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開催レポート:1万人のキャリア資産調査結果の公表~人的資本経営に必要な情報開示~

本記事は、2022年10月13日(木)に行われたオンラインセミナー「1万人のキャリア資産調査結果の公表〜人的資本経営に必要な情報開示〜」の開催レポートです。

<セミナー内容>

【1】本セミナーの趣旨説明

【2】人的資本経営に必要な情報開示
株式会社パーソル総合研究所
主任研究員
井上 亮太郎氏

【3】2022年最新 キャリア資産調査結果レビュー
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
ワークスイッチ事業部 デジタル人材開発部 部長
成瀬 岳人

【4】質疑応答

近年関心の高まっている『人的資本経営』。
その中で求められる人的資本の情報開示について、可視化の指針案が提示されました。

戦略的な企業価値向上に向けて、どのような情報を蓄積し、どのように開示していくか。
多くの企業がより具体的に検討することが求められてきております。

本セミナーでは、『人的資本情報開示に関する実態調査』に携わったパーソル総合研究所 井上亮太郎氏をゲストに招き、本調査結果がもたらす人的資本経営に必要な戦略的可視化の価値についてトークセッションを行いました。また、2022年最新の調査結果データを公開し、井上氏に公開レビューいただきました!

登壇ゲスト~テーマの異なる12の越境先~

越境先として【スキル・学び】【興味・関心】【社会貢献】の3つのテーマを設け、 参加者は各自興味のあるブースを行き来しながら担当者との直接の対話を通して「越境」を体験していただきました。

人的資本経営に必要な情報開示

人的資本経営とは?

「人的資本経営」の定義は、「人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方」だと、経済産業省によって定められています。

「人的資本」とは、人的資本とは「モノ・カネ」のように、「ヒト」の持つ能力を「資本」として捉えた経済学の用語です。具体的には、個人が身につけている知識・技能・資格・意欲などを指します。

これまでは人材を「資源」と捉えて有限なものをどう活用するかという考え方をしていました。しかし、これからは利益を生み出す源泉、つまり「資本」と考えて投資をしていくことが重要と言われています。

人的資本経営を行う上で、投資判断や企業価値判断の軸として人的資本に関する開示ニーズが高まっています。

企業価値における無形資産の高まり

企業価値に占める無形資産の割合は米国・日本ともに増えている。日本は無形資産の割合は米国ほどではないため、無形資産の一つである人的資本の可視化は今後に向けて意義が大きいとされています。(※1)

※1 内閣官房「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」にて言及されている
出所:内閣官房「非財務情報可視化研究会 第5回」資料よりパーソル総研抜粋

人的資本も無形資産の一つであり、従業員の能力、経験、イノベーションへの意欲等が該当します。海外諸国に遅れつつも、日本国内の人的資本に関する方針が本年多く提示されました。

人的資本情報の開示に関して重視する要素

投資家が重視する「日本企業の中長的な投資・財務戦略において重視すべきもの」の要素においては、人材投資の割合が最も高く、次いでIT投資、研究開発投資に着目していることがわかりました。

▼投資家が着目する情報

「パーソル総合研究所 人的資本情報開示に関する実態調査」によると、企業で人的資本情報やその開示について、取締役会や経営会議で優先度高く議論されている割合は56.1%と過半数を超えています。

また、人的資本情報の開示に関して最も関心が高かったのは 「優秀人材の採用実績の増加」「他社の動向」「役員層の意識改革」でした。

「多様性、ダイバーシティ&インクルージョン」「教育、育成、リスキリング」「能力、スキル」というワードを重視する一方で、人的資本情報の開示にあたっての悩ましさや懸念として「理想と現状とのギャップ、実績や達成度の低さ」「開示内容の範囲や深さ、切り口」「社内の意識改革、連携、意思統一 」が挙げられています。

では、個人の関心はどうでしょうか。
内閣官房が出した人的資本可視化指針と一緒に見ていきましょう。
開示事項はの例19項目あり、「価値向上」と「リスクマネジメント」の2つの観点にグラデーションをつけて分けています。


( https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/sustainable_sx/pdf/007_05_00.pdf )

▼「パーソル総合研究所 人的資本情報開示に関する調査 第2回」人的資本情報の開示項目

転職を検討している社会人への調査結果を照らし合わせると、「リスクマネジメント」領域の項目に関心が高い傾向が見られました。

▼転職を検討している社会人の人的資本情報開示項目への関心度

転職を検討している優秀人材で見ると、先ほどと打って変わって価値向上領域に関心が高い傾向が伺えます。どのような情報を重視するかは、人材によっても変わるようです。

▼転職を検討している社会人(優秀人材)の人的資本情報開示項目への関心度

学生の回答を社会人と比較すると、学生は「社会貢献に積極的」「環境に配慮している」の比率が高く、ESGのE(環境)とS(社会)を重視する傾向がうかがえます。また「成長できる」「人材育成に積極的」「強みや専門性を活かせる」も高い傾向が確認されたため、人的資本への投資に積極的な企業姿勢は、学生へのアピールにもつながることが示唆されます。

このように情報開示をしてフィードバックを受けながら改善することで長期的かつ持続的な企業価値の向上ができ、最高善としての幸福(ウェルビーイング)に到達すると考えられています。「人的資本経営≒Well-being経営」と言えるのではないかという言葉で井上さんからのお話は締められました。

2022年最新 キャリア資産調査結果公開!

続いて成瀬から公開したばかりの「2022年 キャリア資産調査結果」から見られる傾向についてお話しました。

キャリア資産診断とは

個々人の知識や能力、社会とのつながりや健康といった「見えない資産」を3つの資産「生産性資産」「活力資産」「変身資産」に分類し、診断によって可視化できるようにしたものです。

▼それぞれの資産の詳細

▼キャリア資産診断のイメージ

それでは「企業規模別」「職種別」「複業実施経験の有無別」「プロテア利用者の平均データと比較」の4つの観点のデータをご紹介いたします。

①企業規模別のデータ

②職種別のデータ

③複業実施経験の有無別のデータ

④プロテア利用者の平均データと比較

「人的資本経営≒Well-being経営」と聞いて成瀬が感じたこととは、ひとりひとりのWell-Beingは違うため、「よく在る」 「よく生きる」社員を、どう応援するか?が今後大切になるのではないか、ということでした。

【組織】個々人のキャリアの可能性に向き合う

組織と個人のより良い関係性づくり(我々がお手伝いできるところ)

【個人】自分のキャリアの未来に向き合う

最後に井上さんに「2022年 キャリア資産調査結果」のレビューをいただきました。

「納得感のあるデータですね。人の可能性を広げるにはさまざまな環境にいくことが大事。」
「日本では学びへの投資が少ないというデータをよく見るけれども、会社で十分に用意されているから、お腹いっぱいで学びに行かないのかもしれない。」
「プロジェクトマネジメントスキルは今後より重要になる。」
「主体的な人ほどWell-being度が高い。」

というお言葉をいただきました。
RPGのプレイヤー強化のように、現実の自分達も強化していけると良さそうですね。