マーケティングオートメーションツールを利用する際の、リードスコアリングの最適な設計・運用方法
今回はマーケティングオートメーションツールを利用する際の「リードスコアリングの最適な設計・運用方法」について執筆させていただきます。
マーケティングオートメーション元年と言われた2015年が過ぎ、インターネットや書籍などでも、マーケティングオートメーション(以下、MA)に関する情報を、多く目にするようになりました。しかし、具体的な導入事例については、情報が少ないのが実情です。
特にリードスコアリングは、MAツール活用における重要なプロセスですので、スコアリングの企画設計・システムへの実装・結果の振り返り・改善を定期的に行うことが導入成功の鍵になります。
スコア設計に必要なプロセスとは
スコア設計に必要なプロセスは主に、
▶︎シナリオ設計
▶︎スコア設計
の2つです。
■シナリオ設計
これまで、コンテンツマーケティングに積極的に取組んでいた企業や、Webの導線分析を基にした、各コンテンツのコンバージョン数値など、自社のノウハウがある場合、シナリオ設計はそれほど難しくありません。
しかし、多くの企業、特にB2B領域の企業では、そのような取組みが進んでいる企業はまだまだ少ないかと思います。さらに、B2B領域では、最終的なゴール(受注)までのプロセスがデジタル化しづらいため、最適なシナリオを描くのに、大変な時間と労力がかかってしまいます。
■スコア設計
スコア設計はシナリオ設計を基に行います。設計した一連のシナリオに対して受注確度が高いことが見込まれる、という観点で点数の高低をつけていきます。
例えば、市場動向についてのホワイトペーパーダウンロードに10点を加点するとした時、事例資料のダウンロードに対しては少し高い20点を付ける、という具合です。
ここでは、受注確度の中でも、推測される「顧客ニーズ」に応じて点数を決めています。また、スコア設計の軸としては、上記の「ニーズ」のように、いわゆるBANTに沿った考え方が主流ですが、その他には、近年提唱されている「フィット感」(自社との距離感や商材とのフィット感)なども検討するとよいでしょう。
その際には、セミナーにオフラインで参加いただいた場合、自社との距離感は比較的高いと推測されるため、資料DLなどのオンラインの行動より高い30点を付けるという具合です。
シナリオ設計とスコアリング設計のポイント
■シナリオ設計
スコア設計はシナリオ設計を基に行いますので、シナリオ設計は避けて通れないものです。
しかし、前述でもお伝えした通り、シナリオ最適化のためには多くの時間と労力がかかります。
スピードを優先させるのであれば、これまでの感覚値や、営業部門の知恵を借りながら、シナリオを「仮決め」し、進めていくことをおすすめします。
方法としては、
リード獲得から受注に至るまでの、営業プロセスに沿ったコンテンツや顧客行動を紐付け、受注までのプロセスを描きます。
例)
<営業プロセス> <対応コンテンツ>
① 興味喚起 ⇔ 市場動向についてのホワイトペーパー
② 解決意欲 ⇔ セミナー申込み・参加
③ 解決方法の整理 ⇔ 近しい業界や競合他社の事例
④ 比較・検討 ⇔ 価格やROIシュミレーション
⑤ インサイドセールスにてヒアリング
⑥ 営業引継ぎ
⑦ 受注
■スコア設計
(1)指標の閾値を決める
まず初めに「スコアを何の指標とするか」を決めます。多くの場合は、インサイドセールスのタイミングと営業引継ぎのタイミングの指標とする、というものが一般的です。
そして決めた指標の基準でスコアを設定します。
例えば、インサイドセールスはスコア70点で行う、営業引継ぎはスコア100点で行う。といった具合です。
(2)シナリオに沿ってスコアを設定する
基準となるスコアを念頭に、仮決めしたシナリオ設計に沿って、スコアの点数を決めていきます。
また、インサイドセールスのプロセスが入る場合は、電話でのヒアリング項目に対してもスコア付与を行います。
(3)基準のスコアと、コンテンツ毎のスコアに違和感がないか確認する。
最初に決めたシナリオで点数設計ができていることを確認することはもちろん、それ以外のシナリオでも、点数加算して試し、基準のスコア、コンテンツごとのスコアに違和感がないか、確認します。
最後に、顧客行動に対するスコア以外にも、受注見込みが顧客の基礎情報(会社規模や、売上、業種・業態等)に影響を受ける場合は、それらにもスコアを付与しますので、自社の理想の顧客をイメージし、ペルソナを作成しておくことも大切です。
定期的な評価・チューニング
リードスコアリングの設計は終わりました。しかし、初めに決めたスコアリングはあくまでスタートするための土台ですので、これらを現実味のあるデータにしていくことが大切です。
はじめからスコアリングが上手く運用されることは稀で、定期的にスコアの見直しが必要です。チューニングにあたっては最終的に求めるゴール(=受注)につながっているかがポイントになります。
例えば、月に100件のインサイドセールスの閾値に達したリードがあったとします。インサイドセールスの結果、その顧客に対して「インサイドセールスすべきタイミング、状態だったのか。」をインサイドセールス部門のフィードバックを貰います。また、営業引継ぎした顧客については「営業引継ぎすべきタイミング、状態だったのか」を営業部門のフィードバックを貰います。
ここでのポイントは、SFAやCRMに残った履歴だけで判断するのではなく、必ず定性的なフィードバックを貰う、ということです。
その理由を深掘りしてスコアリングのチューニングを実施し、オフラインの情報をスコア化することで、よりよいスコアリングへと改善していけます。
まとめ
▶︎スコアリングは、シナリオ設計が基になります。
▶︎シナリオ設計は、最初は緻密に行うよりも、仮で決めたものを改善していく方法が最適です。
▶︎インサイドセールスや、営業引継ぎなど、目的となるアクションの基準スコア決め、それを念頭に、コンテンツのスコアを決定する。また、他のシナリオでも試して、基準のスコアが妥当かどうか確認します。
▶︎初めの設計よりも、定期的なチューニングが必要。オンラインのデータをスコア化するのはもちろん、オフラインのデータもスコア化することで、より精度の高いスコアリングになります。