 2-1.「営業を科学する」セールスアナリティクスとは
- 2-2.商談ログの取得・分析
- 3. 商談の分析結果から見えること、その活用
- 4. セールスアナリティクスが実現すること
- 4-1.商談力向上
- 4-2.案件管理効率化
- 4-3.人材育成最適化
- 5. オンライン商談ログ分析の活用事例
- 6.セールスアナリティクスのこれから
1. オンライン商談ログの重要性と営業の効率化
近年世間の情勢に伴い営業手法に大きな変化が生まれています。 対面型の商談から、オンラインでの会議ツールを活用した非対面での商談も主流となりました。
1-1. オンライン商談の需要の高まり
新型コロナウイルスの影響や働き方改革などで近年テレワークの需要が高まり、非対面での営業活動も求められています。
そんな中でインターネット上という場を活かした、オンライン商談の需要が高まりました。 従来のようなテレフォン・アポイントメントや対面での訪問は難しくなってしまいました。このような状況で新規顧客との接点が減ってしまうという企業も少なくないと思います。
パソコンやスマートフォンがあれば、インターネット上から参加できるため場所や同席人数の制限もなく、ご時世にあわせた非対面でのオンライン商談が注目されています。
1-2. オンライン商談ログの活用と重要性
オンライン商談ならではの利点として、商談を録画できること(商談ログ)にあります。
従来までの商談では内容の記録ができず、商談内容の分析は難しいものでした。個人の裁量に委ねられた空間となり、基本的にはブラックボックス化(業務遂行のプロセスがわからなくなること)しています。
このような状態の中、商談のログを後から振り返ることができるようになり、属人化されているような営業手法やスキルをデータ化することが可能になりました。 これにより営業手法の定量化や、個人に委ねられてしまっていた商談内容も定量的に管理することができるようになります。
2. セールスアナリティクスによるオンライン商談ログの分析手法
商談の振り返りができるようになった商談ログを、具体的にどのように活用するのか。そもそもセールスアナリティクスという考え方は、昨今の非対面型の商談が主流になり始めてから生まれたものになります。
そんなセールスアナリティクスを「営業を科学する」という考えのもとにご説明します。
2-1. 「営業を科学する」セールスアナリティクスとは
営業や商談における成功要素を定量化し解明を行い、そのデータに基づいたアクション改善フローを構築、そうすることで組織の営業力の強化を実現する。
これがパーソルビジネスプロセスデザインの考えるセールスアナリティクスです。
従来までの「商談」の中身の評価に着目してみます。顧客とのクローズドな場での限られた環境、内容や状況が出席者のみにしか分かりません。そんな環境で行われているためフィードバックも曖昧になり、評価基準も定まりません。そして何より優れた営業によるスキルも、ブラックボックス化され、ハイパフォーマーがハイパフォーマーたる所以も分かりません。
これらの商談分析の課題を解決し、「定量的な分析指標による評価が必要」になります。 従来の営業の進捗/結果だけではなく、商談の中身に注目し、ブラックボックス化していた商談構造、個人スキルを定量・指標化する。 これが「営業の科学」で目指すところです。
2-2. 商談ログの取得・分析
商談ログの取得は主にZoomのように映像と音声を録画できるコミュニケーションツールを用いて行われます。
そして録画されたデータより、言語・準言語・非言語データを取得します。 取得された言語データからは「何を話したのか」という話題、顧客の課題、BANT+C情報(※)が抽出できます。
さらに準言語データからは「どのように話したのか」という情報が取得でき、話題による声のボリュームの変化、抑揚や話に対する笑い・相槌など、話す速度、会話の間といった内容も抽出ことができます。
また非言語データとは映像から得られる情報のことで、例えば身振り手振り(ジェスチャーなど)、参加者の頷きなどの体の動きや姿勢、目線など映像ならではの情報を指します。
このような言語、準言語、非言語の複合的な要素から
・商談構造:商談の構造、構成を分類。全体像を定量的に可視化。
・話題推移:どのタイミングでどのような内容が話されたのかをAIにて分類。
・状態変化:出席者の状態である準言語(抑揚の変化)、非言語(目線、体の動きの変換)を解析。
というデータを取得・分析していきます。
※BANT+C情報とは、「Budget(予算)」「Authority(決裁権)」「Needs(必要性)」「Timeframe(導入時期)」「Competitor(競合)」の頭文字 をとったワードであり、営業や商談におけるヒアリング事項
3. 商談の分析結果から見えること、その活用
分析の結果から、優れた営業メンバーの優れた要素を定量化した指標としてデータ抽出が可能になります。
例えばクライアントに多く話をさせる人が良い営業パーソンであるという考え方があります。この営業スキルを定量的に示す方法として、クライアントの会話占有率や質問回数のデータを取得し、最低何回あった方がいいのかなどの一定の閾値をもけることで「クライアントに十分に話させたか?」を商談ごとに評価することが可能となります。
また、データによって定量的に示された成功要素を参考に、アクションのコントロールが可能な箇所の分析を行います。
例えば、質問回数を増やすことやどのタイミングでどんな話をするのかといったような項目を改善ポイントとします。逆に本来持っている声質、話速などは、コントロールがなかなか難しい部分になります。 商談ログの分析により良かったこと悪かったことが明確にデータとして示すことができ、良かったアクションを後の商談でも成功要素として反映をしていくことが可能になります。
漠然とした「営業の上手い人」という言葉を実際の商談データに基づいて定量・指標化、そして可視化し分かりやすくそのスキルを表現することで組織や個人の営業力の強化につなげます。
4. セールスアナリティクスが実現すること
セールスアナリティクスでは、商談データを分析し、営業チームの組織力強化を実現します。前項までにご説明した内容の要点を「商談力向上・案件管理効率化・人材育成最適化」の3つのポイントに沿ってまとめます。
4-1. 商談力向上
商談のオンライン化により、取得可能になった商談のログを振り返り分析します。分析結果から改善のアクションを明確化し、ゴールデンパス(成功する商談の進め方)に則った商談力の底上げを行います。
4-2. 案件管理効率化
共通の指標に基づき商談の中身を定量的に評価します。 またその商談データをSFA(営業支援システム)に連携することで、案件進捗管理、受注予測の精度を向上させることも可能です。
4-3. 人材育成最適化
各メンバーの商談スキルを指標化しスコアリングすることが可能です。これによりハイパフォーマーとの重要指標における差や各メンバーの特徴を定量的に知ることができ、具体的な改善アクションを指示することができ、効率的且つ説得力のある人材育成を実現します。
5. オンライン商談ログ分析の活用事例
実際にオンラインでの商談のログ分析により、課題発見・改善となった事例をご紹介します。
・実例
決済システムの事業において、加盟店アポイントメント獲得のためのインサイドセールス支援 ・分析
・課題
決済システムについて、対象店舗の業種・業界によって重視される情報に違いがありますが、それに合わせたトークスクリプトになっていませんでした。
決済システムの導入にあたり、企業や業種によって気にしていることは異なるということが音声データの解析結果から判明し、相手の業種・業界によって必要な内容を先に話し興味を持っていただくようなトークスクリプトが必要だということが分かりました。
・講じた改善策
対象となる店舗の業種によって重視されることを分析し、その結果に合わせて使うトークスクリプトを変更しました。
・成果
顧客の興味・関心に沿った営業が可能になり、アポイントメントの獲得率が改善しました。
6. セールスアナリティクスのこれから
昨今の環境の移り変わりに伴い営業・商談手法にも大きな変化が生まれました。
オンライン商談が主流になり商談の中身がデータとして可視化されるようになったことと同じように、これからもセールス領域ではさまざまな変化が起こるものと考えられます。 営業先選定やアポイントメントの取得などを、セールスアナリティクスによって最適化されたAIが人間に代わって行う未来も遠くないかもしれません。
個人が経験として積み上げた営業パーソンとしてのスキルを、さらに効率的に、効果的に、正確に、誰にでも使える手法に落とし組織の営業力を高めるため「営業の科学」の挑戦は続きます。