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課題・背景:グループ全体のDXに向けたプロジェクトが発足
取材日:2021年5月11日
※所属・役職は取材当時のものです。
原田 パーソルグループ各社間の情報共有や連携によって、グループシナジーを創出することを目的として、2015年に「BC-RIBBON」という名刺管理システムを開発しました。社会情勢が刻々と変化する中で、セキュリティとユーザビリティの向上を達成した上で、より高度なグループ連携を可能にする機能を追加し、グループ全体のDXを進めるべく、本プロジェクトが始動しました。
岡村 複数社に声をかける中で、パーソルP&Tは圧倒的にコスト・スピードの双方で私たちの期待を超えてくる提案をしてくださいました。もちろん、安くて早ければいいというわけでは全くなく、セキュリティへの考え方や技術面も素晴らしく、安心して協業をご依頼することができました。また、同じパーソルグループ内でありながら、第三者的な立場で意見や提案をいただけたのも大きかったですね。単なる受発注の関係ではない視点で、ズバズバと本質的な部分に切り込んでくださったので、非常に勉強になりました。
原田 特に大きかったのは、「スクラム運営」というプロジェクト方式を採用している点です。本来であれば1年半かかると言われていたプロジェクトを約3ヵ月でローンチできたのも、パーソルP&Tがスクラム運営を、自信を持ってリードしてくださったおかげだと思います。最初は慣れない進め方に戸惑いもありましたが、プロジェクトを進めていくうちにチームとしての結束力が高まっていきました。
取り組み内容:スクラム運営によってチームの共有知識・相互理解を高める
岡村 本プロジェクトで採用したスクラム運営とは、営業や開発といった異なる部署同士がひとつのチームとして、課題や目的を常に共有しながらプロジェクトを進めていく方式です。これまでは営業企画が営業現場の声を吸い上げ、開発側に「何をいつまでにやってほしい」と頼む。するとエンジニアは「それはできない」とか「これならできる」などの返答を返す…といったコミュニケーションが中心でした。
原田 お互いに扱っている言語が違うので、翻訳者的な立場も必要となり、コミュニケーションスピードが遅かったり、認識のズレが生じてしまっていましたね。
岡村 営業としては「なぜできないのか」がわからない、開発としても「なぜそれが必要なのか」がわからないまま進めてしまっていたのでストレスが大きかったと思います。
原田 そこで、今回のスクラム運営では営業と開発も含めたさまざまな部署からメンバーを集め、15人ほどでワークショップを行うことから始めました。プロジェクトの課題、背景、目的、ゴールなどをひとつひとつ言語化し、共通理解を深めていきました。わからない単語があればその場で質問することで、相手の立場になって考えることができるようになり、強い信頼関係が構築されていくのを感じました。
岡村 対応すべきタスクや順序、優先順位が次々と可視化されていったので、すべてのメンバーが同じ目線に立ってプロジェクトを推進していくことができました。今まではバトンの受け渡しのような関係だったのが、一緒にやっているという意識に大きく変化していきましたね。
成果:現場の声にもスピーディに対応することで成果を生み出す
岡村 必要機能の実装後も、ユーザーである現場の営業へのアンケートを中心に細やかなコミュニケーションをとり続け、改善を繰り返しました。これまでは、その要望を開発チームに伝えるだけでしたが、スクラム運営によって開発チームと目的意識や課題背景を共有できているので、その後のやりとりも非常にスムーズでした。
原田 週に1回のチームミーティングで、現状抱えているタスクの優先順位を組み替えることで、互いの状況をリアルタイムに共有しながら効率的にアップデートしていくことができましたね。
岡村 例えば、コロナ禍で対面での顧客商談が減るのと同時に、名刺交換の機会も激減しました。オンラインで名刺交換できる機能を実装してほしいという声があがったときには、他のどの機能改修よりも高い優先度で取り組むことで、スピーディに現場の声を反映した機能をリリースすることができました。こんなふうに、新たに生じた課題に対して、今すぐ取り組むべきか、現在のタスク完了後で充分なのかといった優先順位を全員が理解した上で進めることができたのが、今回の成果につながったと思います。
原田 「前よりも使いやすくなった」とか、「名刺の読み取り精度やスピードが上がった」、「指紋だけでなく顔認証にも対応したおかげで使うシーンが増えた」などのお褒めの声を営業現場からもいただくことができました。また、定量的な成果として名刺の読み取り枚数が以前よりも格段に増えました。グループ全体でデジタルマーケティングを仕掛けていく上での母数拡大につながることなので、これは非常に大きな成果だと感じています。
岡村 スクラム運営というプロセスを含めて、パーソルホールディングス内でも先駆者的なプロジェクトとして表彰を受けました。弊社の「グループDX推進」という目標に、テクノロジーを現場に届けることに強みを持つパーソルP&Tが加わることで、チーム一丸となって成果を生み出せたことが大きかったですね。
今後の取り組み:結束力とスピードを武器に、今後新しい価値を生み出していく
原田 今後は、名刺の読み取り精度やスピード、使いやすさやセキュリティの向上といった機能のアップデートはもちろん、同じチームで新しいシステムの開発も進めていきたいと考えています。本プロジェクトは、言うなれば1を10にするような案件でしたが、0から1を生み出すようなことにも、このチーム体制で取り組んでいきたいです。
岡村 営業の生産性向上やパーソルグループとしての顧客基盤の拡大に直接的に寄与できるようなシステムをつくり、グループ全体で活用してもらうことが目標です。
具体的には、情報を蓄積・共有するだけではなく、蓄積した情報をAIなどの最新テクノロジーを用いて分析することで、営業現場へ今までになかった気づきや価値を提供できるようなシステムの構築を考えています。
原田 今後もパーソルグループのシナジーを発揮するための中枢を担うチームとして、いろいろな人を巻き込みながらプロジェクトを推進していきたいですね。