データクレンジングとは?メリットや手法、やり方をわかりやすく解説

企業にとって社内データは、マーケティング施策の立案や営業活動の効率化など、重要な意思決定を支える基盤となっています。
しかし実際には、データの重複、表記のばらつき、入力ミスなどの問題が原因で、顧客管理が非効率になったり、分析結果が正しく反映されなかったりするケースが少なくありません。
そこで役立つのが、「データクレンジング」という手法です。
データクレンジングを適切に行えば、正確な分析が可能になり、営業活動やマーケティング施策の精度も高まります。
本記事では、データクレンジングの概要や企業にとってのメリットを、実際の進め方や具体的な手法とあわせてわかりやすく解説します。
目次
- 1. データクレンジングとは
- 1-1. 名寄せとの違い
- 1-2. データが汚れる原因(ダーティデータの発生要因)
- 1-3. データクレンジングが必要な理由
- 2. データクレンジングのメリット
- 2-1. 企業全体の生産性向上につながる
- 2-2. データ分析の精度向上につながる
- 2-3. 不要なコストを削減できる
- 3. データクレンジングの実施方法
- 3-1. 人力での実施
- 3-2. 専用ツールの活用
- 3-3. データクレンジングサービスの利用
- 4. データクレンジングの手法
- 4-1. 重複データ除去
- 4-2. データの正規化(表記の統一)
- 4-3. 欠損値の処理(補完・削除)
- 4-4. データ型・単位変換
- 4-5. 異常値の除去
- 4-6. フィルタリング
- 4-7. エンコーディング(カテゴリデータの変換)
- 5. データクレンジングの進め方
- 5-1. データ活用の目的を決める
- 5-2. 保有しているデータの状況を把握する
- 5-3. クレンジングのルールを決める
- 5-4. 優先順位を決める
- 5-5. データクレンジングを実施する
- 5-6. 活用方法に応じてデータを整理する
- 5-7. 定期的にデータクレンジングを実施する
- 6. まとめ
1. データクレンジングとは
データクレンジングとは、データの品質を向上させるために、誤った情報を修正し、形式を統一する手法・プロセスのことです。
企業が保有するデータには、重複や入力ミス、表記の揺れ、欠損などの問題が含まれていることがあります。
このような不正確なデータを「ダーティデータ」と呼びます。ダーティデータがあると、データ分析の精度が低下し、売上予測の誤りや非効率なマーケティング施策につながるため注意が必要です。
データクレンジングを実施することで、正確で信頼できるデータが得られます。
その結果、顧客分析や市場予測などの精度が向上し、営業活動の効率化や無駄なマーケティングコストの削減にもつながるのです。
1-1. 名寄せとの違い
データクレンジングと混同されやすいのが「名寄せ」です。
どちらもデータの品質を向上させることを目的としていますが、作業範囲やアプローチが異なります。
データクレンジングは、データ全体の品質向上を目的とした処理です。
具体的には、入力ミスの修正や表記の統一、欠損データの補完などを実施します。
一方、名寄せは、重複データの統合を目的とした処理です。
企業や顧客のデータが複数のシステムに分散している場合、同じ顧客情報を照合し、一つの統一されたデータとして整理します。
例えば、A社の顧客リストに「山田太郎」「ヤマダタロウ」と複数の表記で登録されているとします。
これらを統合し、一つの顧客データとして扱う作業が名寄せです。
以下の記事で名寄せについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
データクレンジングはデータ活用をする上で必要!前処理や名寄せを解説
1-2. データが汚れる原因(ダーティデータの発生要因)
ダーティデータが発生する主な要因は以下の4つです。
・ヒューマンエラー データ
入力時のミスや入力ルールの不徹底により、住所や氏名の誤字、全角・半角の混在、電話番号のハイフン漏れなどが発生します。
・重複登録
同じデータが複数登録されてしまっている状態です。
部署ごとにデータを管理していたり、異なるシステムで個別にデータを管理している場合に生じます。
・表記ゆれ
同じ意味のデータを異なる表記で登録してしまっている状態です。
「株式会社」と「(株)」のような法人格の表記違いや、住所の数字を全角と半角で登録しているケースなどがあります。
・情報の欠如
必要なデータが入力されずに空欄のままになっている状態です。
データに欠損があると、正確な分析や意思決定が難しくなります。
これらの原因を理解し、事前に防ぐ仕組みを整えることが重要です。
1-3. データクレンジングが必要な理由
データクレンジングは、企業の戦略面・業務面の両方で重要な役割を果たします。
企業が保有するデータには、不正確なものや不完全なもの、整合性が取れていないものが多く含まれています。このようなデータを放置していると、意思決定の誤りや業務の非効率化、不要なコストの増加など、さまざまな問題が生じます。
こうしたリスクを回避し、信頼できるデータをもとに効果的な施策や意思決定を行うためにも、データクレンジングの実施は欠かせません。
2. データクレンジングのメリット
データクレンジングを行うことで、企業はさまざまなメリットを得られます。
特に注目すべきメリットは、以下の3つです。
● 企業全体の生産性向上につながる
● データ分析の精度向上につながる
● 不要なコストを削減できる
それぞれのメリットについて、詳しく解説します。
2-1. 企業全体の生産性向上につながる
データが整理されていれば、必要な情報を探す際に一度の検索で正確な情報を取得できるようになります。そのため、情報確認の二度手間や重複した作業を削減可能です。
また、データが統一されていると部署間や拠点間での情報共有も容易になり、社内での無駄なコミュニケーションを減らせます。
このように、データクレンジングは業務効率を改善し、結果的に企業全体の生産性向上に繋がるのです。
2-2. データ分析の精度向上につながる
データクレンジングによってデータが正確になることで、分析結果の精度が大きく向上します。
売上データに欠損や重複があると実態と異なる分析結果になり、間違った販売戦略を立ててしまう恐れがあります。データクレンジングでこうした不備を解消すると、顧客の購買傾向や市場動向を正しく把握でき、実効性の高いマーケティング施策や販売計画を立てられます。
また、正確なデータをもとに精度の高い需要予測や経営判断も可能になります。
結果として、企業の競争力向上につながるでしょう。
2-3. 不要なコストを削減できる
データクレンジングを実施することで、企業はさまざまな不要なコストを削減できます。
例えば、顧客データの重複や不備を整理することで、無駄なDMの送付や、ターゲット外への不要な広告配信が減り、郵送費や広告費を抑えることが可能です。
また、データが整理されることによって同一顧客に対する多重アプローチが減少します。
これにより、業務効率の改善だけでなく、「同じ内容のDMや営業メールが何度も届く」といった事態を回避し、顧客の信頼低下を予防できます。
さらに、不要なデータを削除すれば、サーバーやストレージにかかる維持費も節約できます。
3. データクレンジングの実施方法
データクレンジングを実施する方法にはいくつかの選択肢があります。
企業の規模やデータ量、利用可能なリソースによって、最適な方法は異なるため、自社に合った方法を選択することが重要です。 主に以下の3つの方法があります。
● 人力での実施
● 専用ツールの活用
● データクレンジングサービスの利用
ここからは、それぞれの方法の特徴やメリット・デメリットを解説します。
3-1. 人力での実施
人力でのデータクレンジングとは、担当者がExcelやGoogleスプレッドシートなどを活用し、関数や手作業で誤りを確認・修正する方法です。
Excel関数を使えば、入力ミスや重複データを効率的に検出できますが、最終的な確認作業は人の目に頼ることになります。そのため、データ量が多い場合には時間がかかり、確認漏れや新たな入力ミスが起こる可能性もあります。
この方法は、扱うデータが少なく、緊急のデータ整理や一時的な対応で済むケースに向いています。
3-2. 専用ツールの活用
扱うデータが大きい場合は、データクレンジング専用ツールがおすすめです。
重複データの削除や表記の統一を迅速かつ正確に行えるため、処理スピードが格段に速くなり、人的ミスの発生も抑えられます。
ただし、ツール導入時には初期費用や月額費用などが発生します。
それでも、手作業にかかる時間やコスト削減、データ精度向上の効果を考えると、十分な投資効果が期待できるでしょう。
3-3. データクレンジングサービスの利用
社内にデータクレンジングの専門知識や人材が不足している場合は、外部の専門サービスを活用すると効果的です。
特に、大量の顧客データを抱えていたり、複数のシステムに散在する複雑なデータを整理したりする場合に適しています。
専門のデータアナリストやコンサルタントが、データの種類や用途に応じて最適な処理方法を設定し、質の高いデータへ整備します。また、データ処理にとどまらず、分析基盤の構築や業務改善のための戦略的アドバイスも受けられるため、自社のデータ活用を効率的に進められるでしょう。
4. データクレンジングの手法
データクレンジングにはさまざまな手法があります。代表的な手法が以下の7つです。
● 重複データ除去
● データの正規化(表記の統一)
● 欠損値の処理(補完・削除)
● データ型・単位変換
● 異常値の除去
● フィルタリング
● エンコーディング(カテゴリデータの変換)
それぞれ解説します。
4-1. 重複データ除去
重複データ除去とは、同じ内容のデータを統合または削除し、データの一貫性や整合性を確保する処理のことです。
例えば、同じ顧客が異なるIDで二重登録されているケースでは、氏名や住所、電話番号などを照合して1つのデータに統合します。
4-2. データの正規化(表記の統一)
データの正規化(表記の統一)とは、ばらつきのある書式や表記を統一することで、データの使いやすさや分析精度を高める処理のことです。
企業では担当者によって入力形式が異なったり、複数のシステム間でデータの表記が揺れてしまったりすることがあります。そのため、以下のような方法でデータの表記を統一します。
● 住所を「都道府県」「市区町村」「番地」ごとに分割して揃える
● 「株式会社」と「(株)」など、会社名の表記を統一する
● 全角・半角やカタカナ・ローマ字などの表記を統一する
4-3. 欠損値の処理(補完・削除)
欠損値の処理(補完・削除)とは、データに空欄や不足がある場合に、適切な値を埋めたり、不完全なデータを削除したりして、分析結果のズレを防ぐ処理のことです。
例えば、顧客データで郵便番号が欠けている場合、住所情報など他のデータを参照して正しい値を補完します。他の情報から正確な補完が難しく、分析精度を損なうリスクがある場合には、そのデータ自体を削除する場合もあります。
4-4. データ型・単位変換
データ型・単位変換とは、データが本来あるべき形式で統一されるように整える処理のことです。
異なるフォーマットや単位が混在していると、データ処理や分析がうまくできないため、以下のような変換が必要です。
● 数値データの全角・半角を統一する
● 重量を「キログラム」または「グラム」に統一する
● 日付フォーマットを「YYYY/MM/DD」や「YYYY-MM-DD」に統一する
4-5. 異常値の除去
異常値の除去とは、論理的にあり得ないデータや極端に外れた数値を検出し、修正または削除する処理です。
例えば、年齢データに「200歳」や「-5歳」のような誤入力がある場合、適切な値に修正するか削除します。また、売上データに「通常の何倍もある大きな数値」や「極端に小さい負の数値」などが含まれる場合、入力ミスや異常な取引を疑い、確認・修正が必要です。
4-6. フィルタリング
フィルタリングとは、分析の目的に合わせて、必要なデータだけを抽出する処理のことです。
例えば、特定地域の顧客情報だけを分析したい場合に、該当エリアのデータのみを抽出します。
また、期間や商品カテゴリなど特定の条件でデータを絞り込めば、不要なデータを除外し、分析の対象範囲を明確にできます。
4-7. エンコーディング(カテゴリデータの変換)
エンコーディングとは、質的データ(カテゴリデータ)を量的データ(数値データ)に変換し、統計分析や機械学習で扱いやすくする処理のことです。これにより、演算や比較が可能になり、データの分析効率が向上します。
例えば、アンケート回答の「はい」を1、「いいえ」を0と数値化することで、コンピュータがデータを分析できるようになります。具体的には、「はい」と「いいえ」の割合を簡単に算出したり、機械学習モデルにデータを取り込んだりすることが可能です。
5. データクレンジングの進め方
データクレンジングを効果的に進めるには、事前の準備や計画が大切です。
場当たり的に作業を行うと、手戻りや抜け漏れが発生し、十分な効果を得られないためです。
データクレンジングを成功させるためには、以下の流れで進めるのが一般的です。
ここからは、各ステップで何を行うのか、具体的なポイントを解説していきます。
5-1. データ活用の目的を決める
データクレンジングを行う際には、「データを何に使うのか」という活用目的を明確に設定することが重要です。
目的が曖昧なままデータの収集・整理を進めると、本当に必要なデータが特定できず、無駄な作業が増えたり、必要なデータが足りなかったりといった問題が生じます。
例えば、顧客分析を目的にする場合は、購買履歴や顧客属性のデータ整備が優先されます。
一方、在庫管理の精度を高める目的ならば、商品の出荷履歴や在庫情報の整合性を重視する必要があるでしょう。
目的を明確に設定することで、データ整理の方向性が決まり、効率的で効果的なデータ運用が可能となります。
5-2. 保有しているデータの状況を把握する
保有しているデータの状況を把握するために、自社が持つデータ資産を洗い出します。
まず、各システムや部署にどのようなデータが存在しているのかを確認します。
次に、それぞれのデータがどのような問題を抱えているかを調べましょう。
具体的には、欠損値の有無、表記のばらつき、値の整合性や一貫性、重複の状況などをチェックします。
これらの作業により、どのデータを優先してクレンジングすべきかが明確になります。
5-3. クレンジングのルールを決める
クレンジングを行う前に、処理する際のルールや基準を明確に設定します。
ルールが曖昧だと、データの処理方法が担当者ごとに異なり、後から統一のために再作業が発生するリスクがあります。あらかじめ、以下のような具体的な基準を決めておきましょう。
● 全角数字は半角に変換する
● 住所は「都道府県」「市区町村」などに分割して管理する
● 氏名カナはすべて全角カタカナに統一する
また、実際にクレンジングを始める前には、小規模なデータを使って事前テストを行い、ルールが適切に機能するかを確認します。事前の検証でトラブルを防ぎ、実作業を円滑に進められます。
5-4. 優先順位を決める
社内のデータすべてをクレンジングすることは現実的ではありません。
そのため、ビジネスへの影響が大きいデータや、クレンジングによる効果が高いデータから優先して処理することが重要です。
例えば、売上データや顧客情報など経営判断に直接関わるデータは優先順位が高くなります。
また、重複が多く、簡単な処理で大幅に品質が改善されるデータから手をつけるのも効率的です。
優先順位を明確にすることで、効果的かつ効率的にデータクレンジングを進められます。
5-5. データクレンジングを実施する
データクレンジングを実施する際は、スケジュールを策定して計画的に進めることが重要です。
基本的には以下の手順で実施します。
1. バックアップ取得:処理前のデータを保存する
2. 事前テスト:少量データで動作を検証する
3. 本番処理:決定したルールで一括処理する
4. 結果の検証:処理結果を確認し、必要に応じて調整する
5-6. 活用方法に応じてデータを整理する
クレンジングしたデータは、用途に合わせて整理すると、より活用しやすくなります。
例えば、マーケティング目的なら顧客属性や購買履歴をターゲット別に分類したリストに整理します。営業活動なら取引履歴や優先度に応じて顧客リストを整理しておくことで、実際の営業活動をスムーズに進められるでしょう。
データの利用目的に沿った整理を行うことで、クレンジング後のデータを最大限に活かすことができます。
5-7. 定期的にデータクレンジングを実施する
データクレンジングは、一度実施すれば完了というものではありません。
日々データが増加・更新されると、重複や表記ゆれ、欠損などが発生する可能性があります。
そのため、継続的にデータを見直し、必要に応じてクレンジングを実施しましょう。
定期的なメンテナンスが、データを継続的に活用するためのポイントです。
6. まとめ
データクレンジングを行うことで、重複や入力ミス、欠損などの問題を解決できるため、正確で信頼できるデータが手に入ります。
その結果、正しい顧客数の把握や精度の高い売上予測などが可能になり、正確な意思決定が可能となるでしょう。
自社だけで処理するのが難しい場合は、専用ツールや外部のクレンジングサービスを利用することがおすすめです。
専門家にデータクレンジングを任せることで、担当者の負担を軽減し、短時間で効率よくデータ品質を高められます。
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