コラム 人事労務

看護休暇はどんな制度?取得条件から時間や給与の定め方まで徹底解説

人事労務

近年、子どもを育てつつ、仕事を続ける人が増えてきました。しかし、幼い子どもは急な発熱などで体調を崩しやすいため、仕事中も子どもの体調が気になってしまう人が多いでしょう。

看護休暇は、幼い子どもを持つ人の仕事と子育てを支援するための制度です。ワークライフバランスの実現を目指す経営者や労務担当者にとっては、子育てと仕事の両立を支援する看護休暇への理解は欠かせません。

この記事では、看護休暇とはどのような制度であるのか、について解説します。さらに、看護休暇の取得条件や制度設定における注意点、国から受給できる助成金制度についても紹介するため、制度の取り扱いについて悩んでいる人は、ぜひご覧ください。

1.看護休暇とは?

「看護休暇」とは、労働者の子どもが病気やケガになった時に、取得できる育児・介護休業法で定められた法定休暇です。そのため、付与条件に該当する労働者から看護休暇取得の申し出があった場合は、休暇を付与しなければなりません。

看護休暇が導入された背景には、子育てと仕事の両立を進める社会からの要請があります。幼い子どもは急な発熱などで体調を崩しやすく、子どもが体調を崩すたびに親は看護しなければなりません。体調を崩しやすい幼い子どもを持つ親を支援する制度として、看護休暇が導入されました。

看護休暇では、病気やケガの看護以外に、子どもの予防接種や健康診断の付き添いを目的として、労働者は休暇を取得できます。ただし、看護休暇で対象となる子どもの条件は、小学校就学までの子どもです。

看護休暇に類似した制度に「介護休暇」と呼ばれる制度があります。介護休暇は、看護休暇に比べて条件が広く、労働者の配偶者・子ども・実父母・配偶者の父母までが対象範囲です。

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2.看護休暇の取得条件

看護休暇の取得は、小学校就学前の子どもを養育する労働者の権利です。そのため、労働者が条件を満たしている場合、企業側は休暇の付与を拒否できません。

また、看護休暇の取得は緊急を要することが多いため、当日での休暇取得が可能です。事前に休暇の取得事由発生を予測できないため、電話での口頭による看護休暇取得の申請が行えます。必要な手続きや診断書の提出は、後日出社後に行うことが一般的です。
また、年次有給休暇とは異なり、看護休暇については企業側の時季変更権はありません。

ここでは、看護休暇制度における対象となる労働者の条件について解説します。

2-1.ほぼ全ての労働者が対象

看護休暇の対象者は、小学校就学前の子どもがいる労働者です。正社員に限らず、契約社員やパート・アルバイトも制度の対象であり、ほとんどすべての労働者が対象となります。
配偶者が専業主婦(夫)であっても、看護休暇を取得することが可能です。ただし、下記の場合は、看護休暇の対象外となります。

  • ①日雇い労働者
  • ②1週間あたりの所定労働日数が2日以下の労働者(労使協定による)
  • ③雇用期間が6ヶ月間に満たない労働者(労使協定による)

企業と労働者の過半数を代表する者との間で協定を結ぶことにより、所定労働日数が週2日以下の労働者や入社後半年未満の労働者を結婚休暇の対象から除外できます。

また、企業が独自で看護休暇を育児・介護休業法の規定よりも、拡大することが可能です。多くの企業で、子どもが小学校就学以降も一定の年齢までは、看護休暇の取得を認めています。法律の規定よりも充実した看護休暇制度を用意することは、労働者の子育てと仕事の両立を一層図る上で効果的です。

3.看護休暇の時間や給与の定め方

看護休暇の時間や給与の定め方は、企業によって様々です。無給の場合は、有給休暇を優先的に取得しているケースも多いでしょう。
有給の場合は、独自の看護休暇導入によって得られる助成金などを充当し、企業側の負担を少なくすることが可能です。有給か無給かは、企業に対する福利厚生の満足度に影響します。

看護休暇を労働者に浸透させるためには、労働者が入社する時に制度の内容について詳しく説明することが大切です。労働者と企業の間で看護休暇について理解を深め、適切に活用できるようにしましょう。

3-1.1日や時間単位など自由に定める

看護休暇の取得日数は、小学校就学前の子ども1人につき1年間に最大5日です。ただし、2人以上の場合は、1年間に最大10日が限度となります。子どもの人数や休暇対象の詳細は、下記の通りです。

  • ①就学前の子どもが2人の場合は、1年間に10日取得可能
  • ②子どもが3人以上である場合も、1年間に10日が限度
  • ③子どもが複数人いる場合は、1人につき5日ではなく、同じ子どもで10日取得することも可能

通常は、4月から翌年3月までを1年間と区切ることが多いですが、1月から12月までなど柔軟に対応することが可能です。しかし、繁忙期などを理由に看護休暇取得の可否は調整できず、企業側の時季変更権はありません。

以前、看護休暇は1日単位でしか取得できませんでした。しかし、病院への付き添いなどは、数時間で済む場合があります。そのため、平成29年1月の法改正では、半日での看護休暇取得が認められました。

また、企業判断で時間単位の看護休暇取得も行えます。ただし、就業時間によっては、半日単位・時間単位で取得できる労働者の対象が異なる点に注意しましょう。

半日単位での取得が選択可能 1日の所定労働時間が4時間以上の労働者
1日単位での取得のみ 1日の所定労働時間が4時間以下の労働者

3-2.有給か無給のどちらかを選択する

看護休暇を取得している間の給与について、法律上は規定が設けられていないため、有給・無給のどちらでも問題ありません。しかし、看護休暇は育児・介護休業法により定められた休暇であるため、休暇を取得した労働者に対して、不利な扱いを行うことは禁止されています。

看護休暇における給与の取り扱いに関する注意点は、以下の通りです。

  • ①有給・無給の扱いについては、企業の判断で決定することが可能
  • ②就業規則に明確に記載し、企業・労働者双方の同意が必要
  • ③無給にする場合、「通常の欠勤」と区別しておくことが必要
  • ④看護休暇の取得によって、勤務しなかった日数を超えて給与を減額したり、賞与や昇給で不利益な算定を行ったりすることは禁止
  • ⑤給与規定に査定対象とはならない旨の規定を定めておくことが必要

4.看護休暇を導入すると国からの助成金が受けられる

労働者の子育てと仕事の両立を積極的に支援する企業は、国からの助成金を受けることが可能です。
育児・介護休業法の定める期間よりも多くの看護休暇を付与することで、両立支援等助成金制度から「育児休業等支援コース・職場復帰後支援」による助成金が受給できます。

育児休業等支援コース・職場復帰後支援による助成金の詳しい受給条件は、次の通りです。

①育児・介護休業法の定めを上回る「看護休暇制度」もしくは「保育サービス費用補助制度」を導入している
②育児休業取得者が1ヶ月以上の育児休業から復帰した後の6ヶ月以内において、導入した制度で、以下の実績がある

  • 看護休暇制度:20時間以上の取得
  • 保育サービス費用補助制度:3万円以上の補助

育児休業等支援コース・職場復帰後支援により受給できる助成金の金額は次の通りです。

制度導入に対して 28.5万円<36万円>の支給
制度利用に対して 1,000円<1,200円>×時間が支給
人数 一企業あたり3年以内で、育児休業から復帰した労働者5名まで
時間 一企業あたり上限200時間<240時間>

※<>内の金額は、生産性向上が認められた場合に適用されます。

ただし、育児・介護休業法の定めを超える看護休暇制度を導入しただけでは、助成金は受給できません。助成金を受給するためには、受給条件に記載した制度の利用実績が必要です。

ワークライフバランスの意義と取り組み

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まとめ

看護休暇は小学校就学前の子どもを育てる労働者が利用できる、育児・介護休業法に定められた法定休暇制度です。正社員だけではなくパート・アルバイトも対象者となります。年次有給休暇とは異なり、企業側に時季変更権はありません。

看護休暇中における労働者の給与については、企業が有給・無給を選択できます。ただし、通常の欠勤とは区別しなければなりません。また、休暇取得者への不利益な取り扱いは禁止されています。

法律の定めを上回る看護休暇制度を導入することで、国から助成金を受給することが可能です。看護休暇の趣旨を理解し、労働者のワークライフバランスを実現することで、企業の生産性を高めましょう。

ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
ワークライフバランスとは?今だから知りたい意義と取り組み

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