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SPECIAL TALK 01

不確かな社会。テクノロジーとの共存で、
組織はいかに変わるのか。

サイボウズ株式会社

代表取締役社長

パーソルプロセス&テクノロジー株式会社

代表取締役社長

青野 慶久 様

横道 浩一

業務改善プラットフォーム「kintone」をはじめとするさまざまな製品によって、はたらく現場を変革し続けてきたサイボウズ株式会社。パーソルプロセス&テクノロジー(以下、パーソルP&T)は、同社のパートナー企業として現在も強固な関係を築いています。そして今回、両社の代表による初の対談が実現。進化するテクノロジーはビジネスにどのような変化を生み出せるか。新型コロナウイルス感染症がもたらした不確かな社会における、テクノロジー活用のあるべき姿とは。そして、組織はこれからどう変わっていくべきなのか。それぞれの視点で語りました。(以下、敬称略)

近年のビジネスにおけるテクノロジーの“パラダイムシフト”。

青野 ここ2〜3年のトピックで目を見張るのは、やはりAIやロボットです。翻訳ツールなども飛躍的に賢くなりましたよね。もはや何年もかけてカタコトの英語力を身につけるくらいなら、ツールを使いこなすスキルを習得したほうがいいと思えるほどに。

 

横道 おっしゃる通りですよね。英語を学ぶ意味があまりなくなってきていますよ。

 

青野 AI・ロボットの進化によって、テクノロジーへの見方が完全にパラダイムシフトしましたね。

 

横道 そうですね。パーソルP&Tは、人材ビジネスを主力とするパーソルグループの中でテクノロジー分野を担っていますが、実はここ数年、グループ内で我々へのオーダーが急激に増えています。背景にあるのは構造的な労働力不足。パーソルグループ全体だと、人と仕事の適切なマッチングを行う人材派遣や紹介のビジネスが主力ですが、構造的な人手不足は継続していますから、代替手段として「既存の人材や組織の生産性向上」に貢献できるサービスが求められるわけです。

 

青野 人の減り方が加速していますからね。

 

横道 そうなのです。先ほど青野さんからもロボットの話がありましたが、我々はRPAの導入支援実績では業界の中でもトップクラスだと自負しています。人材派遣のオーダーに応えられなくても「『パーソルのRPA*』なら、その業務を替わりにロボットがやってくれますよ」という提案ができる。そういったつながりで、テクノロジーを活用した生産性向上という問い合わせは、年々増加しています。コロナ禍によって、その傾向はより加速していますね。

*パーソルのRPA…パーソルグループが提供するRPAの導入・運用支援サービス

 

青野 新型コロナウイルス感染症はあらゆる現場に「プロセスの破壊と創造」をもたらしましたよね。説明会ひとつとっても、今まで地域ごとに人を集めて開催していたのが、オンラインで全国一斉にできるようになりました。個人的には、この状況を前向きにとらえ「プロセスを変えよう」と思える会社は、今後飛躍的に伸びるだろうなと。逆に今のプロセスにこだわりすぎてしまう組織は、危険ではないかと思います。

 

横道 まさにパーソルP&Tの存在意義は、「プロセスの変革」によって人と組織の生産性を向上させることにあります。だからこそ、従来のプロセスから脱却できない企業にも、なんとかその価値を届けたいと常々から使命感に駆られています。

 

 

これからの現場で求められる、テクノロジーのあり方・組織のあり方とは。

横道 パーソルグループの「はたらいて、笑おう。」のビジョン実現に向けて、我々はさまざまなサービスを通して「人と組織の生産性向上」を提供しています。さまざまなお客さまの現場の課題を見てきた我々だからこそ感じるキーワードとして「内製化支援」が重要だと考えています。お客さまの課題に対してシステムを作って渡すだけではなく、お客さま自身が問題意識を持って自ら変化していけるような環境まで整えることが、今後ますます重要になっていくでしょう。RPAがその好例ですが、お客さまの社内にRPAを使いこなせる人材を育てていければ、その人材の付加価値も高まりますし、テクノロジーの内製化が一気に進みます。これからのITはそういった方向にどんどん進んでいくのではないでしょうか。

 

青野 私もほとんど同じことを考えていまして、テクノロジー側にできることは、実はもうあまりないのではないかと。テクノロジーを使う人間側のアップデートの方が実は重要なんですよね。まさに内製化の意識というか、自分たちの手で変えていくんだというマインドチェンジを起こすことこそが、本当のDXではないかと。

 

横道 コロナ禍によって「変わらざるを得ないから困った」という組織と、主体的に「変わらなきゃいけないよね」という組織がありますよね。後者を増やしていくことが我々のミッションでもあるのですが、その差はすごく大きいと思いますね。

 

青野 本当に大きいですよ。アフターコロナの頃には、コールドゲーム的に差がついているのではないかと思います。

 

 

「変われる組織」であるために、最も重要なこと。

青野 「変わりたくない」という気持ちは人間の心の中に普遍的にありますから、それでもなお「変わろう」と腹をくくれるかどうか。トップの覚悟みたいなものは大事な要素の一つだと思いますね。

 

横道 あとは粘り切れるかどうかですよね。トップが覚悟を決めたら、あとは現場が成果を出すだけ。でも、成果なんてすぐには出せないですよ。

 

青野 そうですね。今までやってこなかったことに、急に取り組むわけですから。一時的に生産性が下がることも当たり前なのですが、そこで後戻りせずに粘り切れるかどうか。

 

横道 はい。ですから小さな成功体験をなるべく早く作ってあげるというのが、我々の立場においては非常に大切なことだと思っています。トップの意思決定に対して、成功体験をいかに早く提供できるか。そしてそれをどれだけ一緒に積み上げられるか。それが現場の主体性を導き出すカギになるでしょう。

 

青野 いいですね。スモールスタート・スモールサクセス。一昔前であれば、業務プロセスの改善のために1年がかりで何千万円もかけてシステムを導入していたのが、クラウドなら申し込んだその日から月額数万円でスタートできる。小さなスタートから小さな成功を積み重ねて経営者に示すことができれば、自信を持って前に進めますからね。

 

横道 本当にそうなんですよ。これからはとにかく早く小さな課題をひとつクリアして、その後も改善を繰り返す。その積み重ねが組織の変革を推進していくだろうと思います。

 

 

変化を続ける社会で、それぞれが思い描く未来。

青野 今回初めて横道さんとお話して、大変柔軟な方だなと感じました。人材業界からIT企業のトップに突然就任されたのが3年前。それにもかかわらず、すでにこの業界の変化を見抜き、行動に移していらっしゃる。IT企業におけるお客さまとの関わり方は、ここ数年で本当に大きく変化しています。まさに小さい成功体験を「一緒に」積み上げていきましょうというような、伴走型に変わってきているんですよね。

 

横道 ありがとうございます。「伴走型」というのは我々も非常に大切にしている価値観で、社内でもよく流通しているワードですね。実は今、パーソルグループ内のとある営業管理システムを御社の製品で構築しようとしておりまして。

 

青野 本当ですか。ありがとうございます。

 

横道 やはり時代に合っているというか、本当に実用的な製品・サービスとは何かというところで、すごく勉強になっています。御社としては、今後の展望やビジョンはどういったものを描いておられますか?

 

青野 サイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」という企業理念を掲げているのですが、チームワークあふれる状態とは、現場の一人ひとりが生き生きしていることだと考えています。自分らしく働き、自分らしく意見を言えて、自分らしく改善できる。そういう意味だと、これまでお話してきたようなパラダイムシフトは、私たちにとってすごく追い風になっていると感じています。ようやく、私たちが理想とする社会に少しずつ近づけそうだと。だからこそ、これからも皆様に活用いただけるサービスの開発と、精度の向上に取り組んでいきたいですね。

 

横道 ありがとうございます。我々も全く同じようなことを考えています。パーソルグループ共通の企業理念である「はたらいて、笑おう。」を実現するために、これまでの人材ビジネスでは個人にフォーカスしてサービスを開発してきました。これからははたらく現場とテクノロジーがいかに共存していくかというアプローチが重要になっていくと思います。あらゆる現場が主体的に変化していくための伴走者として、この「現場とテクノロジーの共存」というテーマをリードする企業に成長していきたいと考えています。

 

取材日:2021年4月13日
※所属・役職は取材当時のものです。

 

 

青野 慶久様 プロフィール

 

1971年、愛媛県生まれ。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)を経て、1997年に愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月、同社の代表取締役社長に就任。社内のワークスタイル変革を推進し、離職率を6分の1に低減するとともに、三児の父として三度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーを歴任。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)がある。

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