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ダイバーシティ(多様性)推進のメリット・デメリット・問題点とは?

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ダイバーシティ(Diversity)とは、多様性を意味し、企業経営においては、多様性のある人材を活用して企業の競争力の向上を目指すことという意味で使われます。ダイバーシティを経営に取り入れることは、企業の経営者・従業員共に大きなメリットがあります。しかし、ダイバーシティを推進するためには、新しい社内制度の整備や社員教育といったプロセスが欠かせません。
当記事では、ダイバーシティを推進するメリットや注意点、企業の事例をご紹介します。

1. ダイバーシティとは多様性のこと

ダイバーシティとは多様性を意味し、年齢や性別、価値観、人種、宗教などが異なるさまざまな属性の人が共存している状態を指します。1960年代のアメリカで誕生したとされ、日本では2000年頃から注目され始めました。
元々は、雇用機会均等や、人種問題の解消の際に使われていましたが、昨今では経済のグローバル化の進展、労働力不足、労働者の意識の変化などで多様な人材の活用が必要になり、新たにダイバーシティは重要視されています。

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1-1. ダイバーシティの2つの種類

ダイバーシティは異なる属性の人々が共存する状態ですが、その種類には2つの考え方があります。

<ダイバーシティの種類>

表層的ダイバーシティ
表層的ダイバーシティは、年齢や性別、体格、人種、国籍、障害など、外面的に判断しやすい多様性を指します。

深層的ダイバーシティ
深層的ダイバーシティは、表層的ダイバーシティに対し、外面から判断しにくい内面的な多様性を指します。性格や価値観、嗜好、宗教、性的指向などがこれにあたります。

 

表層的ダイバーシティは比較的わかりやすく、配慮もしやすいものですが、深層的ダイバーシティやニューロダイバーシティなどは、一見してわかるものではありません。そのような、目に見えないダイバーシティをどう理解し、活用するかが重要です。

1-2. ダイバーシティとインクルージョンの違い

「ダイバーシティ&インクルージョン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ダイバーシティが「多様性が受容されている状態」を指すのに対し、インクルージョンは「違いが尊重され個々が活躍している状態」を指します。つまり、ダイバーシティで多様な人材を受け入れ、インクルージョンで活用するということです。
インクルージョンの前提にダイバーシティがあるため、この2つは不可分とされ、並んで語られることが多いです。

2. ダイバーシティが重要視される背景

なぜダイバーシティが注目され、取り入れることで企業にも従業員にもメリットがあるとされるのでしょうか。ダイバーシティが重要視される背景をご紹介します。

2-1. 労働力人口の減少と人口構造の変化

日本は少子高齢化が進み、労働力人口は年々減少しています。将来の働き手となる若い世代の絶対数が減少していることから、これまでどおりの人材採用や人材育成の方法では、人材の確保は難しいでしょう。企業活動を維持するためには、年齢や性別を問わず、多様な人材の活用が不可欠になっています。

2-2. 経済のグローバル化の進展

ダイバーシティが重要視される理由のひとつが、経済のグローバル化です。国境を越えた取引や、企業の海外進出が進んだことで、海外の文化や言語に対応できる人材が求められるようになりました。
さらに、そういった環境では従来の日本市場とは違った経営戦略が求められ、多種多様なバックグラウンドを持つ人材の活用が必要になっています。

2-3. 働き方とその価値観の変化

労働者の働き方やキャリアの考え方も変化し、仕事だけでなくワークライフバランスの充実を求めたり、より良い環境や待遇を求めて転職したりすることが一般的になりました。終身雇用の慣例は崩れつつあり、人材確保のためには多様な人材の活用が不可欠です。
また、働き方改革が進み、時短勤務やテレワーク、フレックスタイム制など、多様な働き方を実現するためにも、ダイバーシティが重要視されています。

ワークライフバランスについては、下記の記事もご覧ください。
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3. ダイバーシティの推進で企業が得られるメリットは?

企業経営におけるダイバーシティの推進とは、社員一人ひとりの個性を尊重して、働きやすい体制を作ることです。しかし、ダイバーシティは社員の働きやすさのためで、経営側には利益がないという考えは正しくありません。

ダイバーシティを推進することで、企業は3つのメリットを得ることができます。

3-1.人材確保につながる

従来の日本企業は1日8時間で週5日、終身雇用制という雇用形態が一般的でした。社員は会社からの異動・転勤・出向の辞令にも反対できないなど、日本人の働き方は会社に強く束縛される性質を持っています。これでは仕事と育児・介護を両立させたい、ワークライフバランスを重視したいといった方の雇用は望めません。

ダイバーシティを推進することで、社員が働きやすい労働環境を整えている企業と認知されます。求職者にとって魅力的な職場となり、多様な人材が応募することになるでしょう。応募母数も増えるため、企業は優れた人材を確保しやすくなります。

3-2.新しいアイデアが生まれやすくなる

経歴や性格が同じような人材の集まりでは、革新的・創造的な発想は生まれにくいものです。その点、ダイバーシティを推進することにより、年齢・性別・人種・価値観の異なる人材が企業に多く集まります。各人が異なる視点を持っているため、新しいアイデアが生まれやすくなる点が、2つ目のメリットです。

多様な人材が集まることで、一人の出した案を他の一人が膨らませる、さらに別の人間がブラッシュアップする、といった発展性を持つことができます。進めているプロジェクトが壁にぶつかったときも、さまざまな意見を取り入れることで早期に解決することが期待できます。

3-3.企業の評価が上がる

ダイバーシティを推進することでのメリットは、社内の風通しや仕事への取り組み方が改善されるだけではありません。社員の個性を重視する企業風土づくりを行っている、と社外にアピールすることで、企業のイメージアップを図ることができます。

取引先としても、相手企業がダイバーシティを推進しているかどうかは重大な関心事です。社員がすぐ辞めてしまって担当者がコロコロ変わる企業より、長く働く社員が担当者となって密な関係を保てる企業のほうが、取引先には好印象となります。

4. ダイバーシティの課題

ダイバーシティを経営に取り入れることでさまざまなメリットがありますが、そのためには課題もあります。ダイバーシティの課題として、下記のようなものが挙げられます。

4-1. 無意識の差別や偏見

ダイバーシティを正しく理解し、意識改革できていなければ、無意識の差別や偏見(アンコンシャスバイアス)が生まれることがあります。「外国人は自己主張が強い」「年下に敬語を使う必要はない」「学歴があるから仕事ができる」などが挙げられるでしょう。
必ずしも悪いことではありませんが、傷ついたり我慢したりしている人がいれば、ダイバーシティとはいえません。無意識なため、差別や偏見に気づくことが難しいという側面もあります。

4-2. 価値観の違いによる対立

多様な価値観の人材が共存していることで、軋轢や対立が生まれることがあります。対立のすべてが悪いものではありませんが、場合によっては業務を進める上での障害となることもあるでしょう。

4-3. コミュニケーションの難航

さまざまな属性の人材が存在しているだけではダイバーシティとはいえず、互いに影響し合ってこそ、そのメリットが得られます。
ただし、国籍・人種・第一言語が違う人材が共存することによって、コミュニケーションが難航することがあるでしょう。

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5. ダイバーシティの推進に取り組む際の注意点

前述のように、ダイバーシティを推進することは、企業にとってメリットばかりではありません。人材が多様化することで社内のチームワークが低下したり、情報伝達の齟齬から生産性が落ちたりといったリスクもあります。事前準備なしに導入すれば、企業の経営パフォーマンス低下につながることがあるため注意が必要です。

ダイバーシティの推進は、組織のトップによる決定だけでなく、すべての社員が理解して、一丸となって取り組むことが必要です。そのために経営側が行うべきことを見てみましょう。

5-1. 社員に対するダイバーシティの教育

社員に向けてダイバーシティについて教育し、意識改革を図ることは必須のプロセスです。企業の最前線で働いている従業員は、ダイバーシティによって自分たちの働き方がどう変わるのか、懸念を抱いていることがあります。説明不足のまま進めると、軋轢や差別といったトラブルの元になりかねません。
ダイバーシティの推進を検討している段階から、積極的に社員教育の場を設けるようにしてください。多様な人材が入ってくることで、人事制度がどのように変わるのかについても説明する必要があります。

5-2. 社員同士のコミュニケーションがとりやすい環境の整備

ダイバーシティを推進する目的は多様な人材の能力を引き出すことですが、それだけに意見の相違は常に起こることとなります。意見の衝突が新たな発想・考え方へと昇華されればよいものの、人間関係の火種となる可能性も少なくありません。社員の積極的なコミュニケーションを促進するために、談話室の設置やミーティング、レクリエーションの開催などを行う必要があります。

5-3. 人材の個性に合わせた働き方ができる職場環境の整備

ダイバーシティを推進して経営に活かすには、集めた人材の個性を把握しなくてはなりません。その人材はどのような働き方を望んでいるのかを知り、能力を最大限に発揮できるように職場環境の整備を行いましょう。

例えば、育児中の社員は、仕事と生活のバランスがとりづらい傾向があります。育児休業制度を整備するだけでなく、短時間勤務や在宅勤務ができる環境が必要です。スキルアップを望む社員には、資格取得のための費用支援制度やセミナー・勉強会といった研修制度を整えると良いでしょう。

在宅勤務については以下の記事もご覧ください。
在宅勤務が企業に与えるメリットは?デメリットの解消法も紹介

6. 経済産業省が作成した「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」

経済産業省は2017年3月に、企業がダイバーシティを推進するために必要な7つのアクションを表した「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」を発表しました。どのようにダイバーシティを推進していくべきか迷った際は、参考にしてみてください。

<実践のための7つのアクション>

(1)経営戦略への組み込み
経営トップが、ダイバーシティが経営戦略に不可欠であること(ダイバーシティ・ポリシー)を明確にし、KPI・ロードマップを策定するとともに、自らの責任で取組をリードする。

(2)推進体制の構築
ダイバーシティの取組を全社的・継続的に進めるために、推進体制を構築し、経営トップが実行に責任を持つ。

(3)ガバナンスの改革
構成員のジェンダーや国際性の面を含む多様性の確保により取締役会の監督機能を高め、取締役会がダイバーシティ経営の取組を適切に監督する。

(4)全社的な環境・ルールの整備
属性に関わらず活躍できる人事制度の見直し、働き方改革を実行する。

(5)管理職の行動・意識改革
従業員の多様性を活かせるマネージャーを育成する。

(6)従業員の行動・意識改革
多様なキャリアパスを構築し、従業員一人ひとりが自律的に行動できるよう、キャリアオーナーシップを育成する。

(7)労働市場・資本市場への情報開示と対話
一貫した人材戦略を策定・実行し、その内容・成果を効果的に労働市場に発信する。
投資家に対して企業価値向上につながるダイバーシティの方針・取組を適切な媒体を通じ積極的に発信し、対話を行う。

 

7. 実際のダイバーシティ推進事例

最後はダイバーシティによる人材活用を図った企業事例を3つご紹介します。いずれも企業が抱えていた問題点の解決や、働きやすい職場環境づくりに成功しています。

7-1.女性や外国人を積極的に採用し、人手不足の解消につながった例

運輸業界では、長時間労働と人手不足が大きな課題となっています。愛知県のある運輸系企業では、「短時間勤務での人員確保」と「外国人の管理職採用」によって、女性と外国人を積極的に採用し、この問題の解消ができました。

女性は結婚・出産・育児といったライフイベントによりフルタイム勤務が難しく、休職や離職などでキャリアが積みにくい傾向があります。そこで短時間勤務を導入し、どの時間帯でも複数の女性社員が勤務できる環境を整えました。

さらに、同社では東南アジア出身の社員を海外事業部のリーダーとして採用し、海外事業の展開で活躍してもらっています。英語が堪能な人材が取引先との調整を行うことで、新規事業も円滑に進めることができました。海外で働く外国人スタッフに対して、里帰り旅費の補助や定期的な面談といったストレス軽減の支援も行っています。

7-2.高齢者を積極的に採用し、長期雇用につながった例

製造業を営むある企業は、定年なしで高齢者の採用を行っています。採用された高齢者は各人が優れた技術と経験を持っている多能工であり、業務が分配しやすいことが強みです。勤務時間や作業工程を調整できるようになり、60代からでも長期雇用につながるという結果になりました。

若手はスピーディーかつ効率的な作業を行い、高齢者は技術承継・人材育成や気配りを行うというように、世代ごとの役割分担が明確になっています。40代などの中間年代はマネジメントに回ることで、各世代が相手を尊重して働きやすい職場環境を作り出しています。

7-3.短時間勤務制を採用し、働きやすさの改善につながった例

ファッション通販サイトを運営するある企業は、1日の勤務時間を日中の6時間とする短時間勤務制を導入しています。深夜までの勤務が発生しないため、育児中の女性も働きやすい短時間勤務が可能となりました。

この企業では、業務の多くを自社で完結できる「自前主義」を徹底しました。顧客対応やシステム上のトラブルも自社で解決できるようになり、対応の早さという強みが生まれています。通販サイトを運営する企業としての経営方針を、ダイバーシティにうまく活かした事例といえるでしょう。

ダイバーシティを推進して企業の競争力を高めよう

ダイバーシティの推進は、企業にとって3つのメリットがある取り組みです。多様な人材が確保できるようになり、さまざまな刺激を受けて新たなアイデアが創出できる期待があります。社員を大切にしていると周知されることで、企業のイメージアップも可能です。

ダイバーシティの推進に取り組む上では、従業員への教育や社内制度の整備を行う必要があります。経営トップの意向だけでダイバーシティを進めると、コミュニケーション不足や人間関係のトラブルが発生するため注意してください。

ご紹介した3つの成功事例のように、自社の抱えている問題に沿って考えることで、どのようにダイバーシティを推進すれば良いかが見えてくるでしょう。

監修:MITERAS部

「ホワイトなはたらき方を実現」する労務管理ツール【MITERAS仕事可視化】の担当者によるコラムです。MITERAS仕事可視化は、社員のPC利用の有無、アプリ使用状況などを可視化。勤怠データとPC稼働ログの突合で、法令遵守・はたらき方の見直しを推進できます。当コラムでは、理想の働き方改革実現のポイントから、日常業務の効率化のご提案まで、人事労務のためのお役立ち情報をご紹介します。


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