企業と複業②

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複業促進アドバイザーの成瀬 岳人です。

前回のコラム「企業と複業①」では、企業が複業に取り組むメリットについて解説しました。今回は、企業が複業に取り組まざるを得ない理由、社会的な必要性について説明します。

■社会的必要性①:労働人口減少・少子高齢化

様々なデータが示す通り、次の10年である2030年に向けて日本の総人口の減少が顕著になり、合わせて少子高齢化率も上がり続けていきます。いよいよ、過去数十年間と同じ考え方では、労働市場が成立しない時代が本格的に始まります。

(出所:平成30年版 少子化社会対策白書)

https://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2018/30pdfgaiyoh/pdf/s1-1.pdf

この労働人口減少・少子高齢化社会において、社員を囲い込む経営自体に無理があります。働き手の流動化、いや柔軟化を進め、様々な経験や才能を循環させる社会を企業が中心となって生み出していかなければなりません。この社会的背景は、企業の自発的な変化以上に、国・政治からの要請という形で、企業は対応を求められていくことになるはずです。その要請の一つが、「副業・兼業を原則認めること」という内容のガイドラインが随時更新されています。

(参考:厚生労働省 副業・兼業のガイドライン)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000192844.pdf

■社会的必要性②:働く個人の価値観の変化

2点目は、働く個人の価値観の変化です。正確な最新の数字は出ていませんが、副業人口は年々増加しています。そして、新型コロナの影響で、副業人口・潜在的な希望者数は急速に増加傾向にあります。複数の副業支援サービスへの登録者は急増しています。

(出所:PR TIMES 2020年4月シューマツワーカー社リリース)

複業を始める個人が増加している理由は、「業務の休業・縮小によって時間ができた」、「テレワークが標準化され、時間ができた」、「将来への不安から」などが理由です。2020年代は、世代ごとに以下の理由から複業者はより増加していくと考えられます。

・20代(当たり前の世代)

今の20代、特にこれから社会に出てくる20代にとっては「複業」は特別なものではなく、既に複業している状態で会社に所属していく20代は増えていくと思われます。

・30代(挟まれる世代)

ここは狭間の世代になるかもしれません。本業の最前線で中心になる世代でありながら、後輩世代、そして後述する先輩世代が複業をし始めていく中、本業に専念する人もいれば、複業を始める人も出てくるでしょう。

・40代(チャレンジする世代)

私もこの世代ですが、傾向的には培った経験値や人脈を活かして「複業」がしやすい世代です。また、将来を見据えた時にキャリア選択肢を広げる目的で複業に取り組む意識も高い世代です。

・50代以上(やらざるを得ない世代)

人生100年時代や、70歳まで働く、などが現実のものとなっている中、50代以上の世代は自分たちの意思以外の必要性から、複業に取り組むことになると考えられます。自分たちの意思以外、とは、収入の問題や会社からの要請などが考えられます。

このように、ここからの10年は世代ごとに背景が異なりますが、「複業(副業)」を考え、実際に取り組み始める人が増えることは間違いありません。

■社会的必要性③:事業変革の加速

今に始まったことではありませんが、これからさらにテクノロジーやグローバル環境の変化に晒され、企業は事業環境を変革させ続けていくことが求められます。2010年代は、振り返ってみれば「モバイルデバイス進化」、「クラウド標準化」、「災害への対応」、「働き方改革への対応」といった環境変化が、産業に大きな影響を及ぼしました。奇しくも新型コロナの影響から幕を開けた2020年代は、今までの変革の流れを引き継ぎつつ、さらに加速するデジタル化、そしてアフターコロナの価値観変化による影響が大きな社会環境変化を起こしていくはずです。象徴的なキーワードが「SDGs(Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標))」です。消費し続ける社会から、持続可能性を重視する社会へ、そして新型コロナ影響の教訓を活かし、様々な可能性への対処やチャレンジへの取り組みが加速するでしょう。そうなった時、ひとつの組織でこれだけの急速な変革に対応していくことは現実的ではないため、短期間で大きな変革に適応すべく、多様な経験や視点を活かすことが不可欠になります。この時、複業は企業にとって2つの側面を持ちます。一つは「自社人材の外部人材化」、もう一つが「外部の複業人材の活用」です。

様々な社会的変化が、企業、そして働く個人に「複業」という選択肢を求める要因を強めていきます。私が提言したいのは、この状況の中で「単なる副業許可の制度」をつくるだけでは不十分だということです。テレワークの時もそうでした。10年前、私がテレワーク普及に取り組み始めた頃、その働き方は「事情のある社員のための福利厚生制度」でした。結果として、その制度は存在していても利用されていない、利用している人は特別扱い、というものでした。しかし、働き方改革のトレンドの中で、テレワークは「生産性向上」のための働き方の選択肢となり、新型コロナの影響を受けて「BCP(事業継続計画)対策」のための有効手段となり、今や標準的な働き方になろうとしています。テレワークを経営戦略として取り組んだ企業は、随分前から、その本質的な効果を経営環境に実装していました。 複業も同じことが起きると考えています。

「仕方なく認める」のか?

「戦略的に促進する」のか?

どちらの道を選ぶかによって、企業が複業を導入することで得られるものが変わってくるはずです。

(文/成瀬岳人)

<執筆者プロフィール>
成瀬 岳人
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
ワークスイッチ事業部 事業開発統括部 部長
事業構想士(MPD)/総務省委嘱テレワークマネージャー

<略歴>
業務コンサルタントとして複数プロジェクトに従事した後、ワークスタイル・コンサルティングサービスを立ち上げ、複数社の労働時間改善やテレワーク導入を支援。
また、国や自治体のテレワーク普及推進事業の企画・運営責任を担う。2020年4月より、新規事業開発部門の責任者に着任。企業向けの複業促進事業の立ち上げを指揮。
2017年より、複業で総務省テレワークマネージャーとしても活動。
著書に『組織力を高める テレワーク時代の新マネジメント』(日経BP)

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