Webコンサルティングで売上改善に貢献~サイト課題の検証法

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「どうすれば、当社商材の売上が改善するのですか?」
Webコンサルタントとして現場に立つ中、最も多くご質問を頂くのが、こうしたお悩みです。
シンプルながら本質的な課題であり、我々Webコンサルタントは、このお悩みを解決するために存在するといっても過言ではありません。

では実際、こうしたお悩みをどのようにして解決しているのか、1つのモデルを例にとり、顧客課題を解決するための簡易検証事例を紹介してゆきます。

※以降の記述は、公的機関の発表内容以外、業種業態を含め架空のモデル/数値を用いており、解析手法も簡略化しています。

Web解析事例:ユーザーデモグラフィック属性×人口統計データで売上改善!

業種:家電メーカー
業態:BtoC
サイト形態:EC機能を持たない、商品紹介的な立ち位置の公式サイト
発注主体:サイト運用関連部署
課題:
「最近、長年の主力商品”X”の売上が伸び悩んでいる。それに対し、Webサイト運用チームとして、何か貢献できる施策は無いか」
コンサルティング依頼内容:商品Xは、発売開始から15年近く経過しているロングセラー商材であり、関連商品市場シェアの10%超を占める、文字通りの主力商材。しかし、直近3ヵ年では売上高がややマイナス成長に転じており、このままマイナス幅が広がれば、事業ポートフォリオにすら影響を与えかねない状況である。
商品Xは実販メインだが、Web運用チームとしても何かしらの事業貢献を求められているため打開策を提示して欲しい。

解析手順①:予備調査~商品市場動向&経済情勢を探る

調査目的:まず、マイナス要因を探るため、市場全体が縮小し、商品Xの売上低下が生じた可能性を検証する
調査手段:消費動向を示す消費者物価指数と、商品市場全体の売上高、商品Xの売上高の推移を比較する
調査結果:第二次安倍内閣発足(2012年12月26日)以降、消費者物価指数は上昇を続けており、商品購入の背景となる経済情勢は良好だと言える。また、それと連動して商品Xの属する市場全体の売上高も伸長しており、市場自体の需要は旺盛と言える。
しかし、商品Xの売上高のみ減少傾向に転じているため、市況とは別の要因があると推定される

商品市場動向

このように、市況に関係なく特定商品だけの売上が減少している以上、その商品に対する購買ユーザーのロイヤリティ(ここでは”愛着度”や”関心度”等の意)が低下している可能性があるため、次にユーザーロイヤリティの変動を調査してみた。

解析手順②: 商品Xのユーザーロイヤリティ変化を調査

調査目的:商品X自体のロイヤリティが低下し、購買の選択肢から漏れている可能性を調査する
調査手段:ユーザーにとって関心度が高い物は、それに関連するキーワード(KW)で検索される傾向が高いため、ロイヤリティ増減≒商品名関連検索増減と仮定し、商品X関連KWの検索トレンドを調査する
調査結果:季節要因による増減はあるものの、通年にならして見ると、直近3ヵ年は商品X関連KWによる検索量が減少しており、検索量減少傾向が商品Xの売上減少の推移と一致している。
つまり「商品Xのロイヤリティが低下し、購買の選択肢から漏れている」という仮説は、ある程度妥当性があると考えられる。

商品X関連キーワードの検索量推移

では、なぜ商品Xのロイヤリティが低下し始めたのか?
商品X関連広告予算の8割方はTV-CMに投下されており、当商品のユーザー獲得は、ほぼTV-CMに依存していると言って差し支えない。しかし、直近5ヵ年のTV-CM予算には、ほぼ増減は無く、ロイヤリティ減少が顕在化した直近3ヵ年でもCM露出量には変化がない
唯一の変化は、男性タレントと女性タレントバージョンの2種類で構成されていたCM内容を、男性タレント版のみのクリエイティブに一本化したという事実。
ここから、CMの受け手であるユーザーと、CMのクリエイティブに何らかのミスマッチが生じ、ロイヤリティ低下を招いた可能性が推定されたため、次にユーザーのデモグラフィック属性(人口統計学的属性)の変化を調査した。

解析手順③:ユーザーデモグラフィック属性の変化を調査

調査目的:デモグラフィック属性ごとのサイト来訪増減から、どのユーザー層のロイヤリティが低下しているかを調査する
調査手段:商品X関連KWでのサイト来訪ユーザーのデモグラフィック属性を調査し、直近3ヵ年で来訪数が減少しているユーザー層を特定する
調査結果:2013年以降、18歳~24歳、及び25歳~34歳の男性ユーザーのサイト来訪が減少しており、この年代のユーザー層と、CMクリエイティブにミスマッチが生じている可能性がある。
ただし、若年層は日本国内の人口比でみても減少が生じている年代層であり、サイト来訪減少も、その人口減少の影響を受けている可能性も考えられる。

年齢別人口推移&若年人口シェア

この顧客は、いわゆるナショナルクライアントと呼ばれる企業であり、サイト来訪ユーザー数も日本の人口構成比の影響を考慮するに値する規模感であるため、次にサイト来訪ユーザーと人口統計との差異を調査した。

追加調査:サイト来訪ユーザーのデモグラフィック属性と人口統計データの乖離調査

調査目的:年代別サイト来訪ユーザー減少が国内年齢別人口減衰の影響によるものかを調査する
調査手段:日本国内の男女年齢別人口シェア≒本来サイトに来訪すべき年齢別ユーザーシェアと仮定し、実際のサイト来訪ユーザーの年齢別シェアとの乖離を調査する
調査結果:商品X関連KWで来訪する18歳~24歳、及び25歳~34歳の男性ユーザーは、やはり年齢別人口シェアと比べても減少が著しく、直近での人口比との差は18歳~24歳で-7.7ポイント、25歳~34歳で-11.3ポイントと大幅な乖離を生じている。
また、比較対象として同時調査した別商品Yでは、人口比とサイト来訪シェアはほぼ一致していたため、商品Xのみ若年層の男性ユーザーを取逃がしているという事が明確になった

商品Xサイト来訪シェア 年齢別人口統計 商品Yサイト来訪シェア

結論&改善示唆

結論:CMと対象ユーザーがミスマッチを起こし、商品Xの若年層ユーザー離れが発生している
現在、商品XのCMに起用されている人物は、80年代~90年代前半にわたって活躍したタレントであり、該当年代に青年期を過ごしたユーザーには絶大な影響力がある一方、それ以降の年代には支持されていない。
また、別途実施したバイラル調査(口コミ等の拡散度調査)でも、近年Web上において同タレントに関する無責任な風説が流布されており、若年層の支持離れを加速させている事が確認できた。
決して、このCMのみが原因とは言い切るべきものではないが、商品Xに対する若年層のロイヤリティ低下の一要因となっている可能性は高い。

※バイラル調査は下記ツール等で実施
 SNS記事拡散調査ツール https://app.buzzsumo.com/research/most-shared

改善示唆:Web運用チームとして、広報部署へCM切り替えを示唆するべきである
解析結果に基づき、広報関連部署に対して、以下のような示唆を提示してはどうであろうかと提案した。
商品Xと同時にデモグラフィック属性調査を実施した商品Yでは、年初より女性アイドルを起用したCMを投下し、前年同期比10%を超える売上を達成。
サイト来訪増減で見ても、特に25歳~34歳の年代層が急増し、以前からのボリュームゾーンである45歳~54歳に迫るシェアを獲得している。
そこで商品Xも、現状のボリュームゾーンである中高年向けCMと並行して、若年男性向けクリエイティブに変更したCMを投下し、若年層の取り込みを図ってみるべきである。

結果:そもそも、今回の案件の発注主体であるWeb運用チームでは、Webサイトの制作ディレクションを主務としており、Web解析はほとんど実施してこなかったとのこと。また、実販を主とする社内にあって、自部署の立ち位置も不明確であったため、「我々のサイト自体が自社のマーケティング活動に役立つとは考えていなかった。これで我が部署の新たな活路が見出せた」とお喜び頂けた。
なお、TV-CMは広告代理店との関係性が大きく影響を与える分野であり、ただちに事が動くものではないが、今回の解析結果を契機として広告部署との連携も進み、Web運用チームが主導するTV-CM改変に向けた補強データ収集が続いている。

まとめ

以上、ここまでごく簡易的ですが、顧客課題を解決するWebコンサルティング事例を紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
今回の案件で使用したデータは、何のカスタマイズも施していないGoogleアナリティクスでも取得可能であり、統計関連のデータも公的機関の発表データを利用しただけのものです。それゆえ、もの足りなく感じる方も多いでしょう。
しかし、今回紹介したような簡易的なWeb解析から得られるデータでも、会社全体の事業戦略やマーケティング活動を牽引することさえあるわけです。
皆さんも、ご自身で解析を実施する際には、いきなり解説書を片手に複雑な解析に取り組むよりも、まずはデフォルトで用意されているレポートを使用し、そこから何を読み取れるか検討する方が、労力に見合った成果を得られるかと思います。
また、そもそも何をすれば良いか分からないといった場合でも、当社では解析手法やモニタリング環境の整備を含めたご相談にお答えできる人材を用意しておりますので、お気軽にご連絡頂けましたら幸いです。

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