製造業では、市場の変化に素早く対応するためにデータを活用し、生産計画管理をリアルタイムに行いたいというニーズが高まっています。
従来のシステムを跨ぐデータの連携はバッチ的なやりとりがほとんどで、連携のためのアプリケーションやインターフェースの都度開発が必要で、リアルタイム性や追加の開発の負担が課題になっていました。
本コラムでは、SAPを題材に最近のデータ駆動型のビジネスのトレンドやSAP導入企業の取り組みをご説明します。
データ駆動型ビジネスのトレンド
製造業のSAPを軸にしたデータ駆動型ビジネスの最近のトレンドとして、大手企業を中心に取り組みが進んでいるのは“ERP+MES”でDXを推進するという考え方です。“ERP+MES”とは、ERPのITデータ(生産計画、実績のデータ)、MESのOTデータ(工場のデータ)をリアルタイムに統合して連携し、分析できる体制を整えるということです。
先進的な取り組みを行っている製造業では、分析したデータを研究開発、工場の最適化、生産計画の短縮、お客様の付加価値向上として活用を進めており、今後データをいかに活用するかが積極的に議論されています。データを活用する上で考慮すべきポイントとして、“データの標準化”があります。ERP、MESのデータはデータの粒度、単位が異なり、構造化データ、非構造化データが混在するためデータの調整や整理が必要になります。ERPとMESでは、対象とする管理項目は異なりますが、関連性があるためデータを標準化すれば、粒度や位置、時間を揃えて紐づけることができます。
先行企業の“ERP+MES”の一般的な取り組みの流れは以下の通りです。
1:企業に存在しているERP(ITデータ)、MES(OTデータ)に保管されているデータ把握し、必要なデータを取得できる仕組みを整備する
2:必要なデータをデジタル化して取りまとめる
3:取りまとめたデータを精緻化してマスター化する
4:共通データモデルを作る
5:必要なデータを取り出して分析をする
6:データ基盤をエンハンスし、データ活用する中で発生するニーズに対応する
上記のステップで全体像を捉え、あるべき姿から逆算してデータ活用モデルを構築、最終的にはエンハンスを繰り返すことでより企業ごとに適したデータの活用が期待できます。
ERPとMESに保管されているデータの比較
製造業の構造化/非構造化データの一例
今まではERPやMESと言えば、システム自体に備わっている機能の活用が中心でしたが、最近のトレンドとして、ERPとMESからデータを集約して、そのデータを活用しながらDX(SoI*やSoE*)の世界を目指していく動きが進んでいます。
*SoE(System of Engagement):顧客や取引先との結びつきを強化する、あるいは絆を深めることなどを目的として使われるシステム
*SoI(System of Insight):SoIは蓄積された情報の加工や分析を通じて何らかの有用な洞察(insight)を得ることを主目的とするシステム
パーソルプロセス&テクノロジーのご支援について
パーソルプロセス&テクノロジーでは、経営判断の高度化を実現するSAPによる基幹システムの導入・メンテナンスをサポートしております。
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