DXを推進させる!必要スキルと人材育成計画を徹底解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、最新デジタル技術(生成AI・IoT・ビッグデータなど)を活用し、ビジネスモデルや業務プロセスを革新する取り組みです。
近年多くの企業がDX推進に取り組んでおり、優位性の向上と新たな価値創造を目指して市場競争が激化しています。
加えて、急速な生成AIの進化によって、DXに関わるビジネスパーソンに求められるスキルも変化しています。これを踏まえて経済産業省はDXを推進するために必要なスキルを定義した「デジタルスキル標準」を策定しました。
本記事ではDXを推進するための人材育成について解説します。
目次
- 1. デジタルスキル標準とは?
- 2. DXリテラシー標準
- 3. DX推進スキル標準
- 3-1. DX推進スキル標準の5つの人材類型
- 3-2. DX推進スキル標準の活用方法
- 4. 人材育成計画の立て方
- 4-1. 目標設定
- 4-2. KPI設定
- 4-3. 外部研修への参加
- 5. まとめ
1. デジタルスキル標準とは?
DX推進に必要な人材の役割やスキルを定義した指針、それが「デジタルスキル標準」です。
デジタル技術を活用し、企業の競争力を高めることを目的とした企業の従業員を対象としています。
デジタルスキル標準は、「DXリテラシー標準」と「DX推進スキル標準」の2つの基準で構成されています。
出典:経済産業省「デジタルスキル標準」
2. DXリテラシー標準
「DXリテラシー標準」はすべてのビジネスパーソンが共通して持つべき基礎的な知識やスキルを定めたものです。この標準の目指すところは、全従業員が「DXリテラシー」を理解し、自分事として捉え、アクションを起こす姿勢を育てることです。
2-1. DXリテラシー標準の全体像
DXリテラシーは以下の4項目によって構成されています。
出典:経済産業省「デジタルスキル標準」
- 【Why】DXの背景
なぜDXが重要なのかを理解するために、DXが注目される背景となった社会・顧客・競争環境の変化に関する知識を定義しています。 - 【What】DXで活用されるデータ・技術
顧客データや市場データ・AI・ブロックチェーンなど様々なデータの中から、どのデータや技術を活用するか判断するための知識を定義しています。 - 【How】データ・技術の活用
データやデジタル技術をどのような方法で活用するか、それらを活用する際の留意点に関する知識を定義しています。 - 【マインド・スタンス】
社会変化の中で新たな価値を生み出すために、個人や組織が持つべき必要な意識・姿勢・行動を定義しています。
3. DX推進スキル標準
「DX推進スキル標準」はDXを推進するために必要な人材の役割や、習得すべき知識・スキルを示しています。それらを育成の仕組みに結びつけることで、リスキリングの促進や実践的な学びの場の創出、スキルの見える化を実現します。
3-1. DX推進スキル標準の5つの人材類型
「DX推進スキル標準」は、以下の5つの人材類型が定義されています。
出典:経済産業省「デジタルスキル標準」
3-1-1. ビジネスアーキテクト
役割
ビジネスや業務の変革を通じた目的設定を行った上で、関係者をコーディネートします。
関係者間の協働関係を構築・リードしながら、目的達成に向けたプロセスを一貫して推進させます。
ビジネスアーキテクトが行う業務は主に 戦略立案と実行関係者との関係構築、プロジェクトの進行管理などです。これらを通じて組織の改革を推進することや、新規ビジネスモデルの創出などが成果として求められます。
そのため、戦略立案やビジネスプロセスの設計といった思考能力に加え、コミュニケーションや交渉力といった対人のスキルが必要になります。
3-1-2. データサイエンティスト
役割
データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担います。
データサイエンティストの業務は主にデータ分析に不可欠なPythonやR、統計解析のスキルや、データ管理のためにSQL・NoSQLの知識を要します。
それらのデータを可視化するためにTableauやPower BIといったBIツールを活用するスキルが不可欠です。さらには最新のデジタル技術に対応していくために、機械学習の知識が求められます。
3-1-3. サイバーセキュリティ
役割
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクを評価し、その影響を抑制する対策を担います。
ネットワークセキュリティやセキュリティツール(IDS/IPSやファイアウォール)に関する知識が必要になり、これらはデジタル環境を支える基盤になります。
また、潜在的なセキュリティの脅威からITインフラやシステムのセキュリティを守るため、脅威の予測・対策を行うスキルが必要です。
3-1-4. ソフトウェアエンジニア
役割
デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・
運用を担います。
ソフトウェアエンジニアにはプログラミングスキルが不可欠であり、Java・C++・Pythonなどの言語を使いこなしてプログラム作成するほか、技術的な課題や障害が発生した際には、関係者と連携して迅速に解決する能力が重要になります。
そのため、他の開発者やステークホルダーとのコラボレーションスキルが求められます。
3-1-5. デザイナー
役割
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点などを総合的に考慮して、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それに基づいた製品・サービスのありかたのデザインを担います。
デザイナーは第一にユーザーフレンドリーなグラフィックデザインを作成する必要があります。
実務の上では、Adobe XDやSketch、Figmaなどのプロトタイピングツールの操作は必須スキルになります。
さらには制作要件のヒアリングや制作意図の伝達が必要になるため、クライアントやチームメンバーとのコミュニケーションスキルも欠かせません。
3-2. DX推進スキル標準の活用方法
ここまでデジタルスキル標準についてご紹介しました。
では、スキルや人材をどのように活用するのでしょうか。
組織から個人レベルにおいてその活用方法を紹介します。
3-2-1. 組織・企業の場合
組織や企業においては、まず社会の変化やトレンドを背景に自社のDX推進戦略を策定します。
その上で、スキル標準に基づいて自社のDX推進に必要な人材の確保に向けた施策を実行します。
教育コンテンツを提供する事業者を例に挙げると、社会の変化やトレンドを背景に、ニーズの高い教育コンテンツを提示します。それらを組織・企業・個人に向けて発信して、実務での活用や成長のためのきっかけを創出します。
参考:経済産業省「デジタルスキル標準」
3-2-2. 個人の場合
個人では、自身が所属する組織・企業のDXの方向性を加味して必要なスキル・知識を判断する指標とします。実際に行っている業務や今後のキャリアプランのイメージを描きながら、関連する研修コンテンツを受講します。
4. 人材育成計画の立て方
DXを成功に導くためには、デジタルスキル標準に対応した人材育成計画が不可欠です。
このセクションでは、人材育成計画の立て方について解説します。
4-1. 目標設定
人材育成計画を立てる際には、まず明確な目標を設定することが重要です。
組織全体のDX推進のビジョンと、それに必要なスキルセットを踏まえた上で、具体的な育成目標を決定します。
目標は、SMART(Specific, Measurable, Achievable, Relevant, Time-based)の原則に従って設定することが推奨されます。
例えば、「6ヶ月以内に全従業員がデジタルスキル標準の考え方を理解し、実務に落とし込むことができるようにする」といった具体的なゴールを設定することが大切です。
4-2. KPI設定
目標が設定されたら、その達成度を測るためのKPI(Key Performance Indicators)を設定し、評価方法を明確にします。
KPIは進捗の測定や成功の指標となるもので、定量的な評価ができる項目を選ぶことが重要です。
4-2-1. KPI設定の一例
データサイエンティストを例として最新のデジタル技術を学びたい、実務に活かせるスキルを強化したい従業員がどのようにKPIを立てるのかを以下の表に示しました。
この従業員は学習から評価までのプロセスを項目として設定し、それぞれの効果を可視化しています。
評価は定期的に実施し、フィードバックを行います。
レビュー時にKPI達成度について話し合い、必要に応じて改善策を講じることが重要です。
また、フィードバックには具体性とタイムリーさを持たせることで、従業員のモチベーションを維持します。
4-3. 外部研修への参加
外部の研修プログラムへの参加も、人材育成において効果的です。外部の専門家から最新の知識や技術を学ぶ機会を活用することで、従業員のスキルセットを強化することができます。
外部研修に参加することのメリットとしては主に、
「新しい知識と技術の習得」・「実務スキルの向上」・「ベストプラクティスの学習」の3点です。
最新のデジタル技術やトレンドを習得することで、自社のナレッジの蓄積やイノベーション促進へとつながります。また、実務で活用するデジタルツールやプラットフォームの知識の習得により、日常業務へアウトプットすることができます。
4-3-1. 外部研修におけるトレーニングコースの種類(有料版を抜粋)
4-3-2.モデルケース
ここで、上記で述べた中での一部モデルケースを紹介します。
<オンライン研修への参加>
まずは、Courseraが提供するオンラインデータサイエンスコースに参加したケースです。
社内のデータサイエンティスト育成が目的で、学習によって推薦システムのパーソナライズ度が向上し、顧客満足度が15%増加へとつながりました。
加えて、購買データの分析により新規商品推薦の精度が向上し、売上が10%増加しました。
「Coursera公式サイト」より
<ブートキャンプ研修への参加>
◆背景
参加者はデータサイエンスのスキル向上を目指して、キカガクが提供するデータサイエンスブートキャンプに参加しました。
◆成果
・アルゴリズムの精度向上
→求人マッチングアルゴリズムの精度が20%向上し、求職者の満足度も高まりました。
・データドリブンな文化の醸成
→データ分析の重要性が社内に浸透し、各部門でのデータ活用が推進されました。
「キカガク公式サイト」より
<ワークショップ・セミナーへの参加>
続いて、 ODSCが提供する「AI&Deep Learning」ワークショップに参加したケースです。
最新のAI技術とその応用例について学ぶことを主に置き、学習によってディープラーニング技術(NLPアルゴリズム)の知識を習得し、自社に導入しました。
技術の導入によりカスタマーサポートの負担を10%低減、さらにチャットボットシステムの導入により、顧客対応の迅速化に成功しました。
「ODSC公式サイト」より
5. まとめ
DXは一時的な取り組みではなく、持続的な成長を実現するための戦略的アプローチです。
適切な人材育成とスキル開発を通じて、組織全体が一丸となってDXを推進し、企業の未来を切り拓いていくことが求められます。
パーソルビジネスプロセスデザインでは、DX推進のためのご支援を実施しております。
DX人材の育成や研修など、お客様のニーズに合わせカスタマイズが可能です。
DX推進や人材育成にお悩みがありましたら、お気軽にご相談ください。